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5-6

「これでっ終わりっ!」

 春野が蹴り飛ばした最後の人形を朱莉が燃やし尽くす。後は春野がどう動くかだが


「で、こいつらはなんだったんすか」

 現時点でこれ以上やり合う気はないと両手をあげながら春野が問いかけてくる。


「黒幕の刺客ですかね」

「黒幕ってと」

「襲……」

 朱莉が忌々し気につぶやく。一方春野はわずかに考えるそぶりを見せてから尋ねてきた。


「狙いは神殺しっすか? それとも神喰い?」

 考えがそちらに移るのは当然だ。レジスタンス自体は神々にとって取るに足らない存在。だからこそ各地で行動していても本格的に潰そうとする神は誰一人出ていない。その一方で神殺しも神喰いも神に対して十分な脅威で実際神無は何人も神を殺しているし朱莉が喰らった神もいる。けれど違う。


「いいえ。おそらく奴は神無と朱莉は泳がしておくつもりでした。放っておいても二人はあいつを放置できなかったでしょうしね」

 現に神無は単独行動で追いかけ、朱莉も奴を勘違いした私を見た瞬間に怒りをあらわにしていた。


「じゃああんた、いや渡来さんはどうなんすか?」

「彼は捨てられた、そして捨てたものには基本的にそれっきりですよ」

 つまり元々の状況から想定すれば襲がここを襲撃させる理由はない。


「じゃあなんであいつらは来たんすか」

「私が復活したのを察したからでしょうね」

 実際に私を視界に入れた時春野を足止めしていた1体を除き残りは即座に私に攻撃対象を切り替えてきた。


「あいつは私を利用したけれどその一方ですごく邪魔に感じていましたので」

 私を殺しました、とまでは言わないでおく。そこまで言うとおそらく説明が長くなる。


「復活したからって。わかるんすか。そんなの」

「少しばかり奴の小細工を弄りましたからそこでばれてしまったのではないかと」

 朱莉に結ばれた歪んだ襲と焔との縁。そこから襲を切り離したがゆえに、繋がりが消えたことで私の干渉を察したのだろう。


「ってかそれならこれはお前の「あんたのせいっっすよね」じゃないの!」

「考え方によってはそうなりますが」

 朱莉に対しては必要な処置だったし襲撃をしてくるのは向こうの都合なのであまりこちらのせいにされるのは遺憾ではあるけれど言っても無駄と判断し素直に認める。

 そしてそのうえで繋げる。


「私のせいと言えば確かにそうですがそれにしても早すぎるとは思いませんか?」

「何が言いたいんっすか?」

 本来は話す必要のないことだ。けれども自身の望みではなく冬禰の頼みとはいえ神無とこの体の主、渡来を助けようと動いてくれた彼は知っておくべきだと思った。

 そしてその含みを持たせた言い方に春野の眼が鋭くなる。


「元からこの近くにあったってことですよ。あの人形たちが」

 この付近はレジスタンスの領域とでもいう地帯。そこにいたということはあることに繋がりやすい。それを察した春野は認めまいとするようにこちらを睨むが


「それにその銃、入手先は分かりますか?」

「別大陸から仕入れたものとは聞いてるっす」

 なぜそんなことをと言いたげに答えてくるが、次の私の言葉に表情が険しくなる。


「ではその別大陸からこの国に神々がやってきたって知っていましたか?」

「なら神と戦うために作ったんじゃないっすか」

 それでも信じた人を信じたいのか、頭によぎった嫌疑を振り払うように反論してくる。そしてその考えは確かに正しい。正しいけれど


「正解です。確かに別大陸で銃は神に対抗する手段として開発されました」

「なら」

 安心したようなところに悪いと思いながらも真実を告げる。


「そして他の神の殺害を目論む神がその発展を後押ししました」

 つまり進歩した銃、それは神々との繋がりを意味してしまう。 


「反杉さんに聞いてくるっす」

「やめときなよ」

 走り出そうとした春野を朱莉が止めた。


「なんでっすか! こんなの!」

「あなたの大切な人がどうなっても知らないよ」

 捕まれた腕を振り払おうとする春野の手がその一言で止まった。


「あいつはそこを平気で利用してくる。私はそれで踊らされた」

 今、春野が真実を知ったということを反杉、引いては襲にまで伝われば重傷を負いながらも辛うじて一命を取り留めた冬禰は格好の人質だし、やつらが春野に価値を感じなければ容赦なく殺されるまであり得るだろう。


「っ! どうすれば」

 やる気がなさそうに見えても冬禰の頼みで神無や渡来を心配して動いたように自分や大切な人がいいように動かされていることを知り、それでも何もできないという事態には我慢ならないのだろう。けれどもそれもできない。

 憤る彼に私は提案をする。


「貴方が神を殺すため、または渡来を救うために独自行動したら問題になりますか?」

「え?」

「私のことを全部書き残してください」

 見る限りレジスタンスの行動自体はそこまでそれぞれに束縛性はない。ならば裏切ったと気付かれないまま離れれば冬禰に危害を及ぼすことなくある程度自由に行動できるのではないか。

 私のことに関しても推測が的外れだった場合を除けばもはやバレていると見た方がいい以上隠す価値もない。


「初芽姉の顔を見て考えさせてくれっす」

 数秒悩んだ後に春野は保留を願った。真実を話し、提案こそしてみたものの、もともと共に行動しようとしていたわけではない。待つよりも動くべき状況ではあるが


「1日この先の村にある宿で待ちます。もし私たちと一緒に来る気があるのならばそれまでに来てください」

私は彼に猶予を与えることを選択した。

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