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「槍ッ!」
叫んでから数合瑞と打ちあった後、注文通り槍が飛んでくる。手に持っていた薙刀を捨て、それを掴み取ると同時に後ろから飛んでくる弾丸を避ける。
「今度は槍ですかー。器用ですねー」
その弾丸を難なく払いのける瑞に舌打ちしつつ突きを繰り出す。
私たちは二手に分かれた後、渡来たちをその場に残し、瑞を誘導しながらやや離れたところに移動していた。
別動隊のレジスタンスが予め隠しておいた武器を春野が私に投げ渡し、冬禰が銃撃で援護、そして受け取った武器で私が攻撃法を変えつつ戦うという選択を取っていた。
危険なことをするつもりがないという春野も瑞の射程外からの武器譲渡くらいはしてくれるし、冬禰には無差別に撃たせることで連携の取れなさを投げ捨てる、そして攻撃手段を変えていくことで瑞に対応を慣れさせない。
けれども状況は決して良くない。
「斧ッ!」
「隙ありですよー」
飛んできた斧を掴もうとする瞬間に瑞が斬りかかってくる。
「ちっ!」
それを見て斧を放棄して横に避ける。と同時に斧が瑞に当たるところに後ろから蹴りを合わせる。投擲と蹴りの威力を合わせて瑞の腕に深手を負わせる。
「痛いじゃないですかー」
けれどすぐに瑞の腕の傷は消えてしまう。
「やっぱり治癒能力」
神の再生能力だけなら私の攻撃で受けた傷はしばらく残るはず。それなのに瞬時に治ってしまうということは、おそらく瑞特有の力だろう。
この様子だとダメージを中途半端に与えたところで全く意味がない。どころか情勢が悪化していく。今は武器を使い分けることで対抗しているもののまともに連携を取れないこのままでは遠からずパターンが尽きる。嵐の戦闘力、耐久力を得ている瑞相手に致命的な一撃を決めることも難しい。
何より
「御堂さん! 危ない!」
咄嗟に先に使っていた刀を拾って攻撃しようとしたタイミングで冬禰から声がかかる。
「っ!?」
咄嗟に身をよじるが腹部を銃弾をかすめた。予定を崩して武器を回収したせいで冬禰の援護射撃のタイミングが被さってしまったらしい。
「ごめんなさい」
「わざわざ3人がかりで来たのにー。ちぐはぐですねー」
冬禰が謝り、瑞が不思議そうに首をかしげる。けれどその通りだ。
「気にしないで」
もともと背後からの銃弾は全部私が避けるのを前提。連携ですらない。
しかもこちらを気にせず打つようにと言ったにもかかわらず、冬禰は極力誤射しないようにタイミングを窺っている。それですらちょっと予定が狂ったらこのざまだ。
付け焼刃の連携未満の何かなんて長引けば長引くほどボロがでる。
「ちぐはぐなのはお互い様」
だけど勝機がないわけではない。
朱莉が喰らった分の力は戻っていないのか、それとも本人の戦闘経験故にか嵐の時に比べればまだ力も反応速度も遅い。
「はあっ!」
先ほど拾った刀をある方向に投げ捨ててから数少ない使い捨てずに背負っていた弓を引き絞る。
それに合わせるように冬禰が発砲し、矢と銃弾が瑞を襲う。と同時に駆ける。
「効きませんよー。あれー?」
瑞と反対の先ほど刀を投げ捨てた方向に。そしてそのままその刀とそれより先に投げ捨てていた剣を拾う。
「二刀流ー。ですかー」
神相手に中途半端な攻撃は有効な場面がほとんどない。だから基本的には一撃の威力を重視していた。それならたとえ防御されたとしてもそこで傷跡を残せば次につながる。
けれど今回は違う。本来有効打になるダメージを与えたところで回復される。だから有効打ではなく必殺の一撃をきっちり打ち込むためにその隙をつくるために逆に大半を捨てるような攻撃にしてでも手数を増やす。それに嵐よりも劣る戦闘力なら片手でもある程度は捌ける。
「行くよ」
それは瑞への戦闘再開を伝える言葉じゃない。前もって伝えておいた独断専行することを残りのメンバーに伝える一言。ここから先、援護は期待できない。
「はあああああ!」
がむしゃらに斬りかかる。右から、上から、下から、右から、左から――
決め手にならない乱撃。その中で一瞬のチャンスを探し続ける。
「慣れないことはやめた方がいいですよー」
治癒能力を発動させることすらない攻撃を続けると瑞が話しかけてくる。
それを無視して攻撃を続けるが
「そういう雑なのはー。違うんじゃないんですかー」
その一言に一瞬動きが鈍る。そこへ来た斬撃を辛うじて武器二本がかりで受け止めざるを得なくなる。
捌ききれないで防御に回った攻撃で態勢が崩れた。
瑞の指摘図星だ。大抵の武器は扱えるし、二刀流も付け焼刃じゃない。けれど身に叩き込まれた戦い方はこんな力尽くなものではない。何が有効かそちらにばかり思考が流され、自分の戦い方を見失っていた。
「お借りしますよー」
そして気が付いたときには遅い。先に捨てた斧を瑞は拾い上げ振り回す。前の攻撃の影響で回避行動はとれない。いちかばちか万全でない状態で迎撃に移るが
「無駄ですよー」
刀も剣も、そして私自身も吹き飛ばされる。
次の瞬間には二つの影が視界をよぎった。




