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2-X

Side 朱莉


「やあ、纏。酷いありさまだね」

 ぼんやりとする意識の中、誰かがしゃべっている。身体が勝手に動いている。ああ、きっとこれは夢を見ているんだろうか。


「おや? 珍しい来客だね。君も憑依、ではないみたいだね」

「この子に縁を結んであげてね。出てくるつもりはなかったけど、君がこんな姿なのを見て少し話してみたくなった」

「そうそう。聞いてよ! 面白い人間と出会ってね。一人目は神殺し。いやはや参ったよ。非常用に最低限維持できるように分けていた分以外完全に殺されちゃって。憑依先も当分増やせないんだ」

 神殺し、私の憎むべき相手。――様を助けるために殺さないといけない相手。この夢が何かの手がかりになったりするのだろうか。


「もう1人は憑依したくてもできなかったんだ。あれは多分――だよ。面白すぎる組み合わせでさ、ちょっと回復したら追いかけてみようと思ってるんだ」

 会話の中に、一瞬だけノイズが走った。多分、何だったんだろう。


「ああうん、それに気が付いちゃったか。仕方ない。朱莉」

 名前を呼ばれたかと思ったら私の真っ暗な視界に細い少女が映る。話していたのはこの子だろうか。


―朱莉、××え―


 聞こえていた声の一つが頭の中に響く。ああそうだ。こいつは――の糧になる。ん? 糧ってなんだろう。


「え、――!? 嘘でしょ。なんで僕を」




「あれ? 私何を?」

 神殺しの手がかりを求め、やってきた町。はっきりとした情報ではなかったけど、平和だった町が崩壊し、神が死んだらしい。本当ならあいつの仕業で間違いないと思った。そこで聞き込みをしていたはずなのに途中から記憶がない。しかも目の前には倒れている少女がいた。


「大丈夫?」

「え、うん。私何を」

「あなたも分からないの」

 なぜここにいるのか分からない人が私を含めて2人。何らかの事件に巻き込まれたのだろうか。けれども壊れかけの町、その外れにいるだけで監視しているような相手もいないし、他に不穏なこともない。ただただ、直近の記憶がないことだけがおかしい。


「その首、どうしたの?」

 ふと少女の首筋に目がいった。そこには謎の傷があった。血は出てないようだけど、かなり大きな傷で心配になる。


「え? あれ? こんなところ怪我したっけ。痛くもないけど」

 少女は首筋に手を当てて不思議そうに首をかしげる。心当たりもないようだけど、痛くもないということは大したことはないのだろうか。


 結局少女を家まで送り届け別れた。

 それにしてもあの傷は、何かに噛みつかれたような痕はなんだったのだろうか。気にはなるけれど、それよりも神殺しの情報を少しでも得ないと。




Chapter 2 End

Continues to Chapter 3 Side 渡来

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