1/1
出会い
「さよなら」と書かれた手紙を差し出した君は泣いていた。僕はそんな君を見ているのが辛かった。君を引き止める勇気もない僕はただ黙っている事しか出来なかった。
僕は中学校ではソフトテニスという部員達が自虐的に劣化版テニスと呼んでいるスポーツに勤しんでいた。それなりにソフトテニスは楽しかったし部内にも仲のいい友人もできてソフトテニス部に入部を決めたのはなかなかにいい選択だったと思う。しかし、僕が部活をやめずに続けられたのは君の存在があったからだ。美術部に入っていた君はいつも美術室の隅で絵を描いていて、その横顔はテニスコートからよく見えた。そんな彼女の名前は秋篠雫、彼女の俯いた目は控え目であまり目立たないといった印象を人に与える。そんな儚げな彼女に僕は恋をした。