理想への旅立ち
目が覚めるとそこは異世界だった。
いや、目が覚める前もそうだったけどさ。
「おはよう、かっくん。」
「おはようございます、マスター。」
「お兄ちゃんやっと起きたの?」
「徒花様、おはようございます。」
「ぶるるぅっ」
上から順に、輝井ちゃん、アアル、鈴蘭、メリー、そして、
「ぶるうぅぅっ!」
…馬?というかここ馬車?なんで?
「現在馬車にて街に向かっています。」
俺は逃げようとした、が体が動かない。
「かっくん人多いとこ苦手だもんね、だから逃げないように鎖で縛ってるんだよ?」
余計なお世話だ、逃げるハズナイダロー。
周囲の確認をしてみる。
まず俺は椅子に鎖で縛られている。
その横には輝井ちゃん。幼なじみのふつうの女子高生の格好だし特別変なところもない。
逆側には鈴蘭。透き通るような白い肌や髪で見た人は必ず二度見するくらいには幻想的だ。
右斜め前にはメリー。本名は長いので略して呼んでたら本名を忘れた。この事は絶対に知られてはならないと俺の本能が訴えている。幼なじみで金髪ツインテだが高飛車ではないお嬢様である。あと、輝井ちゃんと比べると胸が小s(
で、正面にアアル。となると馬って誰が動かしてるんだろ…?
「本当に優秀な馬は自分だけでも動けるのですよマスター。」
なるほど。
「ぶるるるぅぅっ!」
…本当に優秀なのか?
「それで、どれくらいの規模の街に行くんだ?」
俺が気になって聞いてみると、鈴蘭が答えてくれた。
「この世界で3番目に大きいとこだって。」
ガチャガチャガチャガチャ
「徒花様。諦めも大事ですよ。」
ガチャガチャガチャガチャ
「諦めて、お兄ちゃん。」
ガチャガチャガチャガチャ
「いつまで鎖と戦ってるの?無理だから諦めよ、かっくん。」
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
「マスター、その鎖は私が作りました。」
ガチャガチ…
「え、マジ?」
「はいマスター、マジです。」
なら無理だな。
「じゃあ、街に行く理由は教えてくれるか?」
「はい。マスターに戦って頂く為です。」
「俺に?」
「はい。皆さんマスターの戦う姿を拝見したいと。」
「いいよね?かっくん。」
「いいよね?お兄ちゃん。」
「いいですよね?徒花様。」
拒否権なんて無かった。
「でも、俺は魔法もほぼ練習してないし、多分負けるぞ?」
「マスターに限ってそれはありません。」
「かっくんが負けるハズないよ。」
「お兄ちゃんは誰にも負けないもん。」
「…頑張ってください、徒花様。」
うわあ…やだよ戦いたくないよ…
こうして、俺たちの旅がはじまっ
「到着です、マスター。」
「早っ!?」
訂正。実は既に始まってたみたい。