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 賊との対峙から1週間ほど過ぎた。賊を護送する為『草原の城』から派遣された兵士が村に到着したのだ。


 俺も兵士に付いて行くことにした。何故かと言えば、ここは暇なのだ。人助けするにしても解決できそうな問題がない。村で困っていることと言えば生活や仕事に関するものばかりだ。あげく単に異世界から来たって理由だけで村の相談役みたいなもんにされたんだが……


 Q:農作物の効率のいい育て方を教えてください。


 A:農家じゃねえんだから知らねえよ、芋でも埋めとけ。


 Q:馬の調子が悪いんですが元気になる方法を教えてください。


 A:獣医じゃねえんだから知らねえよ、草でも食わしとけ。


 Q:川からここまで用水路を作りたいんですが工法を教えてください。


 A:川のそばに住め。


 まったく何を勘違いしているのか知らんが一般人の知識なんかこんなもんだぞ、一体何を期待してたんだ?


 巷では猫も杓子もやれ内政だ、やれ経営だ、挙句の果てに普通の高校生が車のエンジン構造について語っている始末だ。車を召還しました、そこまでとやかく言う気はない。ガソリンはないけど吸気、圧縮、燃焼、排気は魔法の不思議パワーで補う? それエンジンいらないじゃん。ペットボトルロケットにタイヤ付けとけよ。


 それに暇つぶしに村の女に声をかけてみたんだが、洞窟の一件以来、何故か恨みの募った目で睨まれるというハードモードになっている。解せぬ。


 暇以外にも問題はある。金がない。この世界に来たときに生前の着の身着のままで何も持たされてないのだ。飯を食う、服を買うにも金がいる。今はアッサムの家で世話になっているがずっとこのままというワケにもいかんだろう。


 村で稼ぐことも考えたが、今度はここに娯楽施設がないという問題にたどり着く。自然がいっぱいだが、それを楽しむ心など持ち合わせちゃいない。壮大な空、青々と輝く草原、意見を聞かれても「キレイですね」以外あるか? 何を楽しめと?


 娯楽文化は人の交流が多い場所で発展する、人と人のふれ合いが文化に色をつけるのだ。なら城の近くに行くしかないだろ? 要は栃木に住むか、千葉に住むかの違いだ。


 事実、一番の理由なんだが森の近くにいたくない。村人を助けたときは人数関係なしに+5だったのに木が1本へし折れるだけで-5になりやがる。現在のポイントは-8055Pだ。1週間で-55とか俺の寿命250日かよ。もう金輪際、森と関わらない。木が弱点の生物なんているのか?


「そろそろ出発するぞ」


 総勢10名の賊を2台の馬車に乗せ、その周りを武装し、馬に乗った兵士が囲む。話によれば『草原の国』は大陸一の馬の産地であり、他国に比べて飛びぬけて馬術の発展した国だそうだ。


 ここで華麗な乗馬テクを披露したいとこだが、乗るどころか馬を間近で見ることすら初めてなのでおとなしく馬車に乗っていよう。


 ガタゴトと馬車に揺られること数時間。見渡す限り代わり映えのない草原に舗装されてない砂利道。もちろん馬車にはサスペンションなど付いてないのでケツにくるダメージは計り知れない。


 それより気になるのは横で馬車を操っている兵士だ。チラチラとこちらの様子を窺っている。


「何ださっきからチラ見して、ホモか? 俺はノンケだぞ?」


「俺もノンケだ馬鹿野郎! いや何、異世界人を間近で見るの初めてだったもんでな」


 珍獣じゃねえんだから。けどこっちの世界の奴等、脱いだらみんな両性具有者だったなんてありえ……なくもないか。そういや男の娘ってどの層に需要あるんだ? 変なもん流行らすなよ。


「ふーん、そんなに大勢いるワケじゃないのか」


「多くはないな、けど昔からいるぞ。この世界にはない不思議な力持ってるヤツとか知識や技術持ってたりとか。まあ技術はあってもこの世界で再現するのはかなり難しいらしいが。あとは大衆娯楽も広まってるな、マンガとか」


 確実に日本人じゃん、生活水準上げるよりもサブカルチャー広めるとか。


「それでお前は城に何の用事で行くんだ?」


「別に城に用はないが、周りに街ぐらいあるだろ? 仕事探しに行くんだ。全然金持ってないしな」


「仕事か……探せば何かはあるだろうな。で、お前は何が出来るんだ? 戦闘が得意とか料理が上手いとか」


「ふふん、自慢じゃないが何も出来ん」


 料理? カップラーメンにお湯を注ぐのを調理といえるなら出来ると言わざるを得ないな。戦闘? 寿命250日の人間の命縮めて楽しいか?


「まあしいて言うなら、この微妙かつ最大のデメリットを含んだこの力だな」


 口で説明したが信用してもらえなかったので馬車を止めてもらい実践する。兵士達は大きな岩を軽々と片手に乗せている俺に驚くが、それ以上に恨めしそうな目つきで見る賊が印象に残るな。くやしいのう、くやしいのう。


「お前、軍に来ないか?」


「バカ言え、こっちはプロのど素人だぞ? 1日で死んじゃうぞ?」


 おまけにマイナスポイントまっしぐらだ。このポイントが止まるときは新たな生を享受するときだぞ? そうだ『渇望のホテイエソ』とでも名乗ろうか。6人目のゴッドハンドに入れてもらおうかな?


「すまん、言い方が悪かったな。輸送などの後方支援メインだ。戦闘になる可能性がない訳じゃないが、矢面に立つ訳ではないぞ」


 うむ、突然のニート脱却だが戦争の手伝いってポイント増えるんじゃないか?


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