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『くぁwせdrftgyふじこlp!!!』


 大量の虫に襲われた中島は訳のわからない言葉を発しながら飛び去って行った。


「あのクソへたれドラゴンが! 虫如きにいちいちビビってんじゃねえ!!」


 ヤバい、あの中島アホを数に入れていたせいで他に何の作戦も練ってねえ。中島にけしかけた虫は間違いなく帝国の仕業だろう。アホだから何の疑いもなく自分の弱点ペラペラしゃべってるだろうしな。


 このまま進むのはまずありえん。山の城へ続く道は幅10m程の1本道だ。道に関しては問題ない、動ける範囲が決まってる分、守るのが容易いからな。問題は伸びきる軍列と道の左右に広がる山に繋がる斜面だ。

 敵が潜んでいるのは間違いない、だから進むことも出来ず、後退しようとすれば追撃されるだけだ。なら、どちらか一方に絞って斜面を駆け上がるか? 無理だな、敵の方が数が多い。囲まれるだけだ。


「久しいな、装甲兵!」


 この窮地を脱する最善の方法を模索していると、山の城方面前方より部隊が姿を現す。金ピカの鎧を身に纏う男に率いられた部隊、何者かと思えば、以前に俺と交渉をした帝国の皇子なんとかだ。名前? 憶える必要がないだろ。









 ふふん、遂に見つけたぞ憎き装甲兵! 貴様に味わされた土の香り、一時も忘れたことはないわ!!


「よう、ピエロくん。今日もド派手だな、鳥避けか何かにでもなりたいのか? まあ、お前より案山子のほうがよっぽど役立つと思うがな」


 今更このカッコイイ余に世辞を使っても遅いわ、余に似た案山子だと? そんなもの余と人気を二分してしまうではないか、認めぬわ!!


「どうした装甲兵、敵の総司令官がここにいるのだぞ? 攻めて来ぬのか?」


「ああ、そうしたいのはやまやまなんだが、味方のアホのせいでお前らの罠にまんまと嵌っちまってな。なんとか退却しようと思ってたとこだ」


 退却だと!? 馬鹿なことを申すな! ならばこの余自らカッコイイ囮になってくれる!!


「ふん、愚かな弱者が。ならばこの丸腰でもカッコイイ余も戻らせてもらおう。あーあ、残念だな、余に接触出来る機会なんかこれっきりかも知れないのにな!!」


 これは間違いなく喰いつくな。この話術すら巧みに扱うカッコイイ余にかかれば、あの間抜けな装甲兵を誘き寄せるなど容易きことよ。


「……ピエロくん、何をそんなに焦ってんだ? 俺達が進まないとマズイことでもあるのか?」


 焦るだと!? 馬鹿なことを申すな! 東側に潜んでいる兵が何者かの急襲を受け、指揮系統が取れん状態など断じてない! もう少し進軍してもらわないと包囲が出来ないなど断じてない!!


「焦るだと!? 馬鹿なことを申すな! 東側に潜んでいる兵が何者かの急襲を受け、指揮系統が取れん状態など断じてない! もう少し進軍してもらわないと包囲が出来ないなど断じてない!!」


「副ゴリ1隊はこのまま俺と敵を食い止めろ! 副ゴリ2隊は最後尾に回れ、後方からの襲撃に備えろ! 3から10は右手の斜面を駆け上がり、軍の道を切り開け!!」


「了解しました!!」


 馬鹿な!? 何故、余のカッコイイ策略がバレた!?


「不味い、余達も退くぞ! このままでは包囲網が破られるわ!!」


「副ゴリ1、食い止めるのはナシだ、アホピエロに突っ込む! 包囲を突破する、いや、包囲すらさせねえ!!」


 不味い、これは不味いぞ。これではまた司祭に文句を言われるではないか!


「伝令ーッ!! 後方より草原の旗を持つ少数部隊が接近中!!!」


 何……だと……? 逆に余が嵌められただと……?









 不味いな。今、我等が置かれている位置が把握出来なくなってしまった。立地状況から考えて山の国だとはわかるが……


「前方に敵影発見!」


 またか! 何故にこんな山間に多くもの帝国兵が潜んでいるのだ?


「ふはははは! 無論、突撃あるのみ! 我に続けィ!!」


「お、お待ち下さいハルジオン様、周りの者も疲労の色が見えております。ここは一度身を隠し休息を取るべきかと……」


「なんだ、だらしがないな側近よ。それでも栄光ある草原の騎士団騎馬隊か?」


 くっ、このバカ殿が! アンタがウサギと帝国兵を見間違えて山に迷い込むからだろうが! アンタの目には人間がどんな風に映ってんだ!!


「側近殿! 敵、帝国兵と交戦中の部隊を確認しました、王国の印を皆付けております」


 おおっ、これは渡りに船! バカのせいで気の休まる間がない、いち早く味方の軍と合流するべきだ。


「全員抜刀! これより王国軍に加勢する!!」


「ふはははは! それでこそ栄えある草原の騎士団よ!!」


 黙れバカ殿、私は国に帰ったら側近辞めさせてもらうからな!









「退けっ、退けぇぇぇ!! うわっ、装甲兵!! 余に近づくな!!!」


「何だよ、そんなに嫌うなよ、傷つくじゃねえか」


 しかし、バカだなこいつ。自分からノコノコ出てきて逆に返り討ちにされるとか、生きてて恥ずかしいレベルだな。


「何としてでも逃げ延びる! 余の血路を開け!!」


「いや、開かせねえよ? トーマス! ミシェラン!!」


 間違いなく近くをうろついているであろうバカ2人の名前を呼ぶ。何処からともなく現れた2人によりヘリオガバルスは再び組み伏せられた。これですべての問題が解決したんじゃね? 相変わらず1人で戦況を覆せるヤツだな、尊敬すら憶えるよ。

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