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 さあ、どうする? 考える時間は約2分。その間に最も良い結果を導く的確な手段を模索しなければならない。


 手段その1『諦める』真っ先に思いついたのはコレだ。行くとこまで行ったら勝手に止まるだろう。だがその結末は大量の轢死体と帝国軍に囲まれる俺達の姿しか描けない、駄目だ。戦うことも考えたが1万人対5人だ。これが何とかなると思えるヤツはサブカルチャーに毒されすぎだ。


 手段その2『持ち上げる』これも無理だな。前に試したんだ、重い物を真上に放り投げて受け止めるとどうなるかを。重さは感じないが衝撃は残った、単純に重さだけが無効になる非常に危険極まりない能力だ。投げた物が1tあったらどうすんだと冷や汗を掻いた覚えがある。じゃあ今走ってるこの何tあるかわからない破城槌を持ち上げた時の推進力はどこに流れる? 俺だ。もう大惨事だな。


 手段その3『頑張って止める』お前は道路に飛び出して、走行中の車を止めれるのか? 


 手段その4『藤原とうふ店』要するにドリフトだ。峠でよく見かけるあの痛い86スタイルのマネするワケじゃない。


 お誂え向きにタイヤ代わりの車輪はツルツルだ。流石は『房総スカイラインの旋風』と呼ばれたこの田中。異世界の奴等に真のドリフトというものを教えてやる!!





 ……やるんじゃなかった。


 華麗なドリテクを魅せようと破城槌の後ろ側外にぶら下がり、俺の掛け声と同時に中の奴等をジャンプさせる。人間は物じゃないから軽くならないんだ。無理矢理な力技だが映画のワンシーンの様に踵で滑りながらジャンプと同時に車体を横向きにし、すぐ車内に戻った。


 そりゃ車輪がツルツルなんだから横向きなっても滑るよな。それにどうやって前に進むんだ? 改めてタイヤのパターンの重要性と重量に遠心力が加わった状態でも前進することが出来るエンジンの偉大さを思い知らされたな。


 ちなみに今の状態なんだが、車輪は4本全部吹き飛んで横回転しながら崖を降っている。車体を横向きにした衝撃で着地した全員が右側面の壁にぶつかった。横倒れした破城槌は速度もたいして殺せてないし、サイコロみたいな形してるからまわるまわる。


 さあ、どうする? 考える時間は約30秒。……こんな状態で何も思いつくワケねえだろ! そんなことよりマジで止まってくれ! 目が回って死にそうだ!!





 ――情けない奴等だ。たった一度当たっただけで怖気づいて逃げて行くとは。東の戦場もカッコイイ余の軍が圧倒して北に逃げて行ったわ。残すは西の戦場だが、それも時間の問題だ。ならばカッコイイ余の取るべき行動はただ1つ!


「このカッコイイ余に続け! あの情けなくみすぼらしい敗残兵を殲滅するのだ!!」


 女どもよ、右手に持つ剣を頭上に翳すこのカッコイイ余の勇姿を見よ! 陣頭に立ち、軍を率いる雄々しくもありながら若干の影を残すこのカッコイイ余の勇姿を!!


 ん? 何やら陣内が騒がしいな? 貴様等がそう騒がしいとこのカッコイイ余が女達に注視されんではないか!


「殿下! 得体の知れない何かが南方の崖より転がって来ます! このままでは軍に直撃し、相当な被害が出るかと!!」


「な、なんだアレは!? 連合軍の兵器か? いくらこのカッコイイ余でもあんなものは止めれん。何が起こるかわからん、皆、退避せよ!」


 地響きを起こしながら得体の知れないモノは城壁を大きく震わせ崩し、轟音と共に動きを止めた。


「なんだコレ?」「連合軍の兵器か何かか?」


 兵士達も動揺を隠せず遠巻きに見守っている。やはりここはこのカッコイイ余が率先して調べ、皆の羨望の眼差しを独り占めするパターンだな? かっこ良さに勇敢さまでも備えているになると巷の女どもも放ってはおけんということだな!


「者ども、道をあけよ! このカッコイイ余が直々に調べてやる!!」


 ふむ、これは鉄だな。中に何かが入っていそうではあるが……


 そのモノに触れようとした時、一部分が支えを失ったかの様にバタンと倒れた。





「……クソが。マジで気持ちワリぃ」


「どうですか? この衝撃アブソープションシステムは」


 車体が横倒しになった時、大柴がなんか天井にある紐を引っ張った。天張りが開いたと思えば、中から大量の葉っぱを詰め込んだ袋が落ちてきた。エアーバックみたいなモンか。お陰で誰一人怪我したヤツはいないみたいだな。


「刺さったったったwww」


「イタ杉内www」


 まあ木の枝が入ってて刺さったヤツもいるみたいだが、どうでもいいな。他のヤツらも這い出てきた。まだ目を回しているようだな。


 さて、気持ちを切り替えて行こう。辺りを見渡せば、予想通りここは帝国軍のド真ん中だ。もちろん作戦は失敗だ。大体、崖の上から小指の先程度しか見えない南門に狙ってぶつけるなんか無理に決まってんだろ! 何が9割だ、大穴だらけじゃねえか!!


 どうしようかな、何食わぬ顔してしれっと立ち去ろうかなと考える俺と目の前に立っている1人の見知らぬ男の視線が合う。


 なんだコイツ。バカみたいに金ピカの鎧着て。ここがどこだか理解してんのか? お前ただの的だぞ? 後、それ歩きにくいだろ、30cmぐらい厚底のブーツじゃ。


「このアホ面した道化師みたいなヤツは誰だ? こういう類の病気の人か? お前の鎧、目障りだからどっか行けよ」


「こいつは帝国軍総司令官のヘリオガバルスだな。帝国の皇子だ」


 ようやく立ち直った黄昏が鞘を男に向け説明してくれる。その鞘、俺に近づけんじゃねえよ、汚えな!





 ……あれ? こいつ捕まえたら勝てるんじゃね?

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