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 結局、城の護りを固めるという理由で兵士2人を残し、屋敷を後にする。ホオヅキ達と別行動になった時、馬も馬車も回収されたのでもちろん徒歩だ。


 大体、高だか3人増えたところで何が変わるんだ? こいつらは隊長格だから、いれば何かの役に立つのか? そう思いながらバカ2人に目をやる。


 完全に城へ帰ったら飲みに行く気の2人は、行きつけの飲み屋の女に花をプレゼントする気らしく、道端の花を摘んでいる。面倒なのでいちいち指摘しないが、それは明らかに雑草だ。俺が女ならぶん殴るな。


 それに兵士が言っていた召還術。俺の場合は一度死んで、この世界で生き返った。この状況とはまた違うのか? この世界に呼び出されたということは、送り返すことも出来るんじゃないか? もしかすると俺も日本に帰れるんじゃないか?


 視界の端に-8045Pまで減った数字がチラつく。……いや、無理だな。間違いなくあの自称神カメムシが邪魔する。


「ねえねえタナカっちwwwねえねえwww」


 んだよ、うるせえな。考え事してんだよ、ブチ殺すぞボケ。


「つかれたでござるwww」


 こいつら、本当に騎士か?


 結局バカ2人がしつこいので近くにある村で一休みすることになった。俺は別にどうでもいいんだが、お前らは国が滅ぶとマズイんじゃないか?


 しかし何やら村が慌しい。非常に嫌な予感しかしない。


「おい、バカども。ここは駄目だ。もう少し進んで野宿するぞ」


 そんな俺のセブンセンシズは今日も冴え渡っている。


「騎士様、どうかお助け下さい! 村のシスターが賊にさらわれてしまいました!」


「うむ、困窮する人々を救うことは我が勤め」


「賊など恐るるに足らず。我等に任されよ」


 くそったれ、こんなパターンもあるのかよ! これもあのジジイの枷か! しかしこの国人さらいばっかだな。


 もういい、どうせ逃げれりゃしないんだろ? 後は俺のモチベーション次第だ。


「おい、おっさん。助けてやるからシスターは美人かどうか正直に答えろ」


「それはもう野に咲く可憐なサラセニアのように……」


 それだけ聞けりゃ充分だ。ここ最近まったく女に縁がないし、城下町を探索することなく従軍に付き合わされたからな。やはり健全な男子としてはシスターとか巫女とか何かこう、背徳感に心が躍るな。


「タナカっちwwwエロすwww」


「イメクラ行こうずwww」


 勝手に人の心を読むんじゃない。後、イメクラあるのか? 行こうずwww


 とっくに日は落ち、暗くなった街道を松明片手に俺達は進む。賊が逃げた方向と城の方向がいっしょだったからだ。それなら辛気臭い村にいるよりシスターに会うほうがいいに決まってる。


 しばらく街道を進むと道は二手に分かれている。一方は城へと続く道、もう片一方はどこに続いているんだとバカ2人に聞いてみたが、案の定知らないと返ってきた。お前ら本当にこの国の騎士か?


 だが案ずるな、推理力に定評のあるこの田中。俺にかかれば賊の考えなど児戯に等しい。


 まずは何故、大勢いる村人の中からシスターだけをさらったのか? もちろん教会に1人でいたからだろう。じゃあ何故、他の女もさらわなかったのか? それは奴等が少人数の為、村人の反撃を恐れたのだ。


 次にシスターをさらってどうする? 普通に考えて慰み者にする、その後、奴隷商に売る可能性が高いな。だが人の手垢の付いた聖職者を誰が高く買うんだ? その手の者なら滾るだろうがノーマルな者にはそうはいかない。


 ならば選択肢は売る一択だ。ぐずぐずしていると追手を差し向けられる。となれば……


「ふふん、流石は田中。おい、バカども、城下町に急ぐぞ!」


 だが相変わらず世界はこの田中を裏切り続ける。城に続く道とは違う道、松明に照らされ何かが落ちているのが見える。


「何だこれ、本か?」


 本を拾い中身を確認するが、その内容に驚愕し膝を突く。まだこの世界には田中を驚かせんとするモノがあるのか……


 暫く動揺を隠せないでいたが、本の落ちていた道の先から微かにだが言い争う声が聞こえる。


「放して下さい! 大事な聖書をどこかに落としてしまったのです! アレがなければ……」


「うるせえ、ごちゃごちゃぬかすな! さっさと来い!!」


 聖書? もしやと自分の手の中にある本を見つめる。まあ、ありえんだろ。


「行くぞ、バカども!」


 言い争う声を頼りにバカ2人を引き連れ走る。かなり抵抗しているのか、怒鳴り声が大きくなってきだした。


「よう、人さらいども。探したぞ?」


「うわっ! お前ら、あの時の!」


 声の発生源に辿り着き、言い争う数人の男女を松明の明かりで照らす。ん? 見たことあるヤツがいるな。ああ、あの屋敷にいた賊か。


「ああっ、その本は!」


 黒い礼服を着た女が俺を見て叫ぶ。うむ、照らされた状態ではっきりとわからないが、この俺の眼鏡に適うレベルには違いない。


「あなたが私の聖書を拾ってくれたのですね!」


 女は俺が持つ本を見つめ喜ぶ。……聖書? コレが!?


「おう、人さらいども。悪いことは言わん、他のにしとけ。その女は売れん。150%売れん」


 賊に向かい曰く『聖書』を放り投げる。シスターは「神聖な書になんてことを」などと叫んでいるが、まあ中身を見てみろ。


 聖書を手に取りページを開く賊達。だが僅か2ページを開いただけで動きを止めてしまう。その隙を見逃す俺達ではない。一瞬の内にバカ2人に斬り伏せられた。


 大体、BL本のどこが聖書だ! こんな薄い聖書があってたまるかボケ!!

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