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“光の庭”のうたた寝 =096=

❝ =第一章第5節_29 ; 陰山山脈の南域にて・・・・ ❞

 そのころ、青海は隊商宿の奥 居住棟の客間にはウイグル系で契丹貴族蕭氏の血筋である石チムギ、梁山泊の天魁星こと宋江、西夏国の丞相セデキの家僕であった何蕎、石隻也、主人の忠弁亮夫妻、酒泉ソグド村落の統括者ミイ・イムルグが車座になっていた。 絹の絨毯が部屋一面に敷かれ、床下に燃える石で温められた暖気が廻っているのであろうか 心地よい。 宋江と何蕎、イムルグは刺繍が施されている大きな肘掛けに身を委ね、体重をかけている。 皆が寛ぎ、忠弁亮夫妻が笑みを絶やさず応接している。


 彼らが円座の中央には手把肉(羊肉の塩茹)が盛られた大皿、サムサ(煉瓦の釜で焼く羊肉の饅頭)、ポロ(ビラフの一種)にジク・カワープ(串焼き)、そして スイカシ(肉野菜のスープ)の大鍋が置かれている。 ただ、宋江の前には皿が置かれている。 銀の大皿で、茹で上げられた羊の頭部が盛られていた。 無論、ラハプ(ヨーグルト)、ムセレシ(赤ワインに鹿茸に漬け込んだ薬酒)、キミズ(駱駝や馬の醗酵酒)を満たした瀬戸物も床に置かれており 銀杯が用意されてある。 宋江は興慶のセデキ・ウルフ邸で初めて味わったムセレシがお気に入りらしく、主客に敬意を払って饗される羊の頭部にナイフを入れて、宴開始の合図を行った後は銀杯に満たされたムセレシに喉を鳴らしている。 


 「これはお美しい姫様じゃ、何蕎の話では陳家太極拳の剣技がお好きとだと聞いたが、 俺とて開祖陳家の張三豊は同郷の邑の出じゃ。 同じ水で大きくなったが、しかし、物心が憑いたころより匂いの良い水に溺れ、ほれ このように成長が止まり、気が付けば、親の身代まで飲み尽くしてしまったのだが、ハッハッハー」 と、宋江はご機嫌である。 座について以降、笑いは絶えない。


 唐突に、石隻也が口を開いた。「ミイ・イムルグさま、鳩の飼育を教えていただけませんか、伝鳩の力をまざまざと見知りました。 耶律大石統帥さまも燕京の旧主人である安禄明さまから、手運びの鳥篭をお借りされ、五原と燕京の交信をなされておられたのを見ております。 また、安禄明さまのお傍に仕えております折には弓矢を習得するに時が流れ、安禄家が伝鳩を十二分に活用して、家業を伸ばしている事は知っておりましたが学ぶ機会を逃しておりました。」


 「そなたが、安禄衝さま宅から正嗣の禄明さま方移りて 商いを覚え、耶律大石統帥の信任を得て 伝令の任を託されているとは、先ほど聞いたが 伝鳩の飼育を覚えて どうするつもりか・・・・」 

 「今申しましたように、伝鳩の力と遊牧民の狼煙ノロシ伝達、更には 騎馬の伝令を組み合わせた情報網組織を耶律大石統帥の中核に据えたいのです。 的確な情報組織の運営管理が武力に勝る力になると信じるからです。 私くしなどが、己の脚と馬脚などでは到底及ぶものではありませ。 ・・・」


 「弓矢と拳法で己を守り、情報で組織を守る。 伝鳩による伝令網か。 梁山泊には無かった組織だのぉー 、隻也 やってみろ 見直したぞ 」


 「商家の手代であった若者を これほどまでに信任され、機密の伝令を任されておられる耶律大石統帥殿の器の大きさが見える思いがします。 忠弁殿が羨ましい 」 


 「何を申されますか、イムルグさま 耶律大石統帥さまは蒙古高原に覇を打ち立てられ、カラコルム(中興府)を再興されるに違いない。 なれば、酒泉からアラシャン王府は黒水城に抜け 雅布頼山を回り込み蒙古高原の西端に至らば、オルホン河畔のカラコルムは目と鼻の先。 何時でも会いに行けます。 天山西域の産物を運びなされ、私は漢中の産物を運びましょうぞ・・・・・」


 「なれば、 私が耶律大石統帥の家政を預かる者として、御両名の懐から有り金を搾り出しましょうかな・・・・・」と、何蕎が笑いを誘う。


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