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“光の庭”のうたた寝 =088=

❝ =第一章第5節_21 ; 陰山山脈の南域にて・・・・ ❞

 日が落ちる前に、鳥海の忠弁亮が商人宿を兼ねる家宅の大門に前触れもなく現れた何蕎はずかずかと奥の居室棟まで宋江を連れて入って行った。 忠弁亮の居室棟は街道から離れていた。 大門を潜ると広場である。 広場の三方を一見すれば、左手に事務棟・正面が倉庫棟・右手が旅人の宿舎棟であろう三棟がコの字状に建っている。 倉庫棟と宿舎棟の隅の回廊を渡って中庭に抜け出る構えになっていた。 その中庭を囲むように建屋が□状字に建っている。 忠弁亮の家族や使用人の居室であろう。 この中庭には公道である中央街道から大門を潜らずに土塀沿いに西に進み、宿泊棟裏側の脇道を南に折れると忠弁亮宅の中庭にでる通用門がある。


 何蕎は乗馬したまま、土塀の中央に設けられ大門を通り、宋江を促してラクダが散在する広い庭を回廊に沿って、替え馬を曳きながら最深部まで進んで下馬した。 回廊に沿って設けられている門型の繋ぎ棒に馬の手綱を結んで、手ぶらの状態で宋江を誘い回廊渡って中庭がある空間に進んで行った。 長い庇で覆われた回廊が□状字で囲む住居棟の中庭、その中央には大きなブドウ棚があった。 今は幹と枝のみの寒々とする風景である。 しかし、中庭は石が敷かれ、砂塵を立てない工夫のようである。 庇の回廊が四辺を回り、宿泊棟への通路と西側の通用門で外部と繋がっていた。

 

 通用門脇の部屋には守衛がいるようである。 その反対側は使用人の部屋であろう。 使用人の部屋の前面が渡り回廊に成っている。 したがって、商人としての店構えは鳥海では、一、二であろう。 中庭に現れた二人を見つけたのは石隻也であった。 彼は居室が囲む中庭で拳法の型を演じていた。 宋江が目ざとく見つめる視線を感じた隻也が振り向きざま隣に佇む何蕎に気づいたのである。 急ぎ遥が近づき、「何蕎さん、何時こちらに・・・・、こちらの方は・・・・」と驚きをまじえて言う。 朝夕はいまだに寒く、乾燥している当地方の日陰は肌を刺す。 遥は作務服を着こみ、素足であった。 訪れた二人は、それなりの防寒服を羽織っているというのに。


 「忠弁亮どのはおられるかな、西夏の公務ではなく友としてお世話になるべく来たと、伝えてもらいたいが、いやいや、 勝手知ったこの屋敷、私が行きましょう。 その前に、隻也はどうしてこちらに・・・・、いや 話はあとじゃな、こちらの方は梁山泊の宋江殿です。 天魁星殿と言ったほうが、南京(燕京)育ちの隻也にはなじみがいいかな。 北庭都護府の可敦城におられる大石統帥に会いに行かれる 」


 「隻也と言われるのかな、脚の座りがよいのう。 儂は梁山泊を離れた無頼の宋江」


 「隻也、 まずは、主人に挨拶せねばならぬ。 後程 久方ぶりの話をいたそう。 あちらの事務棟の応対間にいるのかな。 一人で行くゆえ、温かい小部屋で 宋江から体術の話など聞かしてもらっていなされ。 勝手に中庭まで侵入した責務など誰も言うまい」


 「何蕎さん、チムギ殿が滞在されておられる。 それと、忠弁亮殿は、今 酒泉から来られたミイ・イムルグと言われる方と話しておられると思いますが・・・・」


 「オォー、姫御がおられるか、さては 高原の厳しさに逃げてこられたかな、 いや、姫御のこと 楚詞どのが居られるのに、逃げ出す事はあり得ぬと思われるが・・・・ セデキ殿も可敦城に居るものと思われており、手土産を預かって来ておるのだ。 委細は後ほどとして、されば、姫御を呼んでおいてくだされ、 宋江どの、では 後ほど・・・・・」


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