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“光の庭”のうたた寝 =083=

❝ =第一章第5節_16= ; 陰山山脈の南域にて・・・・ ❞

 「セデキ宰相殿、我らは当家にお世話になる寄宿者、 あれこれと要望を申し上げるは筋ではござらん」


 「いや、遼の天祚帝の動向は我が西夏を左右する大事。 三国の国境に間諜を放ち、偵察するは西夏王国が務めである事に異論を挟む余地はない。 この事は李乾順国王も憂慮されており、金の使者が来朝し居座っている事に神経をとがらせられておられる。 早く打開策を献策しろと 今朝ほど 重ねて強く叱咤申された 」


 「先ほど、呉用殿が話された地に、我等80名が はや双月も三国の緩衝地帯を回遊している。 身元が露呈するには時間の問題かとも愚考します。 されど、野に伏すも・・・・ 馬や兵糧の問題・・・・・まして、この城郭に蟄居するも金の使者や密偵の目を欺くことは叶わぬ事とおもわれるが・・・・・ 」


 「俺と燕靑の二人に二十人程の手足があれば、楡林に腰をすえて 網を張り南北の動向を探る・・・・康阮殿、如何 思われる」

 「策は良い、 だが、今 話したように北遼の兵ではすぐに顔がわれる・・・・」 


 「なれば、西夏の間者20名程を呉用殿の配下に回そう。 容易な事、明日にも 人馬ともども揃えましょう。」とセデキは話の先を予測しているように言い添えた。

 「兄者、我らの幾名かを不在中の何蕎さまのお宅に住まわせてもらい、当地に於ける連絡基地にさせてもらう。 残る者は陰山の基地に向かうか 時さまの部隊に合流しては如何ですか? 」


b「康這、兵糧をいかがする。 80余名と兵馬約100頭 春まで二ヶ月もある。 兵站無き戦略など絵に描いた餅じゃ」


 「丞相さま、王庭から帰られる折に算段された策とはいかがなものだったのですか」と何蕎カ・キョウが口を挟む。


 「下城の馬の背で、李乾順国王の憂慮を晴らす策を愚考して来た。 まず、金や西夏の動向を適格に知ることが先決と考え、先ほど話した方向で金の動向を探り、天祚帝の動きを予測する。 我が手中の密偵部隊を動かすのが良策と結論づけた。 他方、酒泉のソグド邑を吐藩兵が襲う確かな知らせに吐藩兵の略奪から如何にして守るか。 欽宇阮殿に蘭州から武威に抜け、酒泉に向かわれるように宮中から 急使を出した。 その伝言には当地から100名の諸将を黄河沿いの間道を中衛、郭家台、北台子、梁家庄と走らせ 10日で武威に到達、14日目が張掖、16日で酒泉に着かせると伝えてある。 無論、この城下を隠密の出発する必要はある。 金だけではなく西蔵の吐藩も城内に間者を放っておるのは当然であろう。 従って、馬上で思い至った策は、康阮殿の勇者も欽宇阮殿同様に旅に出てもらうしかないという二番煎じの策しかないと結論して帰宅した。  隊商の護衛である。 幸い、アラシャン王府へ遣使一行を向かわせねばならない。 例年 30名の警護兵を連ねて、春が来る前の到達しておる。 旅程に三週間は要する。 また、史孫勝が襲われたと知った商家が 己が送り出す隊商の護衛を交易商府に嘆願して来よう。 等々 考えながら・・・・・・」


 「丞相さま、昊忠にある砦に康阮殿の兵馬を繋ぎ、将兵の方々は昊忠や晟武の商家に散泊し 十数名の方々はオルドス長城の南域を散遊する。 隊商の護衛の話が挙がれば、その任に就くと言う策はいかがですか・・・・・」


 「成れば、話の結論は視えましたな、 セデキ丞相殿、我等70名は直ちに武威に向かいましょう。 康這と残る10名は昊忠にて偵察と連絡の任に就きます。 さすれば、西夏の偵察兵20名を呉用殿にお付け下さい。 楡林に散在する手の者40名と昊忠の30名が黄河の黄庄河原に誰知れず集結するのに四五日、この城下からの諸将30騎と一体になるのは容易な事。 早がけ五日で武威、一週間で酒泉到達は容易な道程。 欽宇阮との合力に齟齬は来たしますまい。」


 「セデキ殿、相談事は煮詰まりましたな。 喉が渇き、意のままに言葉が出なくなった。 ここでは百薬で喉を潤すわけには、行きますまい。 何蕎どの、忙しくなり申した。 腰を上げて、そろそろ 帰ろうではないか、康阮殿もいかがですかな。 話の詰めは明日として・・・・・ 」


 「ハッハッハー、宋江殿 郷に入っては郷に従えとは、貴君が故郷の童子の教えであったと思うが、先ほど下僕にムセレシとシャラプとキミズを準備しておくように申して居る。」


 「宋江さま、ムセレシとはブドウの酒を鹿の角茸に一年以上漬け込んだ薬酒、サフランとカルダモンの実で香りを高めた王者の薬酒。 シャラプはこの地の棗で醸造した果実酒、キミズは蒙古高原では馬乳酒と呼ぶのであろうが、西夏では駱駝の乳を皮袋に入れて醗酵させた酒。 ムセレシを口にできる機会など王宮の祝宴でしか 望めない宝酒、この機を逃せば 百年の憂いに成りましょう」


 「なれば、先ほどの件 詳細までをも相談されるが宜しかろう。 我は喉を潤しながら、拝聴するといたそうか・・・・・・愉快、愉快」



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