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“光の庭”のうたた寝 =052=

❝ =第一章第4節_03= 可敦城 遊牧民との協調 ❞

 北帰行先遣隊の引率者・耶律磨魯古耶のひと声で将兵が機敏に動き始めた。 その動きを眺めつつ、 チムギと耶律大石が砦城内の確認に歩き出した。 砦の中央は約100m四方の広場であり、荷を降ろしている兵馬が60頭、将兵の騎馬30頭がひと塊に繋がれており、白き蒸気が立ち上っている。 その兵馬の前足は足首で結わえ付けられている。 広場の外縁には、駱駝、馬を繋いだであろう 門型の木柱が至る所で朽ち果てていた。 広場を囲むように日干し煉瓦の建屋がコの字状にある。 北側の建屋は全長50mほどで、幅2m程度の回廊があり、壁は日干し煉瓦。 その壁に填め込まれている出入り口や窓の建具は堅牢さを保っていた。

   

建屋の北側壁は石を積み上げた強固な造りで、室内は漆喰で白く塗られている。 北側の石積み壁は建屋両端から延長されており、全長が120mから130m、建屋の外壁に長い添え壁を付け加えた状態で、その東西の袖壁には大きな開口部がある。 城門であろうが扉がない。 建屋の奥行きは9m程、建屋の中央には添え部屋がある大部屋、間口4mの部屋が並んでいる。 どの部屋も北側壁にも窓は無く、屋根は片流れで外部に傾斜がついている。 

 

東側は日干し煉瓦の建屋であるが、建具はなく、むき出しの開口である。 木材の梁と母屋で作られた片流れの屋根で、材料がむき出しの天上である。 雨が少ないこの地では緩やかな傾斜の片流れ屋根の材料として、木と葦と粘土で十分なのであろう。 中央広場に面する側壁の基部は回廊状に一段高くなっているが回廊の下屋覆いはない。 大小の部屋が15室連なっていた。 この建屋の外壁にも開口部はない。 広場を囲むように建てられている三棟とも、外周には一切開口部を設けていない。 正面の城門と北側にある二門が唯一の開口であり、西側の柵壁を修復すれば堅牢な砦が蘇る。

広場の南側が城門である正門を中央に有する建屋。 陸屋根であり、屋上に上る階段がある。 


正門両側、東西それぞれに、大小の小部屋が10ほどあり、その東側の部屋のいくつかを遊牧民が冬営に使っていた。 各部屋への戸や窓の建具は朽ち果てているが、彼らは毛皮で開口部を塞いでいる。 南側の壁には開口部たる窓は皆無である。 城門は石と粘土で積み上げられ、幅5メートル程で3メートル程の高さであるが扉は朽ち果てている。 この南側の建屋全面の陸屋根には矢を射る開口を有する腰壁が南側にある。


西側には南と北の建屋を繋ぎ、中央の広場を外部から遮蔽する外壁が設けられていたのであろう。 木材の城壁としていたのであろうか主柱は残っている。 が、板材が朽ち、梁に引っかかっている。 また 要所に築かれていた干し煉瓦の擁壁の多くは壊れている。


 大石は使えそうな板材で東西に延びる北側建屋の開口部を修復せねばと、また 緊急の対処として野営天幕にて寒さを塞ぐ手当を講じなければと思いながら歩いている。 各建屋の天井に注意をむけながら見回って行った。 寒気を防ぐには、壁の開口部よりも天井が重要である。 東棟の屋根は木材の梁に小梁が組まれ、小枝の垂木に葦がひかれていた。 葦は泥と砂利で押さえ込まれているのであろう。 気密性は十分でありそうだ。 外から見れば、緩やかな傾斜の片流れ屋根には薄く積もった雪面に小石が現れている。 屋根からの寒気の侵入は無さそうである。 壁の開口部を塞ぐ方法はある。


 それに、北棟には床下に暖気を巡らす焚口が各部屋の出入口の脇に設けられ、中央の部屋の多くは天井が張られていた。 見回り終えた大石は安堵していた。 30余名と馬100余頭がマイナス40度の酷寒を耐え凌ぐにはことが十分出来ると判断した。 そして、取りあえず、北側棟の部屋をチムギに選ばせた。 北側の各部屋には調度品が在り、そのまま使えそうなものが多かったからである。 残っている家具に大石は満足を覚えていた。


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