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エロい

「あ、悪属性って……どんな魔法なんだろ。なんか怖いね……」

「申し訳ございませんが、そこまでは」


 愛属性の真逆な響きだな。能力も真逆で弱体化とか……おお、悪っぽいというか小悪党っぽい。


「ですが属性の名に違わない人物だと言われています。鐵のオリジン出現から明らかにガルディアスが戦争行為に肯定的になっている事は、国政に関わる人間ならば誰もが感じておりますので」


 なるほどね、確かに積極的に関わるべき人間じゃなさそうだ。

 実際にセレフォルンとガルディアスが戦争となれば、嫌でも顔を合わせる事になるかもだけどな。とはいえ、結局今できるのは自分を鍛えることくらいだろう。


「万一襲われても返り討ちにできるくらい強くなれば問題なし。なんか暴力至上主義みたいな考え方だけどさ」

「ですが、力で来る相手を論議で押し返すことはできません。訓練を続けましょう」


 いよいよ実際に使うのか……と思ったら、書類仕事が終わったのか、アルスティナが駆け寄ってきた。あっ、ああっ、書類ほったらかしだから風で飛ばされていき、訓練中の兵士達が慌てて回収に走った。ご苦労様です。


「せっかくですので姫さ……陛下も魔法の練習をしましょうか」

「うん、する!」

「では全員、EXアーツを出してください。自分の内側に呼びかける感覚です」


 今まで声に出して呼んでいたけど、練習だから言われた通り目を閉じて心の声で呼びかけよう。


(ジル……)

「ピィ!!」


 目を開けると頭上を青い鳥が元気に旋回していた。

 すぐ近くで飛び回る小鳥に、アルスティナが大喜びではしゃぎ、追いかけている。


「わわ、かわいい!」

「ジル、降りておいで」


 ジルを右手の上に留まらせアルスティナに撫でさせてあげていると、琴音も無事EXアーツを呼び出していた。蔦の絡まった銀のジョウロだ。あんまり人の事は言えないけど、武器としては全く間抜けた品だね。


「お話は伺っておりましたが、本当にEXアーツが生物なのですね……」

「普通は違うのか?」

「武器型が7割、道具型が3割と言われています。当然、全て無機物になります。ですがユウト様はオリジンであらせられますので、特殊な例であっても不自然ということは無いかと」


 そんなもんか。新しい属性だけじゃなく、新しいEXアーツの型があっても……まあ、おかしくはないのかな。


「さあ、陛下もお早く」

「はーい。〈純聖剣ピュールドミナシオ〉!」


 おお、今までで一番かっこいいEXアーツだ。装飾過多な金色と白銀の剣。キラキラを神々しい光を放つ、まさに聖剣。明らかに戦わなそうな人の持ち物なのが惜しい。

 ところでその剣、出した直後よりちょっとずつ大きくなってないだろうか。


「陛下のEXアーツは魔力の続く限り、周囲の光を吸収して際限無く巨大化していきます。ですので陛下、そろそろ魔力を抑えてください」


 幼女王、強い……。大きくなっても重さは変わらないみたいだし、前線に出たら雑兵薙ぎ払えるぞ。なんて宝の持ち腐れだ。


「それらのEXアーツをどう使いこなしていくかは、各人で使いながら少しずつ考えていく他ありませんので、私がお教えできるのは魔力のコントロールになります。単純な話ですが、魔力を多く込めるほど、魔法の効果が大きくなります……このように」


 アンナさんが箒を振るを、さっきと同じようにつむじ風が周囲のチリを引き寄せる。そしてもう一度、今度は多く魔力を込めたのか、小さな竜巻が周囲の小石を引き寄せた。

 なるほど、結構違う。

 さっきアンナさんが自分を第10期だと言っていたけど、それでもこれだけの違いが出るんだ。魔力が潤沢な俺達オリジンは、さらに幅広く威力の調整ができるってことか。


「オリジンの属性は、もちろんこの世界に存在しなかった物なので、魔力を増やすことでどういった変化が得られるかは試してみないことには分かりません。どうぞ、使ってみてください」

「じゃあ私やってみるね?」


 琴音が首に下げた皮袋から種を取り出した。やっぱりそれは種入れだったのか。でも魔法との相性は確かに植物が合ってそうではある。

 種が地面に転がり、ジョウロの水が振り掛けられると、ポンッと若葉が突き出した。


「これは魔力込めてないモード?」

「うん」


 昨日琴音の部屋に突っ込んで来た巨木が魔力込めたモードだとすれば、もの凄い差だ。体積でいうと数千倍くらい違う。万倍違うと言っても過言じゃない。

 せっかくだから派手にドーンといけばいいのに、とか思ったけど、それすると訓練所に邪魔な巨木が出現することになってたのか。琴音は気遣いのできる子。


「素晴らしい魔法ですね」

「すごーい! 雑草生えたー!!」

「っ!!」


 琴音が雑草という単語に過敏な反応をするようになってしまっていた。泣けるぜ。


「うーん、これっぽっちの魔力じゃ操るのは難しいみたい」

「……コトネ様には特に教えることがありませんね。よほど危険な状態で覚醒されたのでしょう」

「あの部屋、5階だったから……」


 そりゃそんな高さから落ちるのは即死級の危険だもんな。

 ていうか普通に魔力を調整とか言ってるんだが、全く分からない。これが覚醒した状況の差だと言うのかっ。


「ティアも!」


 負けじとアルスティナも剣を振り回す。めっちゃ伸び縮みしてる。剣術は間合いが命と聞くけど、これは達人泣かせな魔法だな。この世界に剣の達人がいるのかは知らないけど。そして剣を振る姿がやけに様になってるんですけど、ホントに俺のが弱いかもしれない。


「自分の思い描いた通りの大きさに必要な魔力を、正確に注ぐのです。必要以上の効果のために、無駄に魔力を消費してはいけません」

「はぁい」


 さらに剣を伸び縮みさせている横で、チラッとジルに視線を送る。

 ぽちゃりした体をゆらゆらさせて遊んでいた。大丈夫かな。


「それではユウト様、どうぞ……っと、失礼しました。魔法を吸収させないといけないのでしたね」


 そうなんです。餌をあげないと仕事してくれない子なんです。

 アンナさんが、飛んでいった書類を集め終えた兵士を呼び寄せる。駆け足で来てくれたけど、メイドと兵士ってどっちが地位高いんだろう。他は知らないけど、この城ではメイドの方が強そうだ。


「では魔法を吸収してください」


 兵士の一人が魔法を発動する。水風船?

 不安そうな顔を向けられた。ちゃんと後で返すから大丈夫だよ。


「ジル、食べてよし」


 許可を出すと大喜びでパクついた。みるみるうちに水風船が縮んでいくが、多分中身の水だけ食べてるんだな。前にも思ったことだが、やっぱりEXアーツは食べないらしい。食べられないのか、それとも果物の皮や種にみたいな扱いなのか。


「ピィ」


 食べ終わったジルが満足げに鳴いて戻ってきた。今までは食べたらすぐに吐いていたけど、溜め込むことはできるみたいだ。消化とかしてしまわないだろうか。

 兵士がさっきにも増して不安げな表情を向けてくる。魔法を食べられた人は軒並み同じ様な反応だけど、不快感とかあるのか? 消化したらと考えると怖いし、さっさと吐き出してあげよう。


「ぺっしなさい。ぺっ」

「ピィー」


 ジルの口から水の玉が飛び出すと、地面に落下してパンッと弾けた。子供の頃にやったなぁ、水風船爆弾。とりあえずこの兵士は第10期だろう、どう見ても魔法に殺傷力が無い。

 

 魔法を取り戻した兵士が安心した様子で訓練に戻ろうとして、アンナさんに呼び止められた。


「ではもう一度。今度は魔力を込めてみましょう。どのタイミングで込めるべきなのか分からないので、食べる時と吐き出す時でお願いします」

「食べる時に強化されて魔法が帰ってこなくなったりしたらマズイんじゃないか」


 俺の指摘に兵士の顔色が真っ青になった。そんな彼に耳打ちするアンナさん。


「もしもの時は国から補償金を出しますので」


 ひどい。

 金はやるから諦めてモルモットになれと。


 国の権力に負けたのか、金の魅力に負けたのか、あるいはメイドの迫力に負けたのか、兵士は泣きそうな顔で魔法を出した。

 さすが申し訳なく思いながら、ジルに許可を与える。


「むむ……魔力、魔力をこめる……」

「悠斗君、魔力は左のこめかみから出るよ」


 そういやそんな話あったな。左のこめかみに意識を集中すると、なにか流れのようなものを感じた。気付いてしまうと、なかなか違和感があって気持ち悪い。だが何となく動かせそうな気がしたので、その流れから一部を汲み上げ、ジルに流し込む。


「ぴぃ?」


 どうしたの? といった様子で振り返るジル。兵士さんに朗報だ、食べる時に魔力を与えても意味は無かったよ。

 じゃあ次は吐き出させよう。


「ピィィィィ!!」


 再び魔力を与えてやると、妙に気合の入った声で鳴かれた。


 吐き出された水の玉は、さっきより少し大きい位だった。なんだ、もっと大きいのが出てくるかと思ったけど、魔力の量が少なかったのかな?

 と思っていたら、玉が膨らみ始めた。ゆっくりと膨らむ水風船。弾けそうで、弾けない。何でいきなりバラエティ番組の罰ゲームが始まっちゃったんだろう。


「に、逃げろぉーーー!?」


 あろうことか剣のさきっぽで突こうとしていたアルスティナを担いで走り出す。続いて琴音とアンナさん。少し遅れてようやく今後の展開を予想できた兵士も逃げ出した。

 遠くの方で訓練していた他の兵士達も、離れた物陰からハラハラしながら見守っている。女王助けに来いよ。


 訓練所の端まで逃げた時には、風船は30メートルくらいまで膨らんでいた。プルプルしていて今にも破れ……パァァーーーーーーーンッ!!! ふぃいい!!?


 ドパァンと爆発。元々弱い魔法だったのが幸いして、盛大に水を撒き散らしただけで済んだ。ただし、規模は王都全域にゲリラ豪雨を振らせるレベルだったが。洗濯物干していた人、マジでごめんなさい。


 そして俺達もずぶ濡れだ。胸ポケットで寝ていたオル君も驚いて出てきてしまった。


「魔力を、込めすぎましたね」


 うぐぐ、と唸りながらアンナさんを見て、目を見開いた。濡れたメイド服が肌に張り付いて……エロい!!!


「ユウト様、女性は視線に鋭敏ですのでお気をつけて」

「……すいませんでした」


 メイドがメイ怒に転職していた。ちなみに琴音は全然だ、服の生地が分厚すぎる。アルスティナはロリだし。


「ユウト様?」

「すみませんでした!」

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