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悠斗は強くなりすぎた

ちょっと短いです

「すっげええええええええ!! やっぱアニキはすげぇや! なんだよダブルなんて初めて会ったぜ!」

「ダブル?」

「何言ってんだよ! アニキ、船では雷属性の魔法使ってたじゃん!!」


 ああ、なるほど。1人で2属性使える人間をダブルって言うのか。初めて聞いたし、このスフィーダの興奮ぶりからして、相当珍しいんだろうな。しかしそうか、特別隠す気はないけど、あんまり沢山の属性を使うと目立ってしまうんだな。覚えておこう。




 さて、徐々に日が傾き始めてるし、今日はこの辺りで野営かな? そっちの準備は隊商についてきている商人の見習い達に全部やらせるらしいから楽だ。もちろん見張りは俺達の仕事だけどな。……食事の用意もしてくれればいのに。


 パチパチの木の弾ける音を聞きながら保存食を口に運ぶ。うーん、パサパサだ。フリーズドライとまでは言わないから、誰か缶詰とか開発してくれないかなぁ。剣の打ち方模索してるような文明じゃアイデアがあっても難しいか。

 この後は日が昇る時間……今の時期なら午前5時くらいかな。あと30分もすれば各々眠りにつくだろうから、それから約8時間は交代で見張りをしながらの休息となる。1人ずつ見張りにつけば10人いるから1時間足らずで解放されるんだけど、この人数を1人でカバーするのは不可能だ。二組に分かれて見張りをすることになる。


「一応智世も討伐者として参加してる以上、見張りはしなきゃいけない。俺達5人と向こう5人の4時間交代だから、まあ何かあっても智世以外の誰かが気づくとは思うけど、念の為オル君を連れておくといいよ」


 危機察知に関して、オル君の右に出る者はいないと自負……違うな、相棒負してる。


「オル様とボクが組んだなら最強」

「俺と組んだ時が最強に決まってるだろ!! 俺の相棒だぞ!」

「悠斗は強くなりすぎた。オル様にはボクが守られてあげる」


 寝取るつもりか!! オル君はそんなふしだらな女じゃないぞ! あ……男の子だった。ふしだらな男じゃないぞ!!


「それほ良いとして、奴らが見張りをする時間はどうする? 余はあのような連中に身を委ねて眠る気にはなれぬ」

「ジルに見張らせるよ。夜闇にまぎれて上空からバッチリと」

「ふははは、便利な魔法であるな!」

「ホントですよお兄さん。なんでEXアーツが普通に自我をもって生きてるんですか」


 そ、そんなこと俺に言われても。オリジンなんだからオリジナルなEXアーツでもいいんじゃじゃないかな? 


「おっと、そろそろ時間だ。最初は俺達が見張りだから、みんな適当に散らばって」


 ちらほらと自分達の馬車に引っ込んでいく人が現れ始めた。もう一組の討伐者パーティも、俺達に一瞥くれた後簡易テントの中へと入って行った。


 いっきに静まり返る野営地。立地としては草原近くの森に少し入ったところだ。何故いかにも獣がいそうな森の中で野営しているのかというと、普通の獣は火を見ると逃げていくけど、餓獣は何かいると思ってむしろ寄って来るからだ。草原の真ん中なんて見通しのいい所でたき火なんてしようものなら、かなり遠くの方から嫌になるような数の餓獣が集まってくるのだとか。


 さあ4時間頑張ろうか。

 うろうろ。うーろうろ。うろろろろろろろろろろろろろ。


 お? なにかいる。猿だな。ヨダレを垂らしてるから餓獣なんだろう。あんまり音を立てても迷惑だから、風でズバッとやっちゃおう。ズバ! ……やってから思ったんだけど、お腹を空かせた普通の猿って可能性もあったよな。どっちにしろ侵入させるわけにはいかないけど。


「ユート、こっちである」

「はいはい」


 ロンメルトに呼ばれて移動する。うわ、あんな遠いところの獣によく気づいたな。一匹で草原をさまよう……犬? 狼? 一匹狼なんて言葉があるくらいだから狼にしよう。


「ここはやはり余が直々に……」

「返り討ちにあうからやめとけ。ほい。ズバッと」


 かなり距離があるし、こっちに気づかないようなら放置しようかと思った矢先に気づいてしまった。火に向かって寄って来るってことは餓獣だろう。……やってから思ったんだけど、好奇心旺盛なワンコだったって可能性はなかったか? いや、でも凶悪な顔してたしな。


「みぎゃ!」

「オル君どうした!!」


 助けを求めるような声。一体なにが--。


「うへへへ、オル様の鱗すべすべ。これがドラゴンスケイルの魔力?」

「おい、オル君から離れろ」


 問題無し。異常はあったが引きはがしておいたから問題無し。

 チェルカとスフィーダの方は特に何もないようだ。スフィーダは退屈だからか昨日ロンメルトに教わった盾の使い方を確かめている。ちゃんと警戒しろ。一方チェルカはそこまでしなくてもというくらい集中し、目を皿のようにして森を睨み続けていた。




 そして4時間後、それから餓獣が出ることも無く俺達は自分のテントで毛布に包まった。


「じゃ、頼むぞジル」

「ピッ!」


 ジルが音も無く空へと舞い上がった。

 あっちの討伐者達も仕事で来ている以上、夜襲をかけてくる餓獣まで見逃して隊商を全滅に追いやりかねない真似はさすがにしないと思う。思うんだけど、昼間のことがあるから全面的に信用するのは無理だ。いくらオリジンでも寝込みは無防備だしな。


「ふはは、鳥が見張っているならば安心であ……ぐごーーーー」


 早っ!?

 ロンメルトの知られざる特技はともかく、なにかあればジルが知らせてくれることだし、俺もそろそろ寝るとしよう。


「………………」


 ジルからの知らせは無い。彼らは真面目に見張りをしているみたいだ。昼間に釘を刺しておいたのが効いたのか、それとも元々そこまではしない人間だったのか。


「…………」


 安全の為、俺達は男女隔てなく1つの大きなテントで睡眠を取っている。年頃の男女がこんな距離で寝泊りするだなんて! とはならず、特に女性陣はむしろ気にしろよと言いたくなるくらい呆気なく寝息を立て始めた。


「……」


 そして1人興奮して眠れない様子のスフィーダ。幼馴染のチェルカはともかく、智世という知り合ったばかりの年上が近くで眠っていることに、色々妄想しているんだろう。でもまあ、智世にそういうのは期待するだけ無駄だぞ。俺達の存在忘れてるんじゃないかってくらい、ダラけきった寝顔をしてるくらいだからな。


 ジルからの知らせは、無い。




 そして朝になった。


「なんにも無いのかよ!!」

「朝からうるさいぞユート」


 ロンメルトにうるさいとか言われた!?

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