表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/223

剣聖と呼ばれる最強の剣士

遅くなりました。その分、今日中にもう1話投稿したいと思います

 結論から言うと、目を合わせてくれなくなった。


「ふはははは、一応ごく稀にだがAランクに到達する者はいるからな! その二段階ちょっと上、というのがどういった存在なのかを正しく理解はしておらなんだのであろうよ!!」


 そういえばSランク以上の餓獣が出たら町が滅びて国が全軍を上げてようやく討伐って規模になるんだっけ。そしてXランクのアガレスロックは実際セレフォルン王国を滅亡させる一歩手前だった。ってことは、受付嬢から見ればカウンター1つへだてただけのすぐ近くに、国を滅ぼす怪物と同等以上のバケモノがいるということで……なるほど、そりゃ怖い。

 手続きも済んだことだし、あんまり怖がらせないようにギルドを出た方がいいな。


「今まで強いってだけで尊敬とかされてたけど、普通に考えれば怖いっていうのが先だよな」

「ふむ、それは少し違うな。よく知らぬ者が強大な力を持っているから恐れるのだ。凶悪な人間であったならば、どうなってしまうのだろうか……とな」

「まあ、そうだな」

「あの者もユートを知れば恐れはすまい。むしろ友人が強いというのは頼もしいものであるぞ」

「王様のことも頼りにしてるぞ。今は頼りにならないけどな」

「……鎧さえ、鎧さえ無事であればっ」


 本当は鎧なんて無くても頼りにしてる。大雑把なようで、細かいフォローに何度も救われてるからな。さすが王様。オレ愚民。


「すっげーやアニキ! Xランクなんて、人間には不可能だと思ってたぜ!!」


 しかしさっきからスフィーダのテンションがヤバい。さっき船の上で、Xランクなんて冗談でも無理だって言った直後だから仕方ないのかもしれないけど。

 強い力は怖い。でもやっぱりこの餓獣に怯える世界では憧れなんだろう。いや、世界とか関係ないか。男の子はどの世界、どの時代でも強さに憧れる生き物だもんな。


「どうやってそんなにランク上げたんスか!!?」

「ん? 迷宮都市あるだろ? あそこって登れば登るほどランクが上がるんだよ。で、俺達はその迷宮を踏破したから短期間で最高ランクまで上がれたんだ」


 正直、そこいらの町でいくら餓獣を狩ったところでXランクなんて不可能だ。だってそんなに高ランクの餓獣いないし。その点、迷宮は自動で餓獣を用意してくれてるからラクチンだった。もちろんその餓獣を倒せるだけの力があればの話だけど。


「迷宮都市……」


 スフィーダの目がキラキラしている。まるで夢見る少年のよう……ってそのまんまか。


「しかも儲かるんだよなぁ、あそこ」

「カッ!!」


 チェルカの目が光った。夢見る少女? とんでもない。獲物を狙う肉食獣の目だ。何故かカットインのようなものが見えた気がする。


「どれくらいですか!?」

「海にくれてやってなきゃ、俺はもう一生遊んで暮らせたかもな」


 そんなつまらない毎日はお断りだが。

 だけどそうだな、事が落ち着いたらまた迷宮に籠もってお金を貯めよう。そして作るんだ、世界中のドラゴンを集めたユートピアを。やばい、また1つ新たな野望ができてしまった。


「みぎゃ」

「大丈夫だオル君。ユートピアのボスの座はもちろんオル君だから」


 俺はもちろん飼育員……あれ? オル君の部下じゃん。まあいいや。


「スフィ! 迷宮都市に行くわよ!!」

「はあ!? バカお前、何の為に国に帰って来たんだよ!」

「うう、そうだった……」


 故郷が心配で帰って来たんだもんな。偉い偉い。今ちょっとお金の誘惑に負けそうだったけど、偉い。


「どっちにしろ、最低限の実力がなきゃ無理な話なんだ。ゆっくり頑張れよ」

「じゃあアニキ! 時間がある時は訓練に付き合ってくれよ!!」

「それはいいけど、俺は武器とかは専門じゃないぞ?」


 初心者にありがちな、どう動けばいいのかとっさに判断できなくて固まるような事が無い分それなりに戦いに使えているけど、剣だけの実力だけならそこらの中級討伐者にだって負ける程度だ。剣持ってるけど、基本的に俺は魔法使いなんだよな。


「スフィーダは剣を使うんだろ? だったらやっぱり王様が適任じゃないかな?」

「えぇぇぇ……」


 ロンメルトが胸をはって高笑いするより早くスフィーダの不満そうな声が上がった。


「なんだよ。王様だってXランクだぞ」

「だってこの兄ちゃん、自分の剣だって振れないんだぜ? なんでそんなデッカイ剣持ってんだよ」

「ふっ、ロン様は真の力を失っているだけ。枷から解き放たれたロン様は剣聖と呼ばれる最強の剣士」

「ま、マジかよ……」


 ま、マジかよ。いつの間に剣聖なんて称号を……ってんなわけ無い。でも大体合ってる。だから確認するように俺を見るスフィーダには頷きで答えた。


「俺、てっきりアニキ達に寄生してランクを上げただけのヘタレだとばかり……」


 うん、それが誤解だと思ってんなら口に出すな。さすがのロンメルトも笑顔がひきつったぞ?


「ふ、ふはは……修行中の身ではあるが、助言くらいはできるであろう」

「う、うすっ!!」


 こうして新たな師弟関係が生まれた。ところでチェルカが何かを期待するような目で俺をジーっと見てくるんだけど、どうしよう。何を期待しているのかは解ってるけど、俺にはそれに応える術が無い。


「ごめん、弓に関してはサッパリなんだ」

「がーん……」


 ああ、ショックのあまり自分で効果音言っちゃったよ。でも知り合いの中にも弓を使う人はいないからなぁ。一番近いのでケイツ元帥の拳銃だけど、射撃という点が同じだけで、やってることはかけ離れてるからな。どうしようもない。


「ま、まあ何だ、餓獣が出たら経験詰ませてあげるから。貴重なチャンスだと思うぞ!? 命の保証がされてる実戦なんてさ!」

「はい……、ありがとうございます!」


 ちょっとションボリしてるけど、納得はしてくれたようだ。サバイバル術とかなら教えられるかもだけど、彼女の弓術は狩猟で鍛えたらしいから既に知ってそうなんだよな。ぶっちゃけ俺達って討伐者になった時期が大差ないから、向こうの方が詳しいかもしれないくらいだ。


「ではまず走り込みである! ついてまいれ!!」

「うすっ!!」

「おす!」


 なんか弟子増えてるぞ。

 走り出すロンメルトと、それを追うスフィーダと智世。ああ、剣使いたがってたもんな。いい機会かもしれないから、このまま見守ることにしよう。

 まずギルドを出るため入口に向かって走り出す3人。開始3秒で智世が転んで動かなくなった。次にロンメルトが入口近くの壁に手を当てて休み始めた。おい、せめて外まで行けよ。

 スフィーダも唖然としてる。


「ア、アニキ……?」

「嘘ではないんだ。剣技だけはキチガイみたいな腕してるんだ、本当に」


 ただちょっぴり、虚弱体質なんだよ。ほんのちょっぴり。


「……助言だけでいいッス」

「うむ」


 うう……情けない。王都に着いたら急いでガガンの所に行こう。こんなロンメルト見ていられないっ。



「おいおいおい冗談だろ」



 唐突に割り込んで来た声の方を見ると、いかにも討伐者らしい武骨な恰好をした男が5人。その後ろにボロ布のような貫頭衣一枚だけという身なりをした10才前後の子供が1人立っていた。そうかしまった、琴音が言ってた「ギルドに登録したら先輩にからまれるお約束」が起こってしまったのか。智世が初登録なんだから可能性はある。


「おいおい、そんな目で見んなよ。俺たちゃお前さんらが受けた護衛依頼を受注してた者だよ。数日前から待ってた残りのメンツがようやく決まったかと思えば、ちょっと走っただけで息切れするガキ共とあっちゃ文句の1つもいいたくなるってもんだ。そうだろ?」

「……かもな。けど安心しなよ。あそこでゼイゼイ言ってるのは事情があって今はポンコツだけど、俺は正真正銘Xランクの討伐者だ。正直に言って、アンタらじゃ何人いても届かないだけの力はあるよ」

「……へぇ?」


 リーダーらしき、他のメンバーより少し上等な装備を身に着けたボサボサ頭の男が目を細めた。信じてない、という雰囲気じゃない。こいつらの様子からして、さっきから俺達の会話を盗み聞きしていたみたいだし。


「条件を満たしてる以上、依頼主でもないヤツに文句を言われる筋合いは無い……とでも思ってるんだろうなぁ? でもな、お前らが役立たずだった時にとばっちりを喰らうのは俺達なんでね?」

「……どうしてほしいんだよ」


 言ってることは間違ってはいないんだけど、明らかに何か条件を呑ませようって気配はしていて気分が悪い。


「いやなに、俺達はお前さんらがどんな目に遭おうが助けないってだけさね」

「つまり俺達も助ける必要は無いってわけだ」

「そういうこった。不可侵条約ってとこかね。それで良ければ、俺達からはなーんの文句もありゃしない」


 依頼主からしたら、助け合えよ金払ってるんだからってトコだろうな。まあ本当にやばそうなら助けてやろう。こっちは助けてくれなくていいって言っとけば、助けられて文句を言われることも無いだろ。


「それでいいよ。ところで先に受注してるのは5人って聞いてたけど、1人多くないか?」

「あのガキは、まあ小間使いみたいなもんさ。路頭に迷ってたから使ってるだけさね。人数なら気にするこたぁ無い。今回の依頼に連れてく気は無いんでね」

「……そうか。じゃあ、また仕事で会おう」


 男達が去っていく。

 あの子供……いや、俺が気にすることじゃないか。ボロボロの汚い服の破れ目から暴力を振るわれた形跡が見えるけど、路頭に迷っていたというなら食事にありつけるだけマシってことなんだろう。飢えて死んでいく子供も多い中、むしろ運がいい部類だ。


「智世、いい加減起きろ」

「無理。おぶって」


 仕方ないのでコートの背中の辺りを掴んで運ぶことにした。なんか「ぐえっ」って聞こえた気がするが、楽をする代償だ。



 その後、依頼主の商会に挨拶をしに行った。特に問題もなく……むしろ俺とロンメルトのランクに興奮して大歓迎された……承諾され、今後の予定を聞くことができた。俺達の準備ができているなら明日にでも出られるということなのだが、さすがに今日着いたばかりなので明後日にしてもらうことにした。

 明日は1日、休養と準備に当てよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ