くりまんじゃろと僕
奴との出会いは、学校の帰り道。
奴は、
道端に落ちていた。
それは、どこから見ても、
立派なくりまんじゅう。
何故今時道にむき出しのくりまんじゅうが?
すっげー不自然。
とても、あやしい。
ていうか、でけーよ。
様々な考えが頭の中を巡った後、オレが取った行動は、
とりあえず、避けて通ろう。
だった。
しかし、脇を通り抜けた途端。
そのくりまんじゅうに、
にょきっと、丸い手足のようなものが生えて。
ぱちっと、半円形の目が開いて。
「うゆーっ!」
と。
鳴きながら、飛びついて来たのだ。
オレは衝撃のあまり、10秒ほど固まった後、
とにかく叫びながら、走って逃げた。
しかし奴は、うゆうゆ言い、ぴょんぴょこ跳ねながら後を追って来るではないか。
1キロほど走って、息が切れ、諦めて止まったところで、
「うゆ、うゆ~」
奴はぴょい~んとジャンプして、オレの肩に乗った。
「な…っ、何なんだよ、お前は!」
問いかけても、
「うゆ、うゆうゆうゆー!」の繰り返し。
「『うゆ』じゃわかりません」
冷たく言い放ってやったら。
奴はさっと、日本語の書かれたボードを差し出した。
ちなみに、達筆だった。
そこには、こう書かれていた。
『拝啓
わたくしはF78星雲のくりまんじゃろ星からやってまいりました、くりまんじゃろと申します。
実は恥ずかしながら、わたくしの宇宙船が突然胡椒してしまい、地球に不時着せざるを得なくなってしまいました。
宇宙船が壊れては、仲間との連絡もままなりません。
つきましては、こうして出会ったのも何かの縁、貴男様にしばしの宿をお借りしたいのですが、よろしいで御座いましょうか。
かしこ。』
かしこ。って、メスかよ。
「っていうか、コショウ間違ってるぞ」
一通りツッこんだ後で、オレは首を横に振った。
「嫌だね。お前みたいな得体の知れない奴とは、関わり合いたくないよ」
ガビーンとショックを受ける、奴―くりまんじゃろを、ぽいっと道に放り出す。
「オレは平凡な高校生でいたいんだ!」
そのまま奴に背を向けて、歩き出す。
「うゆ! うゆうゆ!? うゆー……」
奴の声がだんだん、泣き声に変わっていったが、オレは振り返らなかった。
しかし。
家に帰ってからも、奴の泣き声が、耳について、離れない。
窓の外を見れば、空はどんどん曇ってきて、夜になり、雨が、降り出した。
奴に行くあては、無いだろう。
くりまんじゅうみたいな奴だから、雨に濡れたら、ふやけちまうかもしれない。
オレは、傘を手に、部屋を飛び出していた。
奴はいた。
出会った場所から、ほとんど離れていない、ゴミ収集所に。
苦笑して、手を差しのべる。
「…うちに、来いよ」
そうして。
我が家には、家族が一匹増えた。
三日後、
カビた。
また三日で元に戻ったが。