プロローグ
この物語は、主人公の人生である。
彼は今生きている。
私たちは、彼の心を“読む”ことができる。
どんな人生として終わるのか。
それはまだ、誰も知らない。
皮膚を貫く感触が手元にあった。何が起こったのかは、把握している。いつものことだ。自分で言うのもおかしいものだが、慣れた手つきで文字を紙に書きあげる。何を書くかは最初から決めていた。だから、滑らかに書くことができた。
『罪状……強姦罪』
目の前の死体に刺さっているナイフの柄を手にかけ、抜く。そして、今しがた書いた紙を腹の真ん中に置き、その上から引き抜いたナイフで突き刺した。まだ死後硬直には至っていない。そんな事実が、ナイフを刺した時の感覚からわかるのであった。
これはいつものことである。今頃、まだ警察は俺のことを探しているだろう。おそらく指名手配までして。だが、捕まるわけにはいかない。一般のミステリー小説などを読んでいると、俺みたいな犯人はたいてい終わりのある目標を掲げている奴ばかりであるが、俺は違う。俺がこれを止めるとき。それは俺が自らに終止符を打つときだ。あまりうまい言い替えにはなっていないが、仕方がない。俺には、ほんの少しの教養しかないからだ。生まれも育ちも悪い人間。俗に下衆とでも呼ばれるような人間だ。そんな俺は今を生きている。
「もう行かなければ」
もたもたしていれば警察に捕まってしまう。俺はまだ、捕まるわけにはいかない。俺にしかできないやり方で、俺は生きる。人のために動く。だから、まだ…………いや、一生俺は捕まるわけにはいかないのだ。それが、俺の業。生まれつきとは言い難いが、今俺が生きている全てが、この行動にあるから――――――。
一度は挫折した連載小説に再挑戦です。
流れはほんとに大まかにしか作っていません。
見切り発車と言っても過言ではないです。
でも、面白くするつもりです。
この雰囲気を楽しんでいってください。