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物事が何も好転しないまま、土曜日を迎えてしまった。しかも夜勤明けの土曜日の朝。緊急が立て続いた為、ヘロヘロになり家に入る。
「あ・・・」
迎えてくれたのは、写真立ての中でユニフォーム姿で俺と肩を組んだマサの姿。
そうか・・・。買うものは、決まった。
「―――プレゼント、買いに行こう」
ほとんど寝ていない疲れた身体に鞭打って、シャワーを浴びると再び外へと繰り出した。
意識を取り戻したのは、けたたましい着信音が鳴り渡ったからだ。
「・・・もしもし」
『ナル!やっと連絡ついた』
ん?マサ?・・・待てよ。今、何日の何時だ?
一気に血の気が引いた。混乱する頭を整理するため、土曜日の朝まで振り返る。
俺は疲労困憊の体でプレゼントを買いに出た。買う物は突如閃いて決まっていたが、買うのに店を数件まわった。店員さんの話を聞いて目的の物を買い、更には美弥に言われたケーキの材料も買った。
そんで午後3時過ぎ、家に帰った。美弥に教わった作り方通りに作業を進めた。作るのはマサの好きなチーズケーキ。ちなみに甘さ控え目らしい。
「買ってきた紙の型紙に・・・砕いたクッキーに溶かしたバター混ぜたのを敷き詰める」
うん。この位は出来る。
「あとは材料全部ミキサーに入れる。卵、クリームチーズ、サワークリーム、生クリーム、砂糖、レモン、ブランデー、小麦粉・・・」
多い。全然簡単じゃねーし。俺んちにミキサーがあったのも奇跡だな。
「170度に予熱をしたオーブンで50分―――予熱って何だ?」
美弥に電話して聞く。そして何とかオーブンに投入。もう夕方。でもあとは焼き上がるのを待つだけ―――。
嫌な予感がした。
「今、何曜日の何時?」
『日曜日の10時だけど』
「午前?午後?」
『午後』
「嘘っ?!」
『嘘だよ、午前だって』
「な、なんだよもー・・・」
それでも寝過ぎた事には変わりはない。本当なら日付変更までにはマサん家に行こうと思ってた。
『何だよはこっちのセリフだって。週末バッシュ買いに行くから付き合えって言ってたの、ナルだろ』
あ・・・そんな事言ってごまかしたっけ。
ああっ!?そういえばケーキは!
急いでオーブンレンジのドアを開けると、幸いチーズケーキはいい色に焼き上がり、既に冷たくなっていた。
『俺、結構楽しみにしてたんだからな。ナルが誘ってくるなんてあんまり無いし・・・』
電話口ではマサが少し拗ねていた。
「今、家にいんの?」
『え?ああ。ナル待ち』
「すぐ行くから!待ってて」
チーズケーキと買ったプレゼントとを紙袋に入れ、家を飛び出した。
早くマサに会いたい。