表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

1

 俺は今、悩んでいる。

「マサ、来週末何してんの?」

「来週?今週じゃなくて?ナルが先の予定聞いてくるなんて珍しいな」

 他意はなく、純粋に問い返してくる。その日がマサ自身の誕生日だという事も忘れて。


 6月15日、日曜日。俺らは揃って休日。―――そして、25年前にマサが生まれた日。

 こういう時に、先に生まれた方は得だと思う。初めてでは祝い方の加減が掴めない。何かしてあげたい、喜んでもらいたい気持ちは山ほどあるんだけど・・・。何せ今まで付き合ってきた女の子にさえ、自分からちゃんと祝ったことがないかもしれない。だから本当に、わからないんだ。

「その日、ちょっと付き合って欲しいから、空けといて」

「え、いいけど。何、前言ってたバッシュ買うってヤツ?」

 マサが部屋に飾っているバスケの大会で優勝した時の集合写真を見ながら聞いてきた。マサの部屋にもあるヤツだ。お互いカメラは持って無いけど、部活で写真はよく貰う。

「あー・・・まあ、そんな感じ」

 テキトーに言葉を濁した。実際、男同士なんて普通は誕生日なんて祝わないもんだろ。俺らだって今までも大して祝ったことはない。俺自身は祝いたくなかったわけじゃないけど。

 第一、まだ何も決められていないから、言いたくても話せないわけで。とりあえず、何か考えるなら今週末しかない。

「ナル、今週末は?」

 あ・・・。

「悪い、今週はちょっと・・・」

 不自然に言葉を濁してしまったか?でもしょうがない。来週にはマサにちゃんと説明しよう。

お前の誕生日の準備をしてたんだって。



「何買えばいいんだよ・・・」

 6月8日、日曜日。俺は朝から街を歩き回っている。百貨店やらスポーツ用品店やらCDショップやら。女の子相手なら、アクセサリーとか鞄とか少しは想像つくんだけど。6月ってのも厄介だ。クリスマスは手袋、みたいな季節モンが無い。強いて言えば雨傘か。マサは何が欲しいんだ?

「いらっしゃいませー!何かお探しですか?」

「あ、いや・・・」

 店員さんにも何言ったらいいんだ。恋人は男で、初めての誕生日プレゼント?言えるワケねー!・・・本人に聞いた方がいいのかな。いや、それじゃ意味ないだろ。

 自問自答しながら、結局この店でも決めかねた。


 バスケ用品・・・実用的過ぎるか。欲しがってたスゲーチャリ・・・そんな高いモン貰っても困るだろ。俺んちの合鍵・・・俺んち遠いからマサはあんまり来れねえしな。あー・・・もう!どうしたらいいんだ。

 悩む頭を抱えて一休みのために入ったコーヒーショップ。そういえば前にマサの元カノと入ってマサに見られたのも、この店だ。そこで見てはいけないものを、見た。

「あ・・・?」

 その二人は店の奥の目立たない席に座っていて、最初は気づかなかった。しかし、間違いない。

「マサと、元カノ・・・」

 元カノの杏奈。何で二人で?そして俺の記憶が確かならば、マサの誕生日の1週間前は。


 ―――マサの元カノの、誕生日。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ