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極彩は踊る  作者: ごろー
曉の騒乱編
14/14

黒の真意

呪文っぽいもの、始めました

全ては、予定通り。


日付の変わる鐘の音を聞き乍ら、マクシミリアンは祝杯のグラスを傾けた。城の尖塔、丁度魔帝の寝室に当たる部屋からは静かに膨大な魔力が吹き出している。それは魔帝が目覚めた事を意味するのだ。そんな事実をワインの渋味と一緒に噛み締め乍ら、マクシミリアンは"計画"を心の内で反芻した。


明日、魔帝、皇子、狗に兵を向ける。


全ては権力により近付く為。何時かは魔帝の座を奪い、己やそれに連なる者が其処に就ける様に。権力を、全て掌握出来る様に。


それが、我がトレッシャーの長年の願い。


「重線、ねぇ。実に上手い例えだよ」


ぼそり、とマクシミリアンはそう零す。目をさも可笑しそうに細め、ワインの入ったグラスを揺らし乍ら。


(でも)


彼は鼻をフフン、と鳴らす。


そのトレッシャーの願いの本当の意味を知っている者は誰も居ないのだよ。私以外には…ね。


彼は徐に目を閉じ、深く息を吸い込む。そして、管を繋ぎ変える様に、慎重に思考を、切り替えた。


「さて、私自身がすっかり忘れていた(・・・・・)計画はどうなるかな」


じわり、と懐かしい何時かの思いが頭を占領してゆく。脳味噌の何処かにぴりりと電流が走った様な軽い痺れが押し寄せ、また直ぐに引いていった。


(何度やっても…此の感覚には慣れん)


マクシミリアンは手近にあったグラスをむんずと掴み、一気に中身を煽った。アルコールが喉を灼く感覚に思わず顔を顰める。


重線が意味するもの。其れは誰にも干渉されず、誰にも感知されない、もうひとつの思考回路。故に、幾ら心が読める存在であろうと、奥に仕舞ってしまった考えを探る事は出来ない。


かの先人は其れを思考棄却と呼んだ。


帝家と同じく地の民の系譜を引く、トレッシャーの人間のみが持つ事を許される異能。圧倒的な帝家の力から魔術の民を護り得る唯一の抑止力。この力のお陰で本来の目的を悟られることはなかったことを考えると、思わず苦笑が零れる。何という因果なのだろう。



目障りなのは、貴方の方ですよ。シャール・サルタイアー。いえ、・・・の尖兵。




もうひとつのせかいから

唯一向に見つめている、


私は矛盾を切り捨てる者

私は矛盾を内包するヒト


故に、

矛盾を合理に変えねば成らぬ


|反転せよ《Retournez-vous》


もうひとつの思考回路(オモテとウラ)


私は唯人民(ひと)の為に

貴方は唯(じぶん)の為に


この異能(ちから)を振りかざす


歓喜(よろこび)は何処へ眠る

悲哀(かなしみ)は何処で待つ


そしてそれは、

誰が為(たがため)存在す()るのだろうか






まさかの展開に私が一番驚いている、ハズ。

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