噂話が流れて
屋敷の使用人の噂話で兄アダムが後継者候補から外れて代わりに姉モニカを据えるのではないかと聞いた俺は単なる噂話だと思いながらも、ラオール家内で何かが起きようとしている予感がしていた。
「しかしジュン様、ジュン様はこのお話を聞いておられないのですよね?」
「ああ、いくら兄上に問題があるとはいえいきなり後継者から外すというのはいくら何でも突拍子がなさすぎるからな」
「そうですな、まあ我らは領内を守る為に剣をふるうのみですが」
そう言って騎士は訓練に臨むべく、準備の為に別室へと一度移動した。
「ジュン様、ラオール家が武門の家である以上実力の高いアダム様が当主になるのが収まりがいいはずです」
「だけどこういう噂が流れるという事は少なからず兄上が後継者である事に疑問を抱いた者がいるという証明になるからな。この噂がお2人の耳に入っているのかどうか?」
「……まあ、いずれはっきりするでしょう。俺達は訓練を続けましょう」
確かにそうなんだよな。実子であるにも関わらず俺には噂話でも後継者候補の話が出てこない。やはり魔力がないというのは候補になるかどうか以前の問題なんだな。
そう考えているとどこからともなく声がした。
「ジュン様、メイルただいま戻りました」
「あ、メイル巡回ご苦労様」
「ありがとうございます。しかし妙な噂が使用人の間で流れているようですね」
「ああ、兄上ではなく姉上が後継者にふさわしいという話が流れているそうなんだ」
メイルも戻る途中でその話を耳にしたのか。そこから更に俺も話し始めた。
「メイル、もしかしたらこの間の指揮下を離れた話での兄上の判断が引き金になってこんな噂が流れたのか?」
「分かりませんが、その可能性はありますね」
「だけど一体どこからこんな話が出たんだ?」
「ジュン様、ご兄弟間の問題ではありますがこれは我らラオール家にも関わる問題ですし、あまり噂に振り回されないほうが良いかと」
確かにそうだよな。しかしこのままじゃあちょっと気持ち悪いな。
「メイル、今日は訓練が終わった後に姉上が勉学を見てくださるんだ、そこで少し探りを入れてみようと思う」
「そうですか、分かりました。何か分かればお教えください」
「ああ、さあメイルも訓練の準備をしてきてくれ」
「はい、それではお待ちください」
噂話ではあるが、父上が兄上を後継者候補から外したというのはそれほど以外でもないし、長女であるモニカもアダムほどではないとしても高い魔力は有しているし、何より内政に力を入れている。領内を安定させるという意味ではモニカのほうがふさわしいんじゃないかと俺は思っていた。




