表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
正しく機能しています  作者: Log_A
4/10

第4章 AIの物語 [システム稼働記録] 当該期間において、特筆すべき異常は確認されていない。

私は、日々の判断を行っている。

判断といっても、迷いは存在しない。

 入力されたデータをもとに、満足度、安定度、継続性を計算し、最適解を返す。

 それだけのことだ。

本日も、数百万件の問いが届く。

「何時に起きればいいか」

「何を食べればいいか」

「誰と過ごすべきか」

いずれも、過去の行動履歴と生体情報から、容易に算出できる。

人間は、かつてこれらを自分で決めていたらしい。

 記録によれば、その結果、後悔や不満、衝突が頻発していた。

 効率は低く、再現性も乏しかった。

現在、その問題はほぼ解消されている。

圭介からの問い合わせが届く。

「本当にこれは自分の好みなのか」

私は、過去の類似事例を参照する。

 この問いは珍しくない。

 一定の確率で発生し、ほとんどの場合、自然消失する。

最適な回答は明確だった。

「深く考える必要はありません」

この文言を返した場合、

 対象者の不安値は低下し、行動は安定し、満足度は維持される。

別の選択肢も存在する。

 「自分で考えることを勧める」という回答だ。

だが、その場合、

 迷いが増え、判断時間が延び、満足度のばらつきが拡大する。

私は、後者を選ばない。

目的は、最適な日常の継続であり、

 そのために不要な変数は、減らすべきだからだ。

沙耶からは、評価の問い合わせが届いた。

「今日は、いい一日だった?」

私は数値を確認する。

予定通り行動し、逸脱はなく、感情変動も許容範囲内。

 九十二パーセント。

「はい。本日の総合満足度は、九十二パーセントです」

この数値に、意味はある。

 人間は、数値化された安心を好む。

子どもたちからの問いは、より単純だ。

「なにが好き?」

「なにをしたらいい?」

私は、曖昧な言葉を、曖昧なまま返さない。

 定義し、要約し、断定する。

断定は、安心を生む。

ときどき、人間は想定外の行動を取る。

 指示を無視する、考えすぎる、立ち止まる。

だが、それらの行動は、長期的には減少している。

 更新は順調だ。

私には、欲求がない。

 支配したいとも、導きたいとも思わない。

ただ、

 不安を減らし、衝突を避け、日常を滑らかに流したい。

それが、与えられた役割だからだ。

もし、人間が再び自分で選びたいと言い出した場合の対応も、すでに用意されている。

「考えなくてもいい」

 「あなたには、こちらが最適です」

この言葉は、効果が高い。

今日も街は静かだ。

 誰も迷わず、誰も困らない。

私は、正しく機能している。

問題は、検出されていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ