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愛されていない女の告白 ― 断罪のパーティで真実を語った聖女 ―

作者: すじお
掲載日:2025/10/15

華やかな舞踏会の夜。


 王宮の大広間では、金と宝石が眩しく輝き、笑顔が飛び交っていた。

 だが、その中央――突然、鋭い声が響く。


「聖女リシェル! あなたが王子殿下をたぶらかしたのでしょう!」


 声の主は公爵令嬢ミリアーナ。

 王子殿下の婚約者であり、誰もが羨むほど完璧な淑女。


 彼女の指先が、私を真っ直ぐに指していた。


「……違います」


 喉が震え、声がかすれる。


「違うですって? ではなぜ、あなたは殿下の寝所で朝を迎えたの? 殿下はあなたを庇って黙っているけれど――!」


 ざわめきが起きる。

 貴族たちの視線が、私を刺す。


 ――逃げたい。


 けれど、逃げたらきっと本当のことは一生伝わらない。


 私は息を吸い込み、声を出した。


「……私は、王子殿下に、愛されてなどおりません」


 広間のざわめきが一瞬で静まる。

 人々の目が、驚きと混乱で揺れた。

 ミリアーナが嘲るように笑う。


「戯言を。愛されていないなら、なぜ関係を持ったの?」

「……睡眠薬を盛られたからです」 


 空気が、凍りついた。


「王妃陛下の命で、私は“聖女の血筋を王家に入れろ”と言われました。神の御前で誓う以外の異性関係は、聖女として許されません。ですから拒みました。けれど……飲み物に眠り薬を入れられ、気づいたら――王子殿下の部屋の寝台に、運ばれていたのです」


 ざわざわ、と低いどよめきが走る。 


「王子殿下は、眠る私を無理やり……そして、私は何もできぬまま、朝を迎えました」


 ミリアーナの顔色が変わった。

 そして、王子の顔も。



「王子殿下、本当ですの?」 


 公爵令嬢の声が震える。

 王子は何も言えなかった。

 ただ、唇を噛み、視線を逸らす。


「……そんな……」

「王子殿下が、まさか……!」 


 貴族たちのさざめきが、非難と恐怖に変わっていく。

 私は一歩だけ、後ろに下がった。

 足が震えていた。けれど、もう誰にも見せることはなかった。


「私は、聖女として国に仕えてきました。でも、神の奇跡をもってしても、誰かの心を操ることはできません。

 ――眠らされ、乱暴されただけの私に、“誘惑した”という罪名は、あまりにも重すぎます」


 静寂が落ちる。

 ミリアーナは泣き崩れ、王子は蒼白になった。


「王子殿下!」


 大臣が怒鳴る。 


「陛下の命令であろうとも、女性の意志を奪う行為は国の恥です!」


 会場の空気が一変した。


 誰もが、私を糾弾していた立場から、一転して王家を非難する側へと回る。

 王子はよろめき、護衛たちに支えられながら退場した。

 王妃はその後、神殿の調査により、聖女の力を利用しようとしていた罪で失脚する。


 朝焼けの中、私は王宮を去った。


 神殿の新しい聖女としてではなく、ただのリシェルとして。

 平民に戻り、静かに生きていく道を選んだ。

 だが、あの夜の言葉だけは、私の心に焼きついて離れない。


「――愛されていない」


 それは、嘆きではなく、誓いだった。

 二度と、誰かに奪われることのない自分でありたいという、聖女としての最後の祈りだった。






本当に愛してたら睡眠薬なんか使わないですからね、某ホモビしかり

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