愛されていない女の告白 ― 断罪のパーティで真実を語った聖女 ―
華やかな舞踏会の夜。
王宮の大広間では、金と宝石が眩しく輝き、笑顔が飛び交っていた。
だが、その中央――突然、鋭い声が響く。
「聖女リシェル! あなたが王子殿下をたぶらかしたのでしょう!」
声の主は公爵令嬢ミリアーナ。
王子殿下の婚約者であり、誰もが羨むほど完璧な淑女。
彼女の指先が、私を真っ直ぐに指していた。
「……違います」
喉が震え、声がかすれる。
「違うですって? ではなぜ、あなたは殿下の寝所で朝を迎えたの? 殿下はあなたを庇って黙っているけれど――!」
ざわめきが起きる。
貴族たちの視線が、私を刺す。
――逃げたい。
けれど、逃げたらきっと本当のことは一生伝わらない。
私は息を吸い込み、声を出した。
「……私は、王子殿下に、愛されてなどおりません」
広間のざわめきが一瞬で静まる。
人々の目が、驚きと混乱で揺れた。
ミリアーナが嘲るように笑う。
「戯言を。愛されていないなら、なぜ関係を持ったの?」
「……睡眠薬を盛られたからです」
空気が、凍りついた。
「王妃陛下の命で、私は“聖女の血筋を王家に入れろ”と言われました。神の御前で誓う以外の異性関係は、聖女として許されません。ですから拒みました。けれど……飲み物に眠り薬を入れられ、気づいたら――王子殿下の部屋の寝台に、運ばれていたのです」
ざわざわ、と低いどよめきが走る。
「王子殿下は、眠る私を無理やり……そして、私は何もできぬまま、朝を迎えました」
ミリアーナの顔色が変わった。
そして、王子の顔も。
「王子殿下、本当ですの?」
公爵令嬢の声が震える。
王子は何も言えなかった。
ただ、唇を噛み、視線を逸らす。
「……そんな……」
「王子殿下が、まさか……!」
貴族たちのさざめきが、非難と恐怖に変わっていく。
私は一歩だけ、後ろに下がった。
足が震えていた。けれど、もう誰にも見せることはなかった。
「私は、聖女として国に仕えてきました。でも、神の奇跡をもってしても、誰かの心を操ることはできません。
――眠らされ、乱暴されただけの私に、“誘惑した”という罪名は、あまりにも重すぎます」
静寂が落ちる。
ミリアーナは泣き崩れ、王子は蒼白になった。
「王子殿下!」
大臣が怒鳴る。
「陛下の命令であろうとも、女性の意志を奪う行為は国の恥です!」
会場の空気が一変した。
誰もが、私を糾弾していた立場から、一転して王家を非難する側へと回る。
王子はよろめき、護衛たちに支えられながら退場した。
王妃はその後、神殿の調査により、聖女の力を利用しようとしていた罪で失脚する。
朝焼けの中、私は王宮を去った。
神殿の新しい聖女としてではなく、ただのリシェルとして。
平民に戻り、静かに生きていく道を選んだ。
だが、あの夜の言葉だけは、私の心に焼きついて離れない。
「――愛されていない」
それは、嘆きではなく、誓いだった。
二度と、誰かに奪われることのない自分でありたいという、聖女としての最後の祈りだった。
本当に愛してたら睡眠薬なんか使わないですからね、某ホモビしかり




