表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナイトメア・ミステリア  作者: 堂樹
【Case2】少女たちの記憶を繋ぐ
32/60

【1】



【Case2】少女たちの記憶を繋ぐ




〝幽霊と心を通わせた人間は死んでしまう〟

 この件について詳しい調査を行うと約束した日から一週間。調査自体は大して前進していないが、ひとつ変化があった。春斗くんが私の部屋の隣に住み始めたのだ。


 彼いわく『一緒に調査を進めるなら傍に住んでいた方がいい。連絡を取り合えないから』とのこと。


 うちのアパートはワンルーム家具付き。ソファベッドがあるため、春斗くんでも必要最低限の生活ができる。もちろん隣に誰かが引っ越してくるまでの間になるが。


 そんな現状についてはともかく、重要なのは調査の方だ。


 まず行ったのはオカルト関連サイトの閲覧。それらしい内容を書いているページは複数発見できたが、オカルトマニアの憶測や信憑性のない噂の域を出ず……。


 次に、天海ルイの話に出てきた雑誌《レイコンカイ》を調べた。

 正式名称は《霊魂の世界》。

 約二十年前に廃刊した雑誌で、ファンの間では《霊魂界》と呼ばれていた。


 発行は年に一~二回と不定期。

 廃刊から間もなく出版社は自己破産していた。


《霊魂界》を毎号購読していた人物のブログによると、この雑誌で《霊と愛を誓った人間の末路》という特集が組まれたらしい。そこでは《人間と霊は共存できるのか》というテーマで多角的な検証・考察が行われていた。


 幽霊に呪い殺された人物(?)の友人証言も掲載されていたそうだが、芸能ゴシップと同じ臭いがする。この手の話は結局、事実かどうか確かめようがないのだ。


 それでも一応《霊魂界》を読むことができないかと吉野さんの実家へ出向き、彼のお母さんに訊ねた。しかし、書籍は全て資源回収に出してしまったとのこと。残酷な写真やイラストばかりで、取っておこうという気持ちになれなかったそうだ。


 春斗くんにお願いされ、フリマアプリやオークションサイトも覗いてみた。数少ない出品の中から三冊落札してみるも、役立つ情報は見付からず……。


 一方、春斗くんも幽霊から情報を集めようとしている。街を散策しつつ出会った幽霊に聞き込みを行っているそうだが、今のところ目ぼしい情報はなし。今日も成果なしで終わるだろう。


 ジョギングから帰宅した後で現れた春斗くんに話を聞くと、案の定『駄目です』とシンプルな言葉が返ってきた。


『本当に誰も情報持ってないですね。YouTubeには都市伝説とかたくさん上がってるのに』


「そういうのもどこまで事実か分からないもんね」


『まぁ俺としては、ルイの話の真偽を確かめるより、人間と仲良く共存できるための方法を知りたいんですけどね。早く何とかしないと』


「焦っても仕方ないよ」


 正直、何の危機感も持てないのが現状だ。命が危ないと言われたところで、たとえば心臓に刺すような痛みが走るとか咳が止まらなくなるとか、何かしらの症状がない限り実感など湧かない。


「私が思うに、あれは天海ルイの脅しだったんじゃないかな。私を引き離して春斗くんをモデルに使うために」


『もちろん可能性としては考えられますよ? でも確証がない以上〝噂は事実である〟と仮定した上で動かないと。何の予兆もなくコロッと逝っちゃったらどうするんです?』


「……怖いこと言わないでよ」


『そう、恐ろしいことなんですよ。もし俺のせいで凛花さんが死んじゃったら、後悔してもしきれないと言うか……』


「万が一私が今この瞬間倒れて死んだとしても、それが春斗くんのせいかどうかなんて分からないでしょ?」


『そりゃそうですけど……。納得いくまでとことん調べたいんです。俺はこんな身体になっちゃったけど、凛花さんには元気に長生きしてほしいですから』


 春斗くんがそう言うなら止めはしない。好きなだけ聞き込みを続けてくれればいいが、私にできることはもうないと思う。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ