人間性の回復
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リスタート戦記:記憶喪失の俺と少女の手帳 連載中です!
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アキラはゲームの世界に没頭していった。
彼は様々なアナログゲームを試し、その奥深さに魅了された。
チェスでは、論理的な思考と先を読む力が養われた。
将棋では、大局観と柔軟な発想が求められた。
囲碁では、全体を見渡す視野と、小さな石一つにも意味を見出す繊細さが培われた。
システムからの警告は日常となり、彼のパフォーマンス評価は最低を記録していた。
しかし、アキラの心は、かつてないほど充実していた。
彼は、ゲームを通して、自分の中に眠っていた「人間性」を取り戻していくのを感じた。
感情が豊かになり、思考が深くなった。
そして、何よりも、「楽しい」という感覚を知った。
ある日、アキラは「タイムワープ堂」で、一人の女性と出会った。
彼女もまた、アナログゲームを買いに来ていた。
彼女は「ユキ」と名乗った。
ユキもまた、最適化された社会に息苦しさを感じている「ナチュラル」だった。
二人はすぐに打ち解けた。
ゲームの話、昔の世界の話、そして、この最適化された世界の不条理な話。
会話は尽きなかった。
ユキは、アキラに「手芸」というものを教えてくれた。
無数の糸と針を使って、美しい模様を編み出す。
それは、予測不可能な偶然性とは違う、しかし、計算だけでは生まれない「創造性」に満ちたものだった。
アキラは、手芸にも夢中になった。
無機質なデータばかり見ていた彼の目に、カラフルな糸の色が鮮やかに映った。
指先で感じる布の質感、針が布を貫く微かな音。
全てが、彼にとって新鮮な驚きだった。
彼らは、時にゲームで勝負し、時に手芸を教え合った。
二人の間には、温かい交流が生まれた。
それは、システムが「非効率」と判断するであろう、しかし、人間にとってかけがえのない時間だった。
アキラは、もう「最適化」された自分に戻りたいとは思わなかった。
彼は、不完全で、無駄が多くても、人間らしく生きることに喜びを感じていた。
彼のパフォーマンス評価は、もはや関係なかった。
彼は、自分自身の価値を、システムではない場所に見出したのだ。
最終話:アナログの輝き
ある日、アキラの元に、システムから最終警告が届いた。
「アキラの遺伝子最適化プログラムは、限界に達しました。強制的な再最適化処置を実施します」
それは、アキラの「人間性」を奪い、再びシステムに組み込むための処置だった。
アキラはユキに連絡した。
「僕、この世界から逃げたい」
ユキは黙って頷いた。
老人が、二人に古い地図を渡してくれた。
「この地図の先に、まだ最適化されていない場所がある。そこには、君たちのような人間が、ひっそりと暮らしている」
二人は地図を頼りに、地下の通路を進んだ。
システムからの追跡をかわしながら、彼らはひたすら歩き続けた。
途中で何度か危機に陥ったが、その度に、ゲームで培った思考力と、ユキの冷静な判断力で切り抜けた。
数日後、彼らは目的の場所に辿り着いた。
そこは、豊かな自然に囲まれた、小さな村だった。
空は青く、木々は緑に輝き、鳥のさえずりが響いている。
かつてアキラが夢で見た、あの風景そのものだった。
村には、多くの「ナチュラル」たちが暮らしていた。
彼らは、畑を耕し、動物を育て、手作りの道具で生活を営んでいた。
効率的ではない。無駄も多いだろう。
しかし、彼らの顔には、満ち足りた笑顔があった。
アキラとユキは、村で暮らし始めた。
アキラは、村の子供たちにアナログゲームを教えた。
子供たちは、サイコロの出目に一喜一憂し、駒の動きに歓声を上げた。
その無邪気な笑顔を見るたびに、アキラの心は温かくなった。
ユキは、村の女性たちに手芸を教えた。
色とりどりの糸で編み出される模様は、村の生活に彩りを与えた。
アキラは、初めて「生きている」という実感を得た。
最適化された世界では得られなかった、不完全な、しかし、輝かしい「人間」としての人生だった。
彼らは、時折、遠く離れたビル群の光を眺めた。
完璧な世界。しかし、そこには、もはや彼の居場所はなかった。
ふう、書き終わった……!
短編はやっぱりサクッと書けていいですね!
あの、「転生したらスライムだった件」ってご存知ですか?
あれも異世界転生なんですけど、現代知識で異世界を攻略していくのが面白いんですよね!
あと、やっぱステータス表示、あれは画期的でしたね!
今回の話も、ちょっとそういう要素を入れたつもりなんですけど、どうでしたかね?
僕もいつか、あんな大作を書きたいですね……