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英傑物語  作者: しろ組


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七二、あれ、どうなったかなぁ〜?

七二、あれ、どうなったかなぁ〜?


 パレサとエシェナとヤスタンは、ダーシモの北側から、ウスロ川の上流へ向かって、左岸の土手を歩いて居た。

「パレサ。そう言えば、あれ、どうなったんだろうなぁ〜?」と、ヤスタンが、口にした。

「さあな」と、パレサは、頭を振った。大会の結果が、どうなろうと、知った事ではないからだ。

「あの流れだと、優勝は、ホスゲ(あいつ)で、決まりじゃないのか?」と、ヤスタンが、淡々と言った。

「恐らくな」と、パレサも、相槌を打った。あれだけ、親の権威を見せ付けられては、参加者が、対戦を(こば)むと考えられるからだ。

「下手に、怪我(けが)なんかさせると、難癖付けられて、罪人に仕立て上げられるのが、結末(オチ)だからな」と、ヤスタンが、考えを述べた。

「確かに、あれだけ、見え見えの大嘘が()けるんだから、不正も、お手のものだろうよ!」と、パレサも、憎まれ口を叩いた。段々と、腹が立って来たからだ。

「この件が終わりましたら、殴りに行きませんか?」と、エシェナが、提案した。

 その瞬間、「…!」と、二人は、面食らった顔をした。

「わ、私、何か、おかしな事でも、申しましたか?」と、エシェナが、戸惑った。

 その直後、「そりゃあ、良いぜ!」と、ヤスタンが、賛同した。

「そ、そうだな。最初に、あいつが、絡んで来たんだからな」と、パレサも、頷いた。エシェナにも、ホスゲを殴る理由が有るからだ。

「私が怒っているのは、そこではなくて、御二人を、嘘で失格にした事に、ムカついて居るのですよ!」と、エシェナが、理由を述べた。

「へ、俺らの為に、怒ってくれて、ありがとうな」と、ヤスタンが、礼を述べた。

「こんな事だったら、絡んで来た時に、ぶん殴っておくべきだったな…」と、パレサは、溜め息を吐いた。同じ失格にされたとしても、一撃与えて、失格にされた方が、納得出来るからだ。

「同感だ」と、ヤスタンも、頷いた。そして、「あんな下衆(げす)野郎だと知ってたら、殴っておくべきだったな!」と、言葉を続けた。

「あいつの親が、仕切っている限り、俺は、あんな大会には出たくないな!」と、パレサは、断言した。不正を容認(ようにん)する大会など、こっちから願い下げだからだ。

「確かに、そうだな。俺も、“剣”じゃなく、“権”力で、間違った奴を擁護(ようご)するような奴の開く大会なんて、二度と御免だな」と、ヤスタンも、同調した。

「八つ当たりは、嫌なんだけど、場合によっては、デヘルの連中を叩き伸めす事になるかもな」と、パレサは、口にした。段々と、怒りが込み上げて来たからだ。

「そうだな。今の俺らにとっちゃあ、相手が誰だろうと、ホスゲの身代わりみたいなもんだからな」と、ヤスタンも、補足した。

「でも、あんまり突っ走るような事は、お勧め出来ませんわ」と、エシェナが、異を唱えた。そして、「今回は、戦う事が、主じゃないんです。デヘル軍を見たら、すぐに帰る事が、優先ですので…」と、言葉を続けた。

私情(しじょう)で動くと、ソドマ達に、迷惑が、掛かっちまうもんな」と、パレサは、聞き入れた。向こう見ずな行為で、ソドマ達に、幾度(いくど)となく、迷惑を掛けたからだ。

「確かに、ちょっと、頭に血が上っていたようだぜ。俺とパレサだったら、(とつ)ってたかもな」と、ヤスタンも、落ち着きを取り戻した。

「ああ」と、パレサも、肯定(こうてい)した。エシェナが居なければ、デヘルの軍隊へ、怒りに任せて、突っているのは、必至だろうからだ。

「かなり、()が、西へ傾いて来たから、場所を決めようぜ」と、ヤスタンが、提言した。

「そうだな。出来るだけ、見渡せそうな場所が、良いだろうな」と、パレサは、口にした。暗くなる前に、場所を確保したいからだ。

「ここいらだと、河原(かわら)の繁みしか、身を隠す場所は、無さそうだな」と、ヤスタンが、右手で、河原に在る背の高い草が、()い茂った繁みを指した。

「そうだな。道の真ん中に居るよりかは、マシかな」と、パレサも、同意した。自分達の体格でも、十分に、隠れられそうだからだ。

「ここからなら、町の外壁も、何とか見られますし、暗くなっても、土手との距離が、あまり離れてないので、位置としても、悪くないと思いますわ」と、エシェナも、見解を述べた。

「決まりだな」と、ヤスタンが、口元を綻ばせた。

「そうだな」と、パレサも、頷いた。特に、異論は無いからだ。

「とにかく、繁みの中へ入りましょう」と、エシェナが、促した。

 間も無く、三人は、土手を下り始めるのだった。

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