五〇、高みの見物
五〇、高みの見物
ダ・マーハとネデ・リムシーは、地下牢の入口へ戻った。
「まさか、門番を置いているとは、思いもしなかったな」と、ダ・マーハは、口にした。
「そうだな。まあ、あれは、魔王の配下じゃなく、何者かが造りし物だろうな」と、ネデ・リムシーが、見解を述べた。
「確かに、あれだけの魔力を有して居る者と言えば…」と、ダ・マーハは、言葉を詰まらせた。その者の名が、すぐに思い浮かんだからだ。
「世界魔術師組合創始者のド・ラーグだろうな」と、ネデ・リムシーが、淡々と名を挙げた。
「うむ」と、ダ・マーハも、すんなりと頷いた。他に、該当しないからだ。
「時間を保つ魔法を使用しているから、経年劣化による弱体化は、期待出来ないだろうな」と、ネデ・リムシーが、溜め息を吐いた。
「うむ。まあ、門番の相手は、ルーマ・ヤーマ共に任せようじゃないか」と、ダ・マーハは、含み笑いをした。うってつけの人材が、居るからだ。
「そうだな。まあ、あの三人をぶつけてみるのも、悪くはないな」と、ネデ・リムシーも、賛同した。
「どうせ、塔の留守番には、嫌気が差している頃だろうしな」と、ダ・マーハは、口元を綻ばせた。実力を見せたいという気持ちを感じ取っていたからだ。
「そうだな。そろそろ、あいつらにも頑張って貰わないとな」と、ネデ・リムシーも、同調した。そして、「倒せれば良し。まあ、倒せなくても構わんがな」と、言葉を続けた。
「リムシーよ。このまま、予定通りに事が運ぶと、カドゥに急かされる事になりかねんぞ」と、ダ・マーハは、渋い表情をした。このまま、一方的に、進軍が進めば、注文が増えそうだからだ。
「確かに、言えてるな」と、ネデ・リムシーも、頷いた。そして、「確か、南へ進軍するとか、申してたな」と、口にした。
「うむ。アフォーリーの奴が、意気込んで居たからな」と、ダ・マーハも、憎々しげに言った。そして、「あの面構えが気に入らんから、少々、進軍を遅らせてやろうかのう」と、含み笑いをした。邪魔をしてやりたくなったからだ。
「そうだな。あの者の思い通りに、物事が運ぶのは、頂けんな」と、ネデ・リムシーも、同意した。
「ウスロ川を渡れなくするのは、どうだろうか?」と、ダ・マーハは、提案した。橋の一つでも、嫌がらせ程度に無くすのも、アリだからだ。
「そうだな。あの者に破られた“白熱魔法”を久々に使ってみようと思うがな」と、ネデ・リムシーが、考えを口にした。
「まだ、あの時の事を引き摺って居たのか…。わしも、時折、ブヒヒ族に投げ付けられた時の疵が、疼時が有るのだよ」と、ダ・マーハは、右手で、傷の部分を擦った。傷は、完治しているのだが、偶に、疼き出す時が有るからだ。
「お前の方こそ、引き摺っているではないか…」と、ネデ・リムシーも、指摘した。
「ははは。そうだな」と、ダ・マーハは、苦笑した。その通りだからだ。
「取り敢えず、先回りをしようじゃないか」と、ネデ・リムシーが、提言した。
「そうじゃな。わしらの仕業じゃとバレんようにのう」と、ダ・マーハも、頷いた。こっそりやってこそ、意味が有るからだ。
間も無く、二人は、ウスロ川方面へ、飛び去るのだった。




