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英傑物語  作者: しろ組


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四五、異変水位

四五、異変水位


 ヤッスル達は、ゴルト達と分かれてから、順調に、川を下って居た。

「ゴルト達、大丈夫だろうか?」と、バートンが、冴えない顔で、口にした。

「ズニ様が、一緒だから、大丈夫だろう」と、ブーヤンが、淡々と言った。

「いやぁ〜。いざという時、役に立たないからなぁ〜」と、バートンが、表情を曇らせた。

「ああ見えても、色々と物を知っているからな。偶々(たまたま)活用する場が無かっただけさ」と、ブーヤンが、弁護(べんご)した。

「活用する場ねぇ」と、バートンか、(いぶか)しがった。

「ブーヤン、仕方が無いさ。どうせ、ズニ様の駄目な部分しか見て居ないから、何を言っても、無駄だろうぜ」と、ヤッスルは、口を挟んだ。情けない部分んばかり見せられれば、不安になるものだからだ。そして、「ダーシモで落ち合えば、少しは、見直す事になるんじゃないのか?」と、あっけらかんと言った。三人と合流すれば、見方も変わると思ったからだ。

「そうだな」と、ブーヤンも、同調した。そして、「気休めかも知れないが、ズニ様の事を、もう少し、信頼してくれ」と、補足した。

「まあ、そう願いたいよ」と、バートンも、頷いた。そして、「ゴルト達は、いったい、何処へ流されるんだ?」と、小首を傾いだ。

方角(ほうがく)からして、ウガール国の方だろうな」と、ヤッスルは、見解を述べた。支流へ進入した場合、ウガール国の密林地帯へ直行だからだ。

「あんな未開の地へ入ったら、ダーシモへは、来られないかも知れないぜ!」と、バートンが、語気を荒らげた。

「かも知れんな」と、ヤッスルは、しれっと言った。その可能性も、有り()るからだ。

「まあ、私達は、ダーシモで、待とうじゃないか。無事に会えると(いの)って」と、ブーヤンが、宥めた。

「くっ…。そうだな…」と、バートンが、渋々、聞き入れた。

 突然、ヨーカン号が、上流へ押し戻された。

「満潮には、まだ早いんだがな」と、ヤッスルは、眉を顰めた。自分の計算では、まだまだ、下流へ行ける筈だからだ。

「ビ・チャブリンの仕業(しわざ)か?」と、バートンも、身構えた。

「いや。水位が、下がっているぞ!」と、ブーヤンが、指摘した。

「満潮とかじゃなく、上流で、何かが、起こったのかも知れんな」と、ヤッスルは、顔を(しか)めた。このような現象は、初めてだからだ。

「今の私達では、確かめる(すべ)も無いだろうしな…」と、ブーヤンが、淡々と言った。

「そうだな。このまま干上(ひあ)がったら、上陸しよう。どうなるか、判らんからな」と、ヤッスルは、提言した。頼れるのは、自分の足だけだからだ。

「その方が、確実だな」と、バートンも、賛同した。

 間も無く、ヨーカン号の底部が、川底に着いた。

「どうやら、ここからは、降りて、渡らないと行けなさそうだな」と、ヤッスルは、眉根を寄せた。こうも、早く降りるのは、誤算(ごさん)だからだ。

「ヤッスル、どっちの岸へ渡るんだ?」と、ブーヤンが、問うた。

「そうだなぁ〜」と、ヤッスルは、左右を見回した。どちらも、同じ距離なので、返答に詰まった。

「どっちも、似たようなもんじゃないのか?」と、バートンが、意見を述べた。

「かも知れんが、おいは、ヨーカン号でしか、ダーシモへは、行った事が無いんだよ」と、ヤッスルは、苦笑いを浮かべた。下流域の魔物の事を、ほとんど知らないからだ。

「ブーヤンは?」と、バートンが、尋ねた。

「私も、知らん!」と、ブーヤンも、きっぱりと言った。

「う〜ん。陸路も、同じようなもんか…」と、バートンが、ぼやいた。

「そうかもな」と、ヤッスルは、相槌を打った。これまでは、ヨーカン号に乗ってさえ居れば、勝手に辿り着けて居たのだが、自らの足で、ダーシモまでは、一度も、行った事が無いからだ。

「まあ、ビ・チャブリンみたいな奴なら、何とかなるが、初見(しょけん)の魔物だと、どうだか…」と、ブーヤンが、不安を述べた。

「とにかく、渡るとしよう」と、ヤッスルが、促した。どんな魔物に襲われるか、知れたものではないからだ。

「急ごうぜ!」と、バートンも、呼応した。

「ん? ちょっと待て?」と、ブーヤンが、告げた。そして、「少しずつ、水位が、戻ってないか?」と、指摘した。

「そうかぁ?」と、ヤッスルは、訝しがった。大して、変化は見られないからだ。

「ちょっと、様子を見てからにしようぜ」と、バートンが、提言した。

「分かった。ここは、ブーヤンの()を信じよう」と、ヤッスルも、同意した。ブーヤンの見立て通りなら、川下りを再開出来る可能性も、有り得るからだ。

 しばらくして、水位が、半分まで回復した。

「これぐらいなら、何とか、川下りは出来そうだな。三人の分だけ、軽くなっているからな」と、ヤッスルは、意気揚々(ようよう)と言った。元のまんまだと、浮力(ふりょく)よりも、重みの方が、勝るからだ。

「ゴルト達と離れ(ばな)れになったお陰で、川下りが出来るなんて、皮肉だな」と、バートンが、渋い顔をした。

「確かにな。でも、結果としては、動けるようになったんだから、素直(すなお)に喜んでおくべきだろう」と、ブーヤンは、淡々と言った。

「俺は、そんなに、冷静にはなれないぜ!」と、バートンが、語気を荒らげた。

「そうかもな」と、ヤッスルは、理解を示した。昨夜の自分が、ブーヤンを心配するのと同じ気持ちだからだ。

「私は、お前のように、感情的にはなれない! 今は、現状を直視して、自分達のやるべき事を優先すべきだと思うがな」と、ブーヤンが、考えを述べた。

「そうだな。あんたの言う通り、あいつらを心配して、自分らが()られちゃあ、意味が無いもんな。何か出来る訳でもないしな」と、バートンも、冴えない表情で、割り切った。

「ヨーカン号も、何とか進み始めたし、口喧嘩(げんか)も、それくらいにしとこうぜ」と、ヤッスルは、あっけらかんと言った。言い争ったところで、何の解決にもならないからだ。

「ところで、ヤッスル。この水位の異変は、崖崩(がけくず)れみたいなものだろうか?」と、ブーヤンが、尋ねた。

「どうだろうなあ。崖崩れとなると、かなり上流の方になる筈だし、川下りをする前に、水位が下がっているんじゃないのか?」と、ヤッスルは、眉間に皺を寄せた。そのような予兆は、見受けられなかったからだ。

「岩人形が、川を()き止めて居るとか…?」と、バートンが、口を挟んだ。

「堰き止めたところで、何か意味が有るのかしら?」と、ブーヤンが、小首を傾いだ。

「堰き止めるにしても、かなりの数は()るだろうな。でも、急激に、水位が下がるのだろうか?」と、ヤッスルも、訝しがった。短時間で、一時的ではあるが、川底が視認出来るくらいの事が出来る事を、思い付かないからだ。

「まあ、上流の方で、何かが起きたのは、確かだな」と、ブーヤンが、口にした。

「確かに」と、ヤッスルとバートンは、頷くのだった。

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