二六、ルーマ・ヤーマの不満
二六、ルーマ・ヤーマの不満
ルーマ・ヤーマは、ターガの塔の最上階に在る制御室へ、転移した。
「ルーマ・ヤーマ、賊を取り逃がしたみたいね」と、眼鏡を掛けたお下げ髪の年増の女剣士が、声を掛けて来た。
「ああ」と、ルーマ・ヤーマは、生返事をした。今は、触れられたくない話題だからだ。
「ザ・ヤーキよ。そんなに、ルーマ・ヤーマを苛めるものじゃない」と、縮れ頭の司教が、口を挟んだ。
「千の里球で、観て居たんだけど、何だか、もどかしくってさ」と、ザ・ヤーキが、感想を述べた。
「三人掛かりで逃げられるのだから、賊の方が、上手だったって事だ」と、縮れ頭の司教が、穏やかに語った。
「そうだね。ネデ・リムシーとダ・マーハも、一緒だからねぇ」と、ザ・ヤーキも、頷いた。そして、「まあ、ルーマ・ヤーマに、“運”が残っているって事ね」と、口元を綻ばせた。
「ふん。それは、嫌味なのか?」と、ルーマ・ヤーマは、憮然とした顔で、問うた。結果が、全てだからだ。
「別に、嫌味とかじゃなく、終わっちゃいないって事かねぇ」と、ザ・ヤーキが、考えを口にした。
「どうだかな…」と、ルーマ・ヤーマは、素っ気無く言った。良いようには、受け取れないからだ。
「ザ・ヤーキが、言いたい事は、挽回の機会が有るのかも知れんという事だ」と、縮れ頭の司教が、取りなした。
「どうかな…」と、ルーマ・ヤーマは、溜め息を吐いた。謀反の失敗以来、他人に見下されているような気しかしないからだ。
「まさか、謀反の失敗を引き摺って居るんじゃないでしょうね?」と、ザ・ヤーキが、尋ねた。そして、「あたしは、後悔なんてして居ないわよ! あの小僧、次に会ったら、殺ってやろうと思って居るんだから!」と、語気を荒らげた。
「確かに。今は、自由の身だから、挽回の機会も、いつかは、有るだろうな。今度は、あの二人の力無しで、魔術師を殺ってやろうかな…」と、ルーマ・ヤーマは、気を取り直した。気の持ちようだからだ。
「その意気だ」と、縮れ頭の司教が、目を細めた。
「まあ、今は、与えられた事をやるしかないだろうな」と、ルーマ・ヤーマは、冴えない表情で、溜め息を吐いた。牢から出して貰った分の働きは、しなければならないからだ。
「確かに」と、ザ・ヤーキと縮れ頭の司教も、頷くのだった。




