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英傑物語  作者: しろ組


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二三、エバゴン出現

二三、エバゴン出現


 ゴルトとバートンは、先刻の林道のヤッスルとモヤグモが、戦った場所へ戻った。

「ここなら、気兼ね無く振るえそうだな」と、ゴルトは、口にした。練習を他人に見られるのは、少々、恥ずかしいからだ。

「お前、結構、他人の目を気にする性格(たち)だからな」と、バートンが、冷やかした。そして、「俺は、周りを見回って来らぁ」と、告げた。

 その直後、森側の繁みから、全身を茶色い毛に覆われた三匹の猿人(えんじん)が、現れた。

「ウキキ族じゃなさそうだな」と、ゴルトは、身構えた。出方(でかた)次第では、戦闘も有り得るからだ。

「ズニ様が、言っていた夜猿の類だろうか?」と、バートンも、口にした。

「夜猿と言っても、明るい時間だぞ!」と、ゴルトは、指摘した。刻々と明るくなっているからだ。

「そうだな。向こうの出方次第って事になるな」と、バートンも、同意した。

 少しして、「おい。あんたらは、何処かから逃げて来たウキキ族なのか?」と、ゴルトは、問い掛けた。やむを得ず、服を着ていないとも考えられるからだ。

 三匹が、顔を見合わせながら、話し始めた。

「奴ら、話が出来そうだぜ」と、バートンが、見解を述べた。

「確かにな」と、ゴルトも、同調した。鼎談(ていだん)をするという事は、会話が出来るかも知れないからだ。

「さあて、どう出るかだな」と、バートンが、見据えた。

「そうだな」と、ゴルトも、相槌を打った。出来れば、話し合いで、解決したいからだ。

 しばらくして、三匹が、話し合いを止めた。

 間も無く、真ん中の小柄な猿人が、近付いて来た。そして、「私達は、エ・グリン侯爵(こうしゃく)の従者ですが、賊に、身包(みぐる)みを剥がされて、森を彷徨って居たのですよ」と、理由を述べた。

「デヘルを乗っ取るのに失敗して、追放された貴族だったな」と、バートンが、間髪容れずに、口にした。

「バートン…」と、ゴルトは、苦笑した。あからさまに、はっきりと言い過ぎるからだ。

「これは、手厳しい…」と、小柄な猿人が、渋い顔をした。

「で、何の用だ?」と、バートンが、問うた。

「エ・グリン侯爵と共に、カドゥの野望を打ち砕いて貰いたいと申して()るのだよ」と、小柄な猿人が、用件を語った。

「で、お仲間になれって言うのか?」と、バートンが、喧嘩腰に尋ねた。

「只とは言わん。それなりの待遇(たいぐう)は、用意させて貰う」と、小柄な猿人が、返答した。

「初対面の相手に、勧誘(かんゆう)とは、少々、エ・グリン侯爵って人も、気前が良いんじゃないのか?」と、バートンが、訝しがった。

「確かに、旨過ぎる話だな」と、ゴルトも、頷いた。もっともらしく聞こえるが、裏の在るような気がするからだ。

「そうですか。一生に一度しかない機会なのですよ」と、小柄な猿人が、勿体振った。そして、「我々の話に乗らなかった事を()やむ事になりますよ」と、言葉を続けた。

「じゃあ、後悔させて貰おうか?」と、バートンが、半笑いで、凄んだ。

「んだと! 下手(したて)に出てりゃあ、つけ上がりやがってよ!」と、小柄な猿人の左隣の厳つい顔の猿人が、怒鳴った。

「そうじゃ! そうじゃ!」と、小柄猿人の右側の丸みを帯びた顔立ちの猿人も、同調した。

「賊に襲われたってのも、嘘だろ?」と、バートンが、毅然とした態度で、問うた。

「む…!」と、小柄な猿人が、両目を見開いて、(もく)した。

「わしらを見た以上は、消えて貰うしかないな」と、厳つい顔の猿人が、舌舐めずりをした。

「エバゴン族に、大人しく忠誠(ちゅうせい)(ちか)っておれば、長く生きられたものをのう」と、丸みを帯びた顔立ちの猿人も、本性を露わにした。

「ズニを誘拐しようとして来てみれば、住処(すみか)に居ないし、こんな子供(ガキ)共には、逆らわれるわ! 予定が、狂ってばかりだぜ!」と、小柄な猿人が、癇癪(かんしゃく)を起こした。

「ズニ様を誘拐だって!」と、ゴルトは、素っ頓狂な声を発した。そして、「尚更(なおさら)、聞き捨てならないな!」と、剣を構えながら、睨みを利かせた。このような胡散臭い連中に、ズニを会わせる訳にはいかないからだ。

「ほう。その口振りだと、居場所を知っているようだな」と、丸みを帯びた顔立ちの猿人が、口元を綻ばせた。

「だったら、何だ!」と、ゴルトは、語気を荒らげた。目的が、露呈(ろてい)した以上、この先を通す訳にはいかないからだ。

「だから、問答無用で殺って居たら、良かったんだよ!」と、厳つい顔の猿人が、口にした。

「そうじゃ、そうじゃ」と、丸みを帯びた顔立ちの猿人も、相槌を打った。

今更(いまさら)、そんな事を言われても…」と、小柄な猿人が、困惑した。

「おいおい。仲間割れなら、他所(よそ)でやってくれよ!」と、バートンが、つっけんどんに、口を挟んだ。

「う、うるさい! エ・グリン三従者を敵に回した事を、悔いやがれ!」と、厳つい顔の猿人が、(わめ)いた。

「ズニに知られると、元も子も無いので、ここで、消させて貰いますよ」と、小柄な猿人も、落ち着き払って、告げた。

「お前ら。エバゴン族は、そのような(なまく)ら剣では、斬れんぞ」と、丸みを帯びた顔立ちの猿人が、したり顔で、忠告した。

「斬れるかどうか、試してみるか?」と、ゴルトも、すかさず、問い掛けた。試し切りには、都合が良いからだ。

()めておけ。斬り付けたら、その刀身が、折れてしまうぞ」と、厳つい顔の猿人が、自信満々で、言った。

「勝手に、決め付けてんじゃねぇぞ! 斬られたくないから、ハッタリをかまして居るんだろうがよ!」と、バートンが、指摘した。

「物分かりが悪いですね。長生きして居れば、やらずとも、無駄だと想像がつくでしょうが…」と、小柄な猿人が、溜め息を吐いた。

「かも知れないけど。俺ら、あんたらほど長生きして居ないのでね。どうせ殺られるんだったら、納得したいけどな」と、ゴルトは、口にした。この目で、結果を見届けてから、殺られたいからだ。

「よぉし。わしが、納得させちゃる! どうせ、結果は同じ事じゃろうが、最後の望みくらいは、聞いちゃるもんよ!」と、厳つい猿人が、応じた。

「それも、良いかも知れんのう」と、丸みを帯びた顔立ちの猿人も、賛同した。

「仕方が無いですねぇ。まあ、あなたが、一番、肌が、頑丈(がんじょう)ですからね」と、小柄の猿人も、冴えない表情で、納得した。

「ゴルト、思いっ切り行け!」と、バートンが、(けしか)けた。

「ああ!」と、ゴルトも、力強く頷いた。無論、そのつもりだからだ。

「さあ、掛かって来い!」と、厳つい猿人が、半笑いで、胸を張った。

「じゃあ、遠慮(えんりょ)無く!」と、ゴルトは、大上段に構えながら、斬り掛かった。一匹でも、減らしておくべきだからだ。手前から、振り下ろした。

 寸前の所で、「危ない!」と、小柄な猿人が、厳つい猿人を突き飛ばした。

 その直後、「うわっ!」と、厳つい顔の猿人が、よろけた。

 少し後れて、斬撃が、空を切った。

「アリータさん。急に突き飛ばすなんて、(ひど)いじゃないですかぁ〜」と、厳つい顔の猿人が、口を尖らせた。

「あのまま、立って居ましたら、確実に、真っ二つになって居ましたよ」と、アリータが、右手で、指しながら、言った。

 厳つい顔の猿人も、見やるなり、「確かに、あれだと、わしも、やばかったかもな…」と、厳つい顔の猿人も、納得した。

「ちっ!」と、ゴルトは、舌打ちした。(たばか)られた気分だからだ。

「おいおい。斬らせてくれるんじゃなかったのかよ!」と、バートンが、文句を付けた。

「気が変わったんだよ」と、アリータが、言葉を濁した。

「物は、言いようだな! まあ、エバゴン族は、昔から信用ならないって話だからな」と、バートンが、吐き捨てるように、口にした。

「じゃかわしい! わしは、()ける気など、毛頭無かったんじゃ!」と、厳つい顔の猿人も、怒鳴った。

「どうだかな」と、バートンが、冷ややかに、応じた。

「確かに…」と、ゴルトも、同調した。間際(まぎわ)になって、態度を変える者など、信じられないからだ。そして、「エ・グリン侯爵とか言う人も、人材が、不足しているのかな?」と、見解を述べた。自分だったら、お断りだからだ。

「うぬぬ…。言わせておけば…」と、丸みを帯びた顔立ちの猿人が、歯噛みした。

「アリータさん。このままじゃあ、わしらが、嘘をついた事になる!」と、厳つい顔の猿人が、喚いた。

「あの剣は、やばい気配がしますので、受けては駄目です!」と、アリータが、理由を述べた。

「アリータさんが、そう申すのでしたら、そうでしょうねぇ」と、厳つい顔の猿人が、すんなりと聞き入れた。

「一先ず、ここは、退散だな」と、丸みを帯びた顔立ちの猿人が、提言した。

「何だ? 逃げるのか?」と、バートンが、挑発した。

「小僧! 今回は、引き()げてやる! 次は、覚悟しておけよ!」と、厳つい猿人が、凄んだ。

「次は、こうはいかんぞ!」と、丸みを帯びた顔立ちの猿人も、強がった。

「はいはい」と、バートンが、素っ気無く返事をした。

 その間に、三匹が、後退った。そして、十数歩離れた所で反転するなり、繁みの中へ消えた。

「あのアリータって奴、要注意かもな」と、バートンが、口にした。

「そうだな」と、ゴルトも、頷いた。危機回避に、特化している感じだからだ。

「まあ、これだけ、切っ先が、地面に入っているとな…」と、バートンが、淡々と言った。

「確かに」と、ゴルトも、刀身を見下ろした。地面を深く切り裂いているからだ。そして、「もうちょっと、速く振れれば…」と、ぼやいた。確実に、一匹は、仕留められて居たかも知れないからだ。

「あのラット族、とんでもない奴だぜ」と、バートンが、感心した。

「そうだな。お陰で、命拾いしたよ」と、ゴルトも、同調した。

 間も無く、二人は、エバゴン達の事を伝えに、戻るのだった。

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