一二〇、多勢に無勢
一二〇、多勢に無勢
デヘゴンは、集落の入口で、豚龍の一団を蹴散らして居た。しばらくして、残るは、隊長格の男の乗る豚龍と副長の男の跨る豚龍の二騎となった。そして、「ンゴーン!!」と、嘶いた。この者達を通してはいけないと直感したからだ。
「イオッサ隊長。このヌルヌル、中々、手強いですよ!」と、副長の男が、苦々しく言った。
「そうだな。俺が、今まで戦った奴の中で、ブタマンダー様の次くらいは強いかもな」と、イオッサが、頷いた。そして、「このヌルヌルが、通したがらないという事は、奥に、何かしらの重要な物が在るのだろうな」と、憶測を述べた。
「しかし、他の者達は、全員、滝壺へ落とされてしまったから、私とイオッサ隊長だけですよ」と、副長が、現状をぼやいた。
「そうか。だが、こいつを倒せば、残りは、弱者なのかも知れないな」と、イオッサが、口元を綻ばせた。
「そうでしょうかねぇ〜」と、副長が、訝しがった。
「だったら、何故、共に戦わないんだ? ヌルヌルと共闘して、俺達を全滅させられても、不思議じゃないんだからな」と、イオッサが、指摘した。
「確かに」と、副長も、理解を示した。
「しかし、このヌルヌルを殺めるのも、惜しい気がするが…」と、イオッサが、眉根を寄せた。
「隊長。豚龍乗りが、他の生き物の背に乗るのは、ブタマンダー様への裏切りになりますぞ!」と、副長が、苦言を呈した。
「そうだな。ブタマンダー様を亡くしても、忠誠心だけは残しておかんとな」と、イオッサが、苦笑した。そして、「あやつのヌルヌルで、我々の攻撃が通用せぬ。それに、火炎攻撃も、今一つだしな」と、ぼやいた。
「ですね」と、副長も、相槌を打った。
そこへ、何者かが、転移して来た。
その瞬間、「茶司教!」と、二人が、同時に、声を発した。
「くっ…。思いのほか、傷は深いようだな…」と、茶司教が、ズタボロの左腕を見やりながら、歯嚙みした。
「隊長。あいつ、気が付いて居るんすかねぇ」と、副長が、耳打ちした。
「さあな」と、イオッサが、生返事をした。そして、「危ない!」と、叫んだ。
デヘゴンは、茶司教へ襲い掛かろうとして居た。この集落の一番の脅威なのは、突然現れた“茶司教"なのだからだ。
「私は、虫の居所が悪い!」と、茶司教が、無事な方の腕を差し向けた。そして、「雷撃銃!」と、唱えた。その瞬間、青白い閃光が放たれた。
その直後、「ンゴーン!!」と、デヘゴンは、直撃を食らうなり、もんどり打って倒れた。そして、集落の板塀を扉ごと破壊した。だが、痺れて、動く事が出来なかった。
「茶司教、何をやったんだ!?」と、イオッサが、驚嘆した。
「俺達が手こずっているやつを、簡単に…」と、副長も、言葉を詰まらせた。
「ああ! お前達、全滅して居なかったのか!」と、茶司教が、素っ頓狂な声を発した。
「まあな」と、イオッサが、歯切れの悪い返事をした。
「あんたが来なければ、そうなって居たよ」と、副長も、補足した。
「そうか。ならば、集落の者を追ってくれ。ひょっとすると、ブタマンダー様が、復活出来る“宝"が在るかも知れんからな」と、茶司教が、仄めかした。
「分かった。その傷では、動けそうもないだろうしな」と、イオッサが、承知した。
間も無く、二人が、壊れた箇所から、集落ないへ侵入した。
デヘゴンは、動けないまま、二人が、集落の奥へ消えるのを見送るだけだった。




