表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英傑物語  作者: しろ組


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

119/125

一一八、ヤスノフの宝の地図

一一八、ヤスノフの宝の地図


 ヤスノフとヤスンクルは、赤銅色の騎士達をキニナル木の幹に縛り付けた後、宿舎へ入った。

「早速、仕掛けて来おったのう」と、バニ族の老婆が、開口一番に、淡々と言った。

「ああ。奴ら、完全に、殺りに来て居たぜ」と、ヤスノフは、回答した。亡き者にする気満々だからだ。そして、「ヤスンクルが遅かったら、間違い無く、殺られて居たぜ」と、見解を述べた。

「じゃあ、また、追ってを差し向けて来るんじゃないんですか?」と、アマガーが、身震いをした。

「そうじゃのう。戻って来んとなると、次の手を考えて居るやも知れんな」と、バニ族の老婆も、頷いた。

「へっ。どうせ、本格的に動くとなると、朝になってからだろうぜ」と、ヤスノフは、予測を述べた。決着を付けるのなら、明るくなってからの方が、確実だからだ。

「わしも、そうするかのう。ここへ来た二人が戻って来んかったら、無理はせんよ」と、バニ族の老婆も、同調した。「明日の朝になったら、僕らは、犯罪者ですか…」と、アマガーが、嘆いた。

「アマガー。嘘は、いずれバレるもんじゃ。わしらは、悪い事は、やって居らんのじゃからな!」と、バニ族の老婆が、力強く言った。

「そうですよ。答え合わせをすれば、副学長の嘘なんて、すぐに露呈(ろてい)しますわ」と、虎耳の娘も、口添えした。

「学長、汀雅(ティガ)君。ありがとう」と、アマガーが、感謝した。

「しかし、問題は、キーちゃんの回復具合ですね」と、汀雅が、冴えない顔をした。

「そうじゃな。また、一人増えるとなると、長距離は、飛べんじゃろうな」と、学長も、表情を曇らせた。

「いや、かなり負担を減らせるぜ」と、ヤスノフは、口元を綻ばせた。そして、「連中の乗って来た“保毛天馬”を拝借するのさ」と、補足した。保毛天馬で、負担を軽減させようと考えているからだ。

「保毛天馬は、“女”を嫌う動物じゃからな。わしらは、乗れんぞ」と、学長が、顔を顰めた。

「あいつらは、(オス)同士で交配をする不思議な動物だからな。だから、女性を嫌うのかも知れんな」と、ヤスノフは、語った。交配を見た事は無いが、そういう風に聞いているからだ。

烈頭角馬(レズコーン)も、(メス)同士で、交配するらしいのう。奴らは、“男”を寄せ付けんと聞くがのう」と、学長も、蘊蓄(うんちく)を述べた。

「オジキ。移動手段は確保したが、何処へ向かうつもりだ?」と、ヤスンクルが、尋ねた。

「そうだな。宝探しでもしようかな?」と、ヤスノフは、あっけらかんと言った。やりたい事に、移行しても良い頃合いだからだ。

「オジキ。まだ、誇大妄想読本(ラノベ)みたいな事を抜かしているのかよっ!」と、ヤスンクルが、呆れ顔をした。

「誇大妄想読本と一緒にするなっ!」と、ヤスノフは、怒鳴った。宝探しは、人生を懸けた浪漫(ロマン)のようなものだからだ。

「ほう。興味深いのう」と、学長が、食い付いた。

「実は、わしは、宝の地図を所持して居るんだよ」と、ヤスノフは、したり顔で、仄めかした。今回は、本物だと思っているからだ。

「オジキ。もう、夢を見る年齢(とし)じゃないんだぜ。真剣に、身の振り方を考えろよな」と、ヤスンクルが、溜め息を吐いた。

「わしは、いつだって、真剣だ。この宝の地図は、帝大のハゲ・キム教授から、直々に受け取ったんだよ」と、ヤスノフは、右手で、懐から、“タケントの筒”を取り出した。

「ハゲ・キム教授め。まさか、外部の者に託しておるとは、思わんかったぞ」と、学長が、感心した。

「オサーク対策の一環でしょうかねぇ」と、アマガーが、口を挟んだ。

「それも有るじゃろうが、わしの留守を護る為に、敢えて、残ったのかも知れんな」と、学長が、推測を述べた。

「ハゲ・キム教授は、目立ちませんけど、副学長への対抗(カウンター)には、持って来いの方ですものね」と、汀雅が、補足した。

「そうじゃな。わしが居なかったら、あやつの方が、“学長”になってても、おかしくないからのう」と、学長も、頷いた。

「オジキ。そんな偉い人と知り合いだったのか?」と、ヤスンクルが、信じられない面持ちで、問うた。

「わしも、これを受け取るまでは、知らんかったよ。何回か、貧民窟(スラム)の安酒場で、顔を合わせるくらいだったからな」と、ヤスノフは、印象を語った。只の飲んだくれだと思っていたからだ。

「確かに、あやつは、大酒飲みじゃったな」と、学長も、頷いた。

「でも、只の飲み仲間に、“タケントの筒”を渡しますかねぇ?」と、アマガーが、小首を傾いだ。

「確かに」と、ヤスンクルも、相槌を打った。

「酒代を立て替えてやった時に、渡されたんだよ」と、ヤスノフは、眉根を寄せながら、理由を述べた。そして、「後日(ごじつ)、その金を貰いに行ったら、本人は覚えてないって、返して貰えんかったかな。なので、一応、これは、預かっているんだよ」と、補足した。タケントの筒は、大事な書類を保護するのに、最適な物だからだ。

「じゃあ、オジキが、勝手に、宝の地図みたいに言っているだけじゃねぇかっ!」と、ヤスンクルが、指摘した。

「いや。(あなが)ち、宝の地図かも知れんぞ」と、学長が、口を挟んだ。

「根拠は?」と、ヤスンクルが、怪訝な顔で、問うた。

「ハゲ・キムが研究しているのは、“ホー大陸”なんじゃ」と、学長が、真顔で、回答した。

「あの“神魔大戦”終結と同時に、海へ沈んだという?」と、ヤスンクルが、訝しがった。そして、「只の伝説でしょう…」と、溜め息を吐いた。

「まあ、一般的には、そうなっておるがな」と、学長が、淡々と言った。そして、「筒の中味は、ホー大陸が実在して居た“五〇〇年前”の地図ではなかったかのう」と、推測を述べた。

「学長権限で、筒の中を確認しては、どうですか?」と、アマガーが、進言した。

「そうじゃな。わしの推理が正しければ、とんでもない物を持っている事になるな」と、学長も、頷いた。

「オジキ、しょうもない物かも知れないぜ」と、ヤスンクルが、冴えない表情で、異を唱えた。

「そうかもな。でも、宝探しってのは、それなりに楽しいものなんだぜ。最初(はな)から決め付けてちゃあ、何も出来ないからな」と、ヤスノフは、タケントの筒の封を除けるなり、色()せた紙を取り出した。そして、そっと円卓(テーブル)の上へ広げた。その瞬間、大まかに描かれた地図を目の当たりにした。

「どうやら、現在の地図よりも、二つ大陸が多いのう」と、学長が、即座に言った。

「ホー大陸とタマランティス大陸が、描かれているという事ですな」と、ヤスノフは、したり顔で、補足した。

「如何にも」と、学長が、即答した。

「でも、それが、本物とは限らねぇぞ」と、ヤスンクルが、否定した。

「いや、本物かどうかは別じゃ。複製(コピー)品かも知れん。わしも、原本(オリジナル)は、見た事が無いから、判別は付かんな」と、学長も、眉根を寄せた。

「やはり、“世界魔術師組合”へ、向かうべきでしょうね」と、アマガーが、口にした。

「そうじゃな。それに、その地図ともう一枚、“組”になっている物が在りそうな気がするのう」と、学長が、示唆した。

「確かに、五〇〇年前の地図一枚だけじゃあ、何の事だか、さっぱりだもんな」と、ヤスノフも、頷いた。現在の地形には、役に立たないからだ。

「ハゲ・キム本人に聞くのが、手っ取り早いけど、戻ったら、オサークの(でっ)ち上げで、牢獄行きだからねぇ」と、学長が、ぼやいた。

「ですね」と、アマガーも、同調した。

「でも、キーちゃんの体の事を考えますと、休み休みで、向かわなければならないでしょうね」と、汀雅が、口を挟んだ。

「そうだな。無理をさせるのは、わしも反対だな」と、ヤスノフも、同調した。絶滅危惧種に近い古代(レトロ)龍種を酷使させる訳にもいかないからだ。そして、「ライランス大陸の沿岸(えんがん)を経由して、移動するのは、どうだろうか?」と、提案した。黄龍を休ませられる場所くらいは、在るだろうからだ。

「そうじゃな。多少の時間を掛けてでも、黄龍を(いたわ)らなければならんな」と、学長も、同意した。

「でも、ウェドネスさん抜きで、話を進めていますから、我々の案を聞き入れて頂けるか、どうか…」と、アマガーが、眉根を寄せた。

「そうだな。彼女が、黄龍の事を、一番、心配していたからな。後は、彼女に判断を委ねるしかないだろう」と、ヤスノフは、淡々と口にした。黄龍の具合が判るのは、バニ族の娘だけだからだ。

「お主だけじゃ不安だから、わしも同行しよう」と、学長が、申し出た。

「そうですね。わしは、口下手だから、旨く伝えられる自信が有りませんので…」と、ヤスノフは、苦笑した。雑な物言いしか出来ないからだ。

「オジキ。俺らは、何処で寝りゃあ良いんだ?」と、ヤスンクルが、唐突に尋ねた。

「床にでも寝ろや!」と、ヤスノフは、ぶっきらぼうに返答した。そして、「ご婦人方は、長椅子か、寝台で、寝て下せぇ」と、告げた。婦女子を、床で休ませる訳にもいかないからだ。

「ほんじゃあ、遠慮無く」と、学長が、奥の寝台へ、嬉々として、歩を進めた。

「私も、長椅子を…」と、汀雅も、長椅子へ腰を下ろした。

「わしは、ちょっくら、刺客共の様子を見に行って来るよ」と、ヤスノフは、外へ出て行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ