第53話 エンチャントマジック~さーてルナ姉ちゃんはどんな魔法を覚えるのかな~
「付与魔術ですか?」
「正式には付与魔術って言うんだけどね、長くて面倒くさいから私はエンチャントって呼んでる魔術の技法だよ」
「なるほど、それってどんな魔術なんですか?」
「ルナちゃんは元の世界でゲームとかしたことある?」
「ないことはないですけど、あまりしたことはありませんね、それとエンチャントに何か関係があるんですか?」
「いや、したことがあるのなら説明が早かったんだけど――その様子だと心当たりはなさそうだね」
私がしたことのあるゲームと言えば主に複数人で行うパーティーゲームがメインで、剣と魔法の出て来るRPGゲームは片手で数えられる程度しかしたことがない。しかもパーティーゲームの方も主にプレイした相手は一姫ばかりであったが……兎に角サジさんの言う通り私には付与魔術についての知識は何もないのだ。
「ご期待に添えられず申し訳ありません」
「いや、ルナちゃんは別に悪くないよ、アタシが説明を端折ろうとしたのが悪い。それでエンチャントについてだけど簡単に言えば自分以外の物質、ルナちゃんの場合はイーター君だね。そのイーター君に様々な効果を持った魔法を付与する技法。それがエンチャントなんだよ」
「なるほどつまり、イーターの奴に私が強化効果をかけるということですね」
「その通りだけど、ルナちゃん強化効果はわかってるんだね……」
「プレイしてきたゲームの違いというやつでしょうね」
「いまいち納得できないけどわかってくれたのならそれでいいや。それでルナちゃんの言う通りエンチャントっていうのはイーター君にバフをかけることなんだけど詳しい訓練については今日のキャンプ地が決まってからにしようか」
「わかりました」
こうして私の付与魔術についての訓練は今日の夜に持ち越されることになった。
◆
そして数刻後、私たちは今日のキャンプ地について諸々の作業を終えると、サジさんによる付与魔術についての訓練が始まった。
「別に良いんだけどさあ……」
サジさんが瞑目しながら呆れたように言う
「何も全員参加する必要はなくない!?」
「いや、翠の射手殿の魔法訓練と聞いてはな、一兵士として興味が湧いたのだ」
ガルシアさんが真面目くさった顔で言う、するとアレックスさんたちも
「「右に同じく」」
と声を合わせてガルシアさんに同意する。
「それで姫様は?」
「仲間外れは嫌です」
頬を膨らませながらそう言うロレーヌたん、そういうお茶目なところも可愛いよ――ハッ!いかん、ロレーヌのあまりの可愛さに訓練のことをすっかり忘れていた。集中集中。駄目だロレーヌから目が離せない。どうやらルナちゃんはロレーヌに魅了されているようだ。
「ル~ナ~ちゃ~ん~」
するとサジさんが私の目の前まで顔を寄せて来る。怖い、だけどそんなサジさんも素敵です。
「真面目に訓練を受ける気がないなら止めるよ」
「ノット不真面目、ワタシ大真面目ネ」
「訳の分からない言葉を使わない!」
「すみなせん」
私は正座してペコリと頭下げる。
「全く、ルナちゃんはすぐにふざけるんだから。それで、訓練はちゃんと受けるつもりがあるの?」
「ヤル気全開テン上ゲマックスです!!」
私がヤル気全開テン上ゲマックスで返事をすると、サジさんは辟易といった様子で言う
「わかった。それじゃあ訓練を開始するね。それじゃあルナちゃん立ち上がってイーター君を手甲形態にして刃を出して」
「わかりました!」
言われて私はすくりと立ち上がると、イーターに魔力を流して手甲形態にして拳部分に刃を出現させる。
「うん形態変化はスムーズ出来るみたいだね。次にイーター君にエンチャントをするわけだけど、ルナちゃんは得意な魔法属性とかはある?」
言われて私は考える。得意な属性か、言われてみれば意識したことなんてなかったな。今まで使って来た魔法だって無属性の身体強化魔法と簡単な生活魔法だけだ。となればフィーリングで決めてしまおう。
「しいて言うなら風属性ですかね」
「だったらイーター君に風を纏わせるイメージをしてみて、まあ最初は難しいかもしれないけど魔法はイメージ力が――」
「出来ました」
「うそ!?」
そう言って目を見開いて口をポカンと開けるサジさん。失敬な嘘なんかついてないやい。イメージに魔力を通すコツはもうマスターしているのだから後はイーターに風を纏わせるイメージだけでしょう、そんなの幼稚園児だって出来るはずだ。
と、私は思っていたのだが、周りの反応からしてどうやらその考えは誤っていたようだ。サジさんだけでなくロレーヌたちもサジさんと同じ様な反応をしている。
「あの、私何かやっちゃいました?」
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