第52話 必殺技~いいな~アタシも欲し~~
私のこっぱずかしいお礼の後、護衛隊は何事もなく次の目的地まで歩みを続けていた。
しっかしあれだね、改めてお礼をするってのは意外と恥ずかしいものなんだね。ありがとうなんて言葉、普段口にするのは簡単なのに本当に感謝していることを気付かされてから言うのは特にクるものがあったよ。
まあ、私のこっぱずかしい話はここまでにするとして、今は早急に次の目的地について調査をしなくては。ゴールの分からない遠足なんてただの拷問だ。ならば誰に探りを入れるというのが肝要。ガルシアさんたち初期の護衛隊のメンバーは論外、私が訊いたところで答えてくれるわけがない。ならばロレーヌか?いや、ロレーヌも口止めされているから無理だろう。ならばあと一人しかいない。
私は、私の前を歩くサジさんの隣まで駆け寄る。
「サージさん。ちょっとお話しませんか?」
「別にいいけど何?ただ歩ているのに飽きちゃった?」
「まあ、そんなところです。ところでサジさんは次の目的地についてはガルシアさんから聞いているんですよね」
「まあアタシはこの護衛隊の斥候役だからね。目的地を聞いていないと斥候としての意味がない、だからちゃんと次の目的地は知ってる――」
そこまで言ってサジさんは何かを察したような顔をして私を見る。あ、これはバレたわ。
「ルナちゃん、アタシがそんなに口の軽そうな女に見える?」
ジト目で私を見つめるサジさん。私はサジさんの視線に耐え切れずに顔を逸らしてしまう。
「いや~私には何が何やら」
「ルナちゃん、こっちを見なさい」
「はい」
言われるがままに私はサジさんの方に顔を向ける。うっわサジさん、相変わらずきれいなご尊顔だこと、笑顔の裏の怒りまで美しさを感じちゃう。
「ルナちゃん、余計なこと考えない!!」
「はい!!」
「あのねぇルナちゃん、ガルシアさんも言ってたと思うけど護衛って言うのは信用が大事なの、現状ルナちゃんは姫様の護衛というよりは傍仕えに近い立場なんだけどその自覚はあった?」
「ありません」
「だろうね、今のルナちゃん護衛って感じもしないし、傍仕えにしてはフレンドリーすぎるもん」
「つまり、立場があやふやだから信頼を置けないと」
「それも有るけどまずは実力不足な点かな。アタシ、ルナちゃんの戦いを何度か近くで見てるけどモンスター相手にしても、人間を相手にしてもなんか危なっかしいんだよね」
「それって、覚悟が足りないってことですか?」
それならば、ヒュームさんの一件で克服済みだ。今ならばどんな奴相手にしても躊躇なく斬れる……気がする。しかし、サジさんは首を横に振る。
「違うよ、言ったでしょ単純に実力不足だって、今のルナちゃんは間違いなくそこいらの盗賊なんかには負けることはない、それは断言できる。けどね、それ以上の相手となったらどうしても決め手に欠けるのよ」
「決め手……ですか」
私の戦い方は身体強化法とイーターを使用した近接戦闘に特化している。だけどこれまではそれで上手くいってきたはずだ
「言われて言うのもなんですが、私は別に決め手に欠けているとは思ってませんよ。イーターを使った伸びろ如意棒も使えますし」
「あれはどっちかって言ったら奇襲でしょ。私が言ってる決めてっていうのはいうなれば必殺技のことなの」
必殺技、言われてみれば確かに私には必殺技と言われるような切り札がない。だからと言って急に言われても思いつくようなものがない。
私は腕を組み、首を傾げてう~んと唸る。しかし、良い案が思いつかない。
「イーター君は吐瀉物が使えないからね」
「使えないのではない、使わないのだ」
「ごめんごめんそうだったね。兎に角ルナちゃんは他の喰らう者使いよりも使える札の数が少ないんだよ。だったら後はどうするべきだと思う?」
「イーターだけに頼らないで自分自身の力を磨くことですか?」
「もう一声!」
イーター以外の私の力?剣技は今も勉強中だし身体強化の魔法はほぼ完ぺきに使えるし――ん?
「魔法……ですか?」
「その通り!ルナちゃんが覚えるべきは魔法なんだよ」
「だけど魔法って遠距離攻撃のイメージじゃないですか。それだと私の戦い方にあってない気がするんですよね」
「確かに魔法っていうと一般的には遠距離から攻撃するイメージがあるよね。だけどねルナちゃん、魔法ってものはもっと奥深いものなんだよ」
「というと?」
「ルナちゃんの戦闘スタイルである近距離戦においても使える魔法が存在するのです」
「それってどういう魔法なんですか?」
私がそう訊くと、サジさんは不敵な笑みを見せ、もったいぶったような口調で言った。
「ルナちゃんの戦闘スタイルに合った魔法その名前は――」
「その名前は?」
「付与魔術だよ」
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