第33話 血を喰らう者2~予想以上に強いなこの姉ちゃん~
「少し本気って今まで本気じゃなかったんですか!?」
「ごめんね。なるべくなら本気を出さずに倒せれば、って思ってたから……」
私にも手の内は晒したくないということか。少しショックだ。けど、
「大丈夫です。ウラッドさんを倒せればオールオーケーなので」
「ありがと。それじゃあ少し本気を出しますか!!」
言うと同時サジさんの雰囲気が少し変わって見えた。感覚的なものなので形容しがたいが、サジさんの纏う空気が先程よりも少し引き締まったような感じだ。それは相対するウラッドさんにも伝わったようで、
「行け!!」
少し焦ったように血の弾丸を私たちに向かって放つ。しかし、それをサジさんは高速の弓捌きですべて撃ち落とした。
「「な!?」」
私とウラッドさんが同時に驚きの声をあげる。すごい、手の動きが全く見えなかった。
「ルナちゃん!!」
言われて私はハッと我に返ると、慌てながらもウラッドさんに接近すべく走る。
「ちいぃ」
ウラッドさんは無数の血の弾丸を私に向かって放つが、その全てをサジさんがその卓越した弓矢の腕で撃ち落としていき、やがて私はウラッドさんに肉迫する。
「もらった、爆食」
私は再びイーターを捕食形態へ変化させ、大振りの一撃をウラッドさんめがけて放つ、
「させるか、ウラッドブラッドアーマーだ」
「応さ!!」
ウラッドさんがそう言うと展開されていた血液がウラッドさんを覆い、私の攻撃が防がれてしまう。くそ!!でもこのまま連撃を続ければ――私がそう思ったその時だった。ウラッドさんを覆っていた大量の血がウニのように変形、無数棘が私を襲う。
「キャ!?」
「ルナちゃん!!」
咄嗟のガードが間に合ったおかげか、無数の棘は私の体を急所に刺さることはなかったが、多くの傷を負ってしまう。ちくしょう、これでは手出しが出来ないではないか。私がそう思っていると、ウラッドさんを覆っていた血液がグネグネと変形し出し、やがてその中からウラッドさんが出て来る。その姿は真紅の鎧と剣を装備した姿であった。
「よもや、奥の手まで出させられるとはね」
言いながらクツクツと笑うウラッドさん。
「しかし、この姿になった以上、私に負けはない」
「大した自信だこと」
「事実だからね」
言うだけあってその見た目は強そうだ。しかも、
「イーターあの状態の血を喰らう者は捕食できる?」
「無理だ。あの纏われている血をどうにかせばならん」
こうなったらもうウラッドさん本人を倒さなくてはならないだろう。私は再びイーターを棍棒形態に戻すと、
「ブレード、シールド」
イーターにブレードの象形魔法をかけ右手にシールドを創り出す。今の私で勝つことは出来るのか?そんな疑問と不安が頭をよぎる。
「さあ、最終局面といこうか」
ウラッドさんがそう高らかに宣言したその時、
「あんま調子に乗らないでね」
サジさんの声と同時、私の頬をかすめるようにしてサジさんの放った矢が通過、あれはボーンちゃんの吐瀉物によって創り出された矢であった気がする。
「なぁ!!」
サジさんの不意打ち気味の攻撃にウラッドさんはギリギリ反応出来たのか、その一矢を血を喰らう者で受ける、が矢の勢いが止まらない。
「こっの!!」
ウラッドさんはじりじりと地面を削りながら後退していく。このままなら勝てるんじゃないか!?
しかし、ウラッドさんはそんな私の希望を打ち砕くようにサジさんによる一矢を払い斬った。
「どうだ、これで――」
だが、
「だ・れ・が、一本しかないって言ったのかな?」
サジさんは無数の矢を弓につがえていた。それもすべてがボーンちゃんの吐瀉物によって創り出された矢であった。ウラッドさんは絶望的な顔をしている。しかし、サジさんは容赦なくその矢をすべてウラッドさんに撃ち放った。
「ぐわぁぁぁぁ!!」
当然撃ち放たれた矢はすべてウラッドさんに命中、私は思わずウラッドさんに向かって合掌していた。
と言うか私後半ほとんど何もしてないじゃん。サジさん一人だけで良かったのでは!?
「ルナちゃん」
私がサジさんの声のする方に振り返ると、サジさんもろ手を挙げて
「イェーイ」
と言いながら私に近づいてきた。
「い、いえーい」
ドギマギしながらも私も両手をあげてサジさんとハイタッチ。
「後は、ルナちゃんのイーター君が血を喰らう者を食べるだけだね」
「そ、そうですね」
私がドギマギしながらそう返すと、サジさんは不思議そうな顔をして言う
「なんでそんなにドギマギしてるの?」
そりゃ、貴女のせいです。本当はそう言いたかったが、なんとなくサジさんのことが怖くなって言えない
「い、いえ別に」
「変なルナちゃん」
この後私は完全にのびたウラッドさんの血を喰らう者をイーターに食べさせ、ウラッドさんはこれまでの吸血鬼騒動の犯人として、ガルシアさん経由で前領主に引き渡されたのだった。
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