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第23話 異世界テンプレ2~他の奴は追々ということで~

 私たちはサジさんに連れられて村のすぐ近くにある森の中まで来ていた。

 森の中は木々やその他の植物が鬱蒼と生い茂り、私は身体強化の魔法をかけているにもかかわらず歩くのに一苦労をしていた。


「サジさ~ん、まだ歩くんですか~」


「まだまだ歩くよ~。不整地地形に慣れてない現代人にはきついかもだろうけどこれもまた訓練!頑張っていこー!!」


 元気に大声を出す。これって狩りだよね、そんなに大声を出して大丈夫なのだろうか?


「あの、サジさん」


「なあにルナちゃん。休憩はまだ先だよ」


「いや、狩りなのにそんな大声を出して大丈夫なのですか?」


「まあ、普通の狩りだったら落第点以下だね。だけど今日の狩りは普通の狩りとは違うから」


「それってどういうこと――」


 そこで、私の危機察知スキルが発動し気付く。何かが私たちに近づいていることに。


「あれ?もしかしてルナちゃん気付いた?」


「はい、何かが私たちに近づいてきてます」


「なかなかいいセンサーしてるね。それとも索敵の魔法でも使っていたのかな?」


「いいえ、私危機察知のスキルを持っているのでそれが反応したんです」


「ルナちゃん現代人なんだよね?それなのに危機察知スキル持ってるなんて、どんな生活送ってたのよ」


 どんな生活って――いかん思い出すだけでまた気分が暗くなりそうになる。


「それは御想像にお任せします。それよりも近づいてきている何かについてですけど、サジさんは知っているのでしょう?」


「うん、知ってるよ」


「それじゃあそれについて教えてください」


「それはね――」


 サジさんが何かの正体について答えようとしたその時、草むらの中から一頭の巨大な猪が現われ、サジさんに向かって突進を仕掛けてきた。


「サジさん危ない!!」


「バインド」


 そうサジさんが唱えた瞬間、巨大な猪が光を発する鎖にがんじがらめにされ、その動きを止められてしまう。


「何かの正体はモンスターでしたー」


「この猪モンスターだったんですか?」


「そだよ、ていうかこの世界に生きる獣の大半はモンスターだよ」


「モンスターと獣の違いが判らないのですが」


「この世界では魔力を使う獣のことをモンスターって呼ぶね」


「それじゃあこの猪も魔法を使うのですか?」


「魔法って言ってもこの猪は簡単な身体強化の魔法くらいしか使わないけどね」


 へーそうなんだ。私がサジさんの魔法によってがんじがらめにされている猪をながめていると、サジさんが私に向かって言う。


「それじゃあとどめさしはルナちゃんにお願いしようかな」


「へ?」


 サジさんからの思わぬ言葉に私が固まっていると、


「だからとどめさし、要はこの猪を殺せって言ってるの」


ここに来て異世界テンプレの一つ、命を奪う覚悟イベントがやって来た。まあサジさんが狩りに行くってい言った段階で薄々感じてはいたんだけどね。


「殺り方はルナちゃんに任せるけど、おすすめはなるべく命を奪う感触がわかる殺り方かな」


 中々エグイことをおっしゃる。


「でも私獣を殺せるような武器持ってないですよ。もしかしてここでイーターの形態変化をさせようってことですか?」


「俺はそんなことするつもりはないぞ」


「イーターはこう言ってますけどどうすれば――はっまさかイーターでボコボコに殴り殺せなんて――」


「流石にそれは猪が可哀そうすぎるからやらせないよ。その代わりと言ってはなんだけどルナちゃんに一つ魔法を覚えてもらいます」


「そんなインスタント感覚で覚えられる魔法があるのですか?」


「あるよ、ていうか魔法のほとんどはイメージさえちゃんとできれば大概の魔法は発動できるんだから、才能によってはインスタント感覚で出来るようになるよ。ルナちゃんはそんな経験ない?」


 あるかないかで言われればある。だがあれは身体強化魔法の延長だったからなあ、まだ私には他の魔法を使えるイメージが湧かない。


「あるにはあるんですけどねぇ~、ちょっと自信が湧かないとというかなんというか」


「そうか~自信がないか~、でも自身は大事だよ。魔法はまず自分のイメージを信じられるかが大事だからね」


「だったら無理じゃないですかね。だから今回はサジさんが仕留めるということで……」


「それじゃあ訓練の意味がないから却下。大丈夫、魔法初心者でもできる簡単な魔法だから」


「それならまあ、習うだけ習ってみます」


「よし、その意気その意気。因みにその魔法の名前は象形魔法と言うんだけど聞いたことは?」


「ありません」


「そうだよね。簡単な割には名前は広く知られてないからね。象形魔法っていうのね、魔力を物質化させる魔法のことを言うんんだけど――今私が猪に使っている魔法も象形魔法の一種なんだよ」


「へ~あの鎖も象形魔法なんですね。サジさんがバインドって唱えたから拘束魔法なのかと思ってました。」


「魔法名についてはぶっちゃけなんでもいいんだよ。やろうと思えばチェインって唱えても発動するし」


「そうなんですか?」


「魔法に必要なのはイメージ力とそれに魔力を通せるだけの魔力量だけだからね。長ったらしい詠唱とか魔法名はあくまでもイメージの補強でしかないんだよ」


「だから身体強化魔法は魔法名とかを唱えなくても発動出来たのですね」


「そういうこと、というわけでレッツトライ!!」


「はい!!」


 言って私はイメージを始める。イメージするのは出来るだけ簡単なものが良いよね。――そうだなイーターに付属させる形で魔法を発動させよう。そうすれば柄の部分をイメージする手間が(はぶ)ける。よし、


「ブレード」


私がそう魔法名を唱えると半透明の赤色の刃がイーターの打突部分に現れる。よし!成功した。あとは実際に切れるかどうかだ。

 私はそのあたりに生えている草に向かってイーターを振ってみる。するとブレード部分に触れた草が真っ二つに切り裂かれた。


「サジさん成功しました!!」


 私は魔法の成功に思わず嬉しくなり、サジさんの方に向くと、サジさんは驚きの表情を私に向けていた。

 あり?なんか思った反応と違う。


「すごいよルナちゃん!!あたしの時は先の尖ったランスもどきしか創り出せなかったんだよ。それをルナちゃんは一発目の魔法で刃物を作り出すなんて――果ては大魔導師にでもなれるんじゃない」


「サジさん褒めすぎですよ。それじゃあ今日の訓練はこのへんで……」


「終わるわけないでしょ。象形魔法は成功したのだから次はとどめさし、さあレッツトライ!!」


「ですよね~」


 言って私は猪の方を向く、猪は未だサジさんの拘束魔法でがんじがらめにされているが、拘束を解こうとその場で暴れまわっている。


「あ、言い忘れてたけど一発で仕留めるには猪の顎の先にある心臓をサクッと刺せばいいからね」


「りょうか~い」


 私はイーターを構えて猪の心臓があると言われた顎の先を注視する。そして思い切ってそこめがけて刺突攻撃を繰り出す。うへぇ~皮と肉を刺し貫く感触がダイレクトに伝わってくる。猪も痛みにのたうちまわっり、その感触も伝わってきてとても良い気分とは言えない。


「ルナちゃん、それじゃあまだ浅いからもう一歩踏み込みなさい」


「うう、了解」


 言われて私はサジさんの言う通りもう一歩踏み込みイーターを更に深く突き込む。するとそれまで暴れていた猪が痙攣(けいれん)をし始め、やがてピクリとも動かなくなった。


「うん、よくやったね」


「はい……」


 サジさんは私の頭にポン手を置いて優しく私の頭を撫でる。猪に夢中で気付かなかったが私は涙を流していたみたいだ。


「それが命を奪うという感触だよ。しっかり覚えておきなさい」


 サジさんは私の頭を撫でながら優しくそう言った。正直もうこんなことはしたくない。だけどこの命の軽い世界ではそうはいかないのだろう。

 私はゆっくりと猪からイーターを引き抜く。引き抜いた時の感触もとても良いモノとは言い難かった。


―――十数分後


「どう?少しは落ち着いた?」


 サジさんが優しく私に言う。サジさんは私が落ち着くまでの間とどめをさした猪の血抜き作業を行ってくれていた。


「はい、すいません血抜き作業手伝えなくって……」


「別に良いよ、皆最初はそんなものだしね」


「皆ってことは、サジさんは他の人にもこういうことを教えたことがあるのですか?」


「うん、新米冒険者の人とか、それこそ一姫ちゃんにも教えたよ」


「一姫にも……」


「まあ結構前のことだし、場所も違うんだけどね」


「その……その時の一姫の様子はどうだったのですか?」


「今のルナちゃんと変わらないよ。至って普通の娘っていう印象だったかな。だから一姫ちゃんが指名手配された時には驚いたよ、そんなまさかってね」


「私の身内がすいません」


「ルナちゃんが謝る必要はないよ。一姫ちゃんの責任は一姫ちゃんのだけのものなんだから――話が湿っぽくなっちゃたね。ここは気を取り直して作業の続きといこうか」


「はい」


「それじゃあルナちゃんには猪の解体作業のいろはを教えてあげよう」


「え?」


「え?じゃないよ。食べられない内臓とかはここに捨てていくから、猪の内臓を抜かないと」


「マジですか?」


「大マジだよ。因みに今日は後一匹仕留めてもらうから、そこのところよろしくね」


「うへぇ~」


 この後サジさんの言う通りもう一頭の猪のとどめさしを行い、私はグロッキー状態で帰ることになった。


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