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中学生、家族に洒落にならないカミングアウトをされる。

泉州方言は読みやすさを考えて適宜アレンジしてあります。

尚、この物語は未成年者の性行為、違法薬物、および暴力行為を推奨するものではありません。フィクションであることをお含みおきのうえ、創作物としてお楽しみください。

 なろうってサイトがあることを、先日初めて知りました。

 きっかけは、今付き合ってる彼女が物書きさんなんで、その関係で。


 どうも、皆さん初めまして。ハルヒ、言います。

 年は二十六歳で、仕事はホストやってます。


 行ったことある? ホストクラブ?


 ……えっ、怖いことあらへん。

 俺な、前から思ってたんやけど。漫画やドラマの中でホストクラブって、えらいドロッドロした感じに描かれてるやん。


 あんなん見たら、そら、怖いとこやと思うよな。

 けどそんなんちゃうから。

 まあ、中にはそういう店もあるのかもしれんけど。


 うちはオーナーの指導で、シャンパンコールもせえへんし、高いボトルを俺らのほうからお客さんにねだったり煽ったりすることもないからね。


 せやから、最初に来たお客さんには、わいわい騒ぐのが好きな人はうちの店はあわんと思いますよって案内しとる。


 ……えっ、収入いくらって? 枕営業とかしとんのかって?


 収入は、日によってバラバラやけどねえ。

 お客さんがいきなり、これ入れて、言うて指さしたのがブラックパールだったりすることもあって、えっ、間違えとらん? ってなる時もあるし。


 ロマネ、リシャール、トラディション。そのあたりの高い酒は揃ってます。


 そういう突発的なのを除けば、大体一日の売り上げが三十万から五十万の間なんよね。で、俺の出勤は週に六日。この数字で店のナンバー2やらせてもらってます。ひまな人は計算してみてな?


 枕は、ぶっちゃけ、最初の頃に何回かやったよ。

 だって当時は新人やし、右も左もわからんし。けど、そんなやり方しとってもあかんと思って、今はやっとらん。


 ほんまやって。

 だって考えてみ? お客さん全員としとったら、俺の体がもたへんやん?

 俺かて生身の人間なんやしね。


 今飼ってる生き物は、全部で二十七匹。


 わんこが三頭(全員保護犬)、鳥二十一羽(セキセイインコと文鳥と羽衣インコ、オキナインコ、ウロコインコ、その他いろいろ)、クランウェルツノガエルが一匹と、フトアゴヒゲトカゲが一匹、あとはメダカ。

 メダカは数かぞえたらえらいことなるし、水槽ひとつで一匹とカウントさせてもらいました。


 ……こうして見ると、多すぎよな。


 わかってはいるんよ自分でも。

 なんでそんなに飼ってるのって、まずは生き物が好きだから。

 あとは、まわりの人が飼って、飼ったはいいけど飼いきれんって話を聞いて、俺が、


「そんならうちで飼う。俺んとこ連れてこい」


 言うてうちに来た子もおるし……。


 まあ、あとはタイトル通りですわ。

 俺、多分、寂しいんよ。


 普段は男やし、我慢して外には出さんようにしてるけど、出さへんからって気持ちが消えてなくなるもんでもないしな。


 そんな時に、行き場のない子とか見ると、ついお迎えしてしまうんよな。

 よっしゃ俺んとこ来い、なんとかしたる。

 そんな気持ちになる。で、増えてく。


 こないだもグレーのセキセイインコお迎えしてん。行きつけのペットショップとかで売れ残ってる子とか見てしまうと、なんや、じっとしていられへんで。


 そんで、あいつらも鳥同士相性とかあって、こいつのかごに入れると喧嘩ばっかりするけど、こっちの子と一緒にすると全然違うとか、あるねん。


 ラブラブの鳥って、いつ見てもぴったりくっついとって、見とるとかわいいわ。お前ら幸せなんやなあ、うちで引きとってよかったなあってしみじみ思う。


 ……えっ、ホストなんてしとるくせに、なんで寂しいって?


 なんでやろうね。

 実は自分でもそこら辺の気持ちがようわからへん。


 物書きさんがそこんところを書いてくれるて言うから、よかったらちょっと読んでいってくれると嬉しいわ。


◇◇◇


「いい加減にしィ! 何回オカン泣かしたら気が済むんや! ほんまの子どもでもないくせに!」

「……はっ?」


 うちの家族構成は、六人。

 おとん、おかん、年の離れたおにいが二人におねえが一人。俺は末っ子。


 今思えば、確かに俺もどうしようもないクソガキだったかもしれん。

 喧嘩はようするし、頭もド金髪やったからな。


 けどなあ、高一からずっとパンチパーマのおにいに「髪の毛黒くせえ!」って言われても、説得力とかないと思わん?


 まあ、俺はヤンキーちゃうし。やんちゃでもないし。喧嘩は向こうが売ってくるんやし。

 俺はただ、ちょーっと人より元気がいいだけやし。


 って思っとった俺に、上のおにいがある日、本気でブチ切れました。


 えっそれ何の冗談? って思ったけど、おかんの顔もおねえの顔も真っ青なんよ。

 やばいバレた……。お前それ、今ここで言うんか……。って顔に書いてあるんよ。


 で、調べてわかりました。

 俺、この家の誰とも血がつながってなかったんやって。


 詳しい事情とか今も知らんし、知りたくもないし、産みの親がわかったところで会いたいとか思わんからええのやけど、どうもその人はシングルマザーで俺を産んだらしいのよな。


 でも産んでしまってから「やっぱり無理、私、子どもとかいらん」ってなって、俺を捨てたって聞いとる(ブチ切れたおにいからな)。


 さて、そこから俺が大人しくなったかというとやな。

 ならへんわ。なるわけないわな。


 あっ、でも言うとくけど俺、自分から喧嘩売ったりとかはせえへんで。

 大概、歩いてたら向こうからいろいろ売ってくるんやもん。

 そしたらせっかくやし、買っとこか。みたいになるやん。なあ?(えっ、ならへん?)


 うちのおかんは町内で飲み屋をしてるから、中学生の時から俺は夕方になると店の手伝いが日課。

 シャッターあけて掃除したり、届いた氷を割ったり。


 その日も一通りやり終えて店から出たら、知ってる人がそこにおんねん。


「エルのおばちゃん。どないしたん?」


 見たら、おばちゃん泣いとんねん。


「どした。エルまた帰ってきてないのか?」


 エルっていうのは俺の初めての彼女で、中学の同級生なんやけど、その時はもう別れてたんよ。

 理由は、エルがシンナーに手ぇ出して、その仲間とつるむようになったから。


 付き合ってた時からおかしいなぁとは思ってたんよ。約束してたのに来ぃへんかったり、おるって言った時間に家におらへんかったり。


 顔色もだんだん妙になるし、変やなと思って問い詰めたら、シンナーやった。


 体によくないで、やめい。って何回言ったかわからん。

 エルもその場では「やめる」って言うんやけど、その約束も毎回いつの間にか破るんよな。


 多分もう、癖になっとったんやろね。

 シンナーってあれ、薬物やから。依存性もあるし。

 一度癖になってしまったら、なかなか自分の意志ではやめられへんのよ。


 そんでも、別れたからって放っとけんし、何回もその悪い仲間のとこから引きずり出してエルを叱った。


「やめい」

「やめる」

「やめてないやろやってるやろ」

「もうしない」

「嘘やろ絶対またやるやろ」


 その繰り返しや。


 けど目の前でエルのおばちゃんは泣いとるし、もうじき暗くなるし、おばちゃんひとりで探させとったら危ないし。


「おばちゃん、もう家帰りぃ。エルが帰ってきた時家におばちゃん居らなんだらよくないやん。あいつは俺らが探したるわ」


 そう言ってな、店の手伝い終わるの待ってた友達にも声かけて、悪い奴らがいそうなところを片っ端から見て回るわけよ。


 そうなると、エルがいるところには当然変な男もおるわけやん。

 そういう男は蹴り倒して、エルを引きずって帰るんよ。

 なんやエルは泣いてごねたりしとるけど、そこは有無を言わさずやな。


 で、暗くなってから家に帰ると、おかんは出勤しとるし、おとんもまだ帰ってきとらんし。おにい二人は単車やら車やら乗り回しとるし、おねえは彼氏のところに行っとるしで。


 俺ひとりなんよな。


 俺が帰ると出迎えてくれるのが、当時飼ってたカニンヘンダックスのチョコダップルの女の子や。

 生まれつき後ろ足が弱くて、ブリーダーさんとこでも最後まで貰い手が決まらんでおったのを、ほな俺欲しいわ、言うて飼ってん。


 俺になついて、必ず俺のあとをひょこひょこついて歩いて、寝る時も布団の中に入って寝る。

 その子の世話して、ご飯食べてるの見ながら考えるわけよ。


 エル、あいつ、シンナーやめられるやろうか?

 あんなことしとったら高校かて進学できひんやろうし、どないするつもりなんやろう……。


(──俺のせいなんかな)


 最初に悪い仲間に誘われた時に、あいつがきっぱり断らんかったのは、俺が寂しい思いとかさせてたからやろか?

 それか、最初に俺が気づいて止めてやれてたら、こんなふうにならんかったんやないか?

 それってやっぱり、俺が悪いってことなんちゃう?


 そんなん考えてたら泣きそうになるから、必ず毎日世話しなあかん子がいるのって、泣かないためにはありがたいのよな。


 男は顔で笑って心で泣くんや、ってじいちゃんの教えやしね。


「ハル、お前、言うことが時々昭和や」


 って友達に言われるけど、しゃあないやん。

 うちは共働きやし、俺はじいちゃんっ子やし。

 じいちゃんの教えは骨まで染み込んどる。


 とにかく強くあれとか。売られた喧嘩は負けたらあかんとか。けど弱い者いじめはしたらあかんとか。惚れた女のわがままをきくんが男ってもんやとか。


 どっちのじいちゃんも、年をとってもしゃんとして、かっこようて、俺は大好きやった。

 まあ、どっちのじいちゃんたちとも血はつながってないけどな。

 おかげで、年取ったら自分がハゲるタイプなのかどうか、どこを見てもわからへんわ。


「寝るで、チョコちゃん」


 ダックスに声かけるとベッドに飛び乗ってくる。

 こいつは俺の背中あたりで丸くなって寝るから、潰さないように、俺も朝まで寝がえりは打たんと、横向いたまんまじっとして寝る。


 ──俺が今ヘルニアなのは、寝るときに姿勢をよう動かさないせいや、って整骨院の先生に言われたけど、どうなんやろな?


 友達は、高校一年の時にやりすぎたからちゃう? って言うけど。


 さあて、どっちやろな。

※ブラックパールとは。

バカラ社がこのために製造したクリスタルボトルに入った全世界限定786本のブランデー。

希望小売価格は一千万だが、現在はプレミアがついており、その値段では買えないと思われる。ローランドが下ろしたボトルとしても有名。

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