資産家密室殺人事件。メイドは見ていた。資産家夫婦に迫る魔の手。探偵は・・・もういいや。
『第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』応募作です。
『鏡の悪魔』『月夜の晩の雪だるま』に続く3本目の投稿作品となります。
ちなみに先の2本もそうですが、書き貯めていたものを放出しているわけではありません。
なんとなく思いついてその場のノリで書いてます。
思いついといて何ですけど、こういう反則気味なテイスト、大丈夫かな?
ではお楽しみください。
「ドアも窓も鍵が掛かっている。隠し扉等、他の脱出口も無さそうだ」
グレーのスーツを着た鋭い目つきの中年男が部屋の中を調べながらつぶやく。
足首まで埋まりそうな豪華な絨毯が敷かれた部屋の中央に、太った壮年男性がうつ伏せで倒れている。
その背中には、根本まで刺さったナイフが光る。
「密室殺人ですね」
後ろから声が掛かる。
「うぉい、誰だ!!」
「あ、どうも、わたし、通りすがりの探偵、密室康介と申します」
「出オチかよ!!おい小林!!関係者以外、入れるんじゃねぇ!!」
「あれ?溝呂木警部知らないんですか?ご近所で有名な探偵さんですよ?そこでちょうど会ったんで、見て貰おうかと思って」
小男、小林警部補が答える。
「探偵だぁ?ほぅ。なら見て貰おうじゃねぇか、名探偵さんよ」
密室が横たわる遺体に近寄る。
遺体の背に深々と刺さったナイフをしげしげと見つめる。
「見て下さい。ナイフにカラビナが付いています。おそらく犯人は、テグスのようなものを通して使用したのでしょう。わたしの推理が正しければ・・・」
密室が窓に近寄る。
「こちらでは無しと」
続いてドアの周囲を調べる。
「こちらでも無しと」
密室は部屋の隅に立っている人々に視線を移した。
「そちらに待機なさってる方たちが容疑者というわけですか」
「おい、テグスの話はどうなった!!」
溝呂木の問いを無視して、密室は容疑者たちに近寄る。
「左から第一発見者にしてこの屋敷のメイドさん、次が被害者の奥様、その隣が息子さん、次が・・・」
「犯人はあなただ!!」
密室は小林警部補による各人の紹介を遮り、ある一人の人物を指差した。
それは、屋敷のメイドだった。
「・・・はい、わたしが殺りました」
メイドがその場に崩れ落ちた。
密室がメイドに寄り添い、優しく声を掛ける。
「どうやって密室を作りましたか?」
「旦那様を殺害した後、扉を出て合鍵で鍵を閉めました」
「・・・と、いうわけです。わたしの推理通りだ」
「さすが、名探偵!!」
小林警部補が同調する。
「いやいやいや、そんな推理してないだろ?」
溝呂木は困惑しながらも、密室に近付いた。
「おい探偵。どうやって犯人が分かった」
「なぁに、片っ端から指差すつもりだっただけです」
メイドが小林警部補に連れて行かれた。
「さて、わたしはこれで。難事件があったらこの密室康介を思い出してください。それでは」
密室が悠然と部屋を出て行った。
一人残される溝呂木警部だった。
「・・・なんだこれ」
名前遊びが出来そうなキーワードがこれしか無かったもので、こんな内容になりました。
でも、名前遊びだけして、全く推理が絡まない作品にするのもありだったかなとも思っています。
でもそうすると、こういったタイトルは選べなかったわけで。
痛し痒しですね。
ということで、また別の作品でお会いしましょう。
ではでは♪