VI:queen
俄かに主を亡くした城は混乱しました。
一方では新女王エレクトラに対する歓喜が起こり、もう一方では悲劇による歔欷や叫び声が聞かれました。
しかしその中で、新たなる王エレクトラは声高に呼ばわりました。
「静まりなさい、我がアヴァンシア!私はこれより王となります。これは王命です。今宵、日が完全に沈むまでに、皆を城内の広場へ集めなさい!」
すると城内は静まり返り、エルフ達は散りました。
白は王子を一瞥し、言いました。
「新しい王の最初の命令だ。私達には仕事が課せられたのだ。さあ、女王の嫡子よ、我に続け。」
白とヴィルニアは馬を走らせ國の端までエルフ達を集めに行きました。
二人が日暮れに戻ると既に沢山のエルフ達が城内に居ました。
「私がこれよりこの國の王となります。不満がある者は前へ!」
エレクトラが女王の座に昇る事を宣言しました。
白の後ろ盾のもとに民に支配を甘んじさせたのです。
それから白は女王エレクトラと話しました。
「ヴィルニアや他のエルフ達にキオスとメロペを捜させましょう。貴方には私に話すべき事が有りますわ。そうでしょう?」
「しかし母上、」
言いかけたヴィルニアを制し白は言いました。
「勿論。」
白は軽く微笑みました。
「さて、新女王エレクトラ、大臣や貴族達は如何にせん?」
「あら。偉大なる古の王のお一人ともあろう方が何を仰いますの?」
「私はオークやゴブリン、トロルの長だ。即ち私はエルフ達の事はよく解らぬ。」
「そうでしたわ。失礼。」
「それで、エルフ達を従わせる方法は?エルフに対し、オークの様に力で支配するのか?」
「エルフ達は温厚な民です。少なくともオークやゴブリンやトロル達よりは。」
自分の失った民を批判され、白は苛立ちを覚えました。
「…もうよい、早く申せ。」
「私はアバンの力を以て民を支配致しますわ。」
悠然と語るエレクトラに白は眉を顰めました。
「破壊の力を以てか?」
「アヴァンシアはアバンの女王に絶対的に従いますわ。」
「何故?」
白は不快そうに問いました。
「アバンは彼等の血です。アヴァンシアは古のアバンの王の子孫なのです。」
「解らぬな。人間とエルフの混血があるのにエルフ同士の混血は無いと申すや?ましてや移民を考えぬのか?加えてエルフは不死と言われる種族だ。寿命によってはエルフは死なぬ。つまり全くアヴァンシアの血を引いていないエルフも少なくは無い。」
「関係有りませんわね。この國のエルフは、永遠の“アバンの契約”交わしております。留まる者に今一度“アバンの契約”をせしめるので御座います。」
白は女王の言葉に顔を歪めました。
久々の更新ですね!
次は主人公と妹と弟メインで書く予定。