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IV:knight

「どうかお早く、我が民をお救い下さい。」

と王が言いました。

「本当には先に此方の望みを叶えるつもりだったが、これも我が愛する配下の民の為だ。さあ、城の一番大きな洞窟の灯りを消し、そこに怪我人を集めよ。」

と少女が言い、横たわった王女エレクトラを起こしました。

すると王女は目覚め、血塗れの夫に寄り添い、

「嗚呼!我が最も愛する方よ。お別れです!」

と言い、夫に接吻しました。

少年はようやく父が死に、母が白エルフに救われたと悟りました。


さて、少女はそれから暗澹なる洞窟の全ての傷ついた民の治療をし、オークの女と共にそこから出て来ました。

オークの手には明らかにエルアラと見える、点滅する白い光を放つ石の付いた指輪が填められていました。

少年はつい指輪に惹かれてオークの許へ行き、指輪に触れようとしてしまいました。

しかし少女がアバンの剣を取り、その切先が有った方をを少年の足下に向けると、少年の下の地面は大地をも揺らがす轟音をたてて爆破し、共に剣を持つ少女の腕が体から切り裂かれました。

少年は凄まじい爆破の中を無事で過ごしました。

少女の方は落ち着いた様子で腕を自らの指輪の力で接合し、恍惚(こうこつ)たる微笑を浮かべました。

彼女の癒やしの力は指輪の力で、それは安息の闇を与えるものでした。

「少年、その女の指輪に触れてはならぬ。それも使い手を選ぶ。触れればその身は泡となり果てるだろう。それにしても、嗚呼、これは素晴らしいエルアラだ。これは(まさ)しく兄のアバンであり、許された血を受けぬ者を拒むエルアラ!流石は使い手を愛さぬ物よ。しかしお前はやはりアバンの力によって滅ぼされぬ血なのだな。我が丈夫の(かいな)は最早微塵だというのに!」

と少女は呵々と笑いました。

ヴィルニアは、腕が裂けたのにも関わらず笑っている少女に驚き、差し伸べられた少女の手から恐る恐るアバンを受け取り言いました。

「では我が父を奪いし物はこの剣なのですね。」

「人間がエルフの魔石を使おうと試みること自体が愚かしい。」

少女は冷たく言いました。

其処に居た民は恐ろしき魔力を持った救済の手に戦きました。


それから王宮より(エドラス)が出て、

嗚呼白(ディア)よ、さぞかしお疲れでしょう。今日は我が城でお休み下さい。我等は有らん限りで貴女を持て成しましょう。」

と少年と白のエルフ、オークを迎え入れました。

少女は、

「私は急いで危険を冒しに行かねばならぬ。だから一番速き馬と一振りの剣、私とシャイアンとヴィルニアとエレクトラ4人の1日分の糧を用意しろ。私達は休息は要らぬし、すればその国は我が兄の手により恐ろしい目に遭うだろう。」

と言い、その場に在った椅子に座りました。

王は家来に白の言った物を持って来るように言い付け、ヴィルニアに話しだしました。

「ヴィルニア、我が民を救われた事、苦い思いをされた事、本当に有難う。ケユクスの亡骸は我が王家の隣に塚を築き、其処に埋葬しようと思う。また、我が国と東エルフのアノルはエレクトラ姫が王座を継ぎ次第、ケユクスと姫の関係にかけて同盟を結ぼうと思っている。」

少女が口を挟みました。

「同盟を結ぶのは勝手だが、恐らくこの国はそれにより莫大な被害と果てる事なき悲しみを被るだろう。何故なら我が長兄に忠実な東エルフのアノルの王を殺したのはエレクトラの子で、女王となったエレクトラは兄の恨みを買い、同盟はその時果たされるからである。」

王は応えて、

「しかし私は同盟を結びたいと思っております。何故ならこの国を救ったのは、紛れもなくアバンの剣であり、エルフの力でありましたから。」

と言いました。

その時、王の召使いが来て、白に言いました。

「偉大なるエルゼルよ、貴女の準備を仕りました。」

王は其処に玉座の間の夫の許で泣いていたエレクトラを呼び、同盟の提案をしました。

エレクトラは少しなりとも喜び、王に礼を言いました。

「殿よ、我が暗きの国にその様なお気遣いを本当に有り難う。喜んで同盟を結びたいのですが、私は私の国を自分達で守り、治めたいのです。そしてその為に我が国は誰も侵せぬ隠れ王国となりましょう。しかし王の在すこの国には、幾らかの使者を遣わしましょう。」


それから少女は、

「さあ、我等お互いの契りを果たしに行こうではないか。」

と言い、城外へ歩き出しました。

王と召使いとシャイアンと呼ばれたオークは後に続き、エレクトラは息子の手を取り、言いました。

「さあエルフと人間の子よ、貴方の勇士を、あの方への忠誠を、示しなさい。私は我が父に手を下しません。あの方のご意向に反するからです。貴方が我が父から命を奪いなさい。豪傑の武士もののふとなってあの方にお仕えしなさい。」

ヴィルニアは悲しみを隠して言いました。

「嗚呼、偉大なる母よ。貴女の下に幸多からん事を。」

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