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II:white elf

「我が国は隣国でもあり、同盟国でもあるスラヴァンから、突然総力での攻撃を受けたのだ。ケユクスが戦場に着いた時には、もう圧倒的に我が軍が負けていたのだ。ケユクスが来て、幾らか事態は良くなったものの、此方は圧倒的に負けていた。何しろ此方の戦力が三百程度だったのに対し、隣国は一万もの兵を上げて我が国に攻め込んだ。ケユクスは我が王国の為、殉国の士になり、命を捧げたのだ。夫人は人間の妻として我が国を助けて、治せぬ傷を負った。しかし夫人は帰る事を望まなかった。そして我々も帰らせる馬や術を持たなかった。我々は救う為のあらゆる術を持たなかった。」

王が話し終わらぬうちに、ヴィルニアは母にすがり、咽び泣き、王に(いとま)を乞いました。

王は了承し、城門を開け放ちました。


すると、見よ!

其処(そこ)には仮面をし、純黒を纏うた白のエルフの少女と、漆黒の重装備のオークの女が在りました。

白のエルフ、それはエルフの種族名ではなく、生きている最古の、強靭な肉体と美しさを誇る、白眉とされるエルフの一人の呼び名で、彼女自身の呼び名でした。

それは彼女の闇で育まれし肌と髪の白さ故でした。

彼女はまた闇のエルフとも呼ばれていました。

黒衣の少女は仮面を外し、純血種特有の、よく通る美しい声で、

「クラヴァス、クラヴァス!」

と呼ばわりました。

すると、先程ヴィルニアを通した武士が来たってエルフたちを通しました。

ヴィルニアは自分の横を通る白のエルフに唯目を配らせていました。


エルフはヴィルニアより少し小さな背丈の華奢で美しい少女の姿で、膝の辺りまで長く、肩の辺りから細かく波打つ、艶やかに輝く白髪にして、白皙、小さな瞳孔と深紅の大きな虹彩を持ち、黒い外套に黒い服、銀の防具を着けていました。


すると不意に白のエルフの紅い目は少年の眼を捉えました。

そして、

「此なるは美しエレクトラ王女か。」

と傷付いたエルフを見て言いました。

少年は夢魔から覚醒したかの様に答えました。

「はい、そして愚生ヴィルニアの母であります、ディア。」

少女が慈愛に満ちた微笑で、

「そうか、私に付いて来い、私は王女を救わんと思う。」

と言うと、少年は

ディア、母は瀕死であります、どうかお急ぎ下さい。」

と乞いました。

何故なら、

「白のエルフは何人も癒やす手を持たん」

と言われていたからでした。

彼女が

「シャイアン!」

とオークの名を呼ばわり、王の許まで導かれてゆくと、オークの女は少年の母を背負って後に続きました。

少年は唯後に続き、城内へ戻りました。

玉座の間には 国王(エドラス)が立っていました。


エドラスは

「おお、我が麗しき主君白ディア、我が白の闇の姫君!ご覧に入れましたか、この有り様を!嗚呼、どうかその寛厚な腕で、我等を、この惨劇を救い給え。我等が尊堂の寵愛を受けることが叶えば、我等は尊堂の思うままに致しましょう。」

と彼女を迎え、大粒の宝石が嵌め込まれた、輝かしい玉座に座らせました。

すると白と呼ばれし者は、今までに増して美しく見え、また華奢な体に偉大なる知恵を秘めし白のエルフ、正にいにしえカランディ達の一人姿でした。

偉大な者はその白く伸びる腕で黒髪のエルフの王女に触れると、血染めの王女はまるで亡者のように、安らかな眠りに落ちました。

そしてヴィルニアは母に近づくと、母が呼吸していないのに気付き、少女に問うてみました。

「ディア、愚生の母は生きておりますか。」

すると少女は不満げに、

「半エルフ、汝は私が王女を殺さん、と思うや。」

と問い返しました。

其処へエドラスが来て、煌びやかな宝石が鏤められた黄金の椅子を三つ用意させ、近衛兵を退けました。


エドラスとヴィルニア、オークの女は煌びやかな椅子に座りました。

すると玉座の少女は徐に、先程の厳かなものとは違う口調で口を開きました。

「貴下の王国を襲ったのは隣国スラヴァンの者だ。しかし此は唯の血戦ではない。エルアラを回る死闘の緒戦なのだ。恐らく私は国民達全員の傷や病、毒全てを浄化し完治せしめるだろう。しかし此から国民全てが敢闘したにしても、我等の敵には敵わないだろう。」

王は、

「尊堂を悩ませしそれは如何なる事態故なる事でしょう?」

と言いました。

「私の二番目の兄が、先日全エルフの王であり双子である長兄を殺害し、私や他の兄弟カランディ達の支配の及ぶ全国土を襲撃、私達兄弟は国民と全ての領地を失ったのだ。詰まり、我等の敵は我が最も古く、最も貴ばれし兄だ。故に軍を持たぬ私達兄弟、並びに彼の敵より多くを持たぬ者は彼に敵わないたろう。そして、私はこの国を救いに来たのではない。しかし私の望みの品が其方から提供され次第、私は望みを叶えて進ぜよう。」

と白は言いました。

「して、それは?」

と王が言うと、白は、

「まず、エレクトラが持っている破壊の魔石アバンを此方に引き渡す事。それから私は魔石の支配できる者も欲している。アノルの王族の血が流れた者だ。最後に東エルフの国の王・・・エレクトラの父であり、その半エルフの少年の祖父である者の暗殺だ。」

と言いました。

ヴィルニアに早速試練が訪れました

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