I:elf
明くる日の朝、ケユクスは戦争の為にエルフの国から自らの王の国へ出掛けました。
そしてケユクスは「明日には帰るだろう。」と家族に言い残しました。
エレクトラは「ええ。」とだけ言い彼の手に接吻をし、夫を見送りました。
ケユクスはエルフの国の外の荒原をエルフの馬に跨り駆けて行きました。
純血のエルフを母とするヴィルニアは人間で云う15歳程の少年でしたが、年は三十を超えていたので、十になる幼子も産まれて五年程の人間の姿とも違ったものではありませんでした。
そして彼等の母親は既に二千もの時を過ごしましたが、姿は人間の20歳のそれより遥かに美しものでした。
時は過ぎ、夜になりましたが、老いたる父親は未だに帰りませんでした。
家族達はありったけの食べ物を用意して父親の帰りを待ちました。
次の日妹は体調が悪かったのですが、弟を祝おうと無理をし、父親を待ちました。
遂にその日も父親は帰りませんでした。
妻は大層心配していました。
そしてキオスの誕生日を祝い終えて、兄弟達が眠ると妻は白馬に跨り、弓を持ち、夫の居る場所へ馳せて行きました。
そして妻は夫と同じ言葉を兄弟達に残し、体調が優れない妹と眠る兄弟達を抱擁し、彼等の幸福を祈って、惜しそうに、秘めやかに去っていました。
妻は若さ故の強靭さとエルフのしなやかさを持ち合わせて居ますから、用事が無い時には戦に赴き夫を助ける事も少なくはありませんでした。
しかし少年は祝う間に母親の顔にそれまでにはない恐れと不安を感じとりました。
それから三時間程過ぎた夜、少年は急に吐き気がして起きました。
少年は隣に目をやると眠る妹と弟の姿を認めました。
しかし妹の顔は赤く腫れ、膚は爛れていて、この場所でなければとても半エルフと呼べるものではありませんでした。
少年が嗚咽を漏らしたので、キオスが目覚めました。
そして、メロペが起き上がりましたので、ヴィルは大変驚きました。
メロペは姿程に具合が悪くないらしく、普段通りに、「お兄様、お母様はどこ?」と兄に訊ねました。
メロペはヴィルニアの様子と周りを見回して、「お兄様、お父様とお母様はまだお帰りにならならいの?」と兄の心配を読み取ったかのように言いました。
「明日には帰る。」
ヴィルニアは父親の言葉を知らぬ間に繰り返しました。
ヴィルニアはその時初めて母の姿が無いのに気付きましたが、母を捜しはしませんでした。
少年一日中は父と母と妹の心配をしました。
少年の心配も募る中、日付が替わる頃に、遂に妹の体調が更に悪くなってしまいました。
少年は覚悟を決め、エルフの白馬に乗り、母から譲り受けた細身の剣と弓と、少しの糧を持ち、外套を纏い、軽装で戦場に赴きました。
妹達は同じ土地に住まうエルフに面倒を見て貰いました。
ヴィルニアは漆黒の荒原を、光の様に白い馬に跨り進みました。
暫く進むと、人間の王国ドーラの領地へ着きましたが、見張も住人も居らず、その先には都が有り、城壁が見え、沢山の傷を負った武士達が其処に在りました。
それから少し馬を進めると、燦々(さんさん)と輝く赤い日が昇り始め、ドーラの都に着きましたが、此処にも見張りは居らず、ヴィルニアは形をとった絶望を目の当たりにしました。
城の周りには、まるで其処に集め、並べ、積まれたかの様な沢山の死体がの山が有り、城壁は崩れかけて、十人ほどの血塗れの兵士に見張られていて、堅く閉じられていました。
ヴィルニアは急いで城壁に近付き、大声で父と母の名を呼ばわりました。
すると城の中から傷付いた武士が現れ、
「ヴィルニア殿、国王陛下は中にいらっしゃいます。どうぞ此方へ。」
と言うと城壁は開きました。
ヴィルニアが馬を降り、城の中へ入ると、其処には沢山の怪我をした人々や、嘆き悲しむ人々で溢れていました。
ヴィルニアはそれを見ると、まるで年老いた人間の様にとても倦み疲れてしまいました。
武士はエドラスの玉座の間まで少年を案内すると、そこで立ち止まり、
「陛下、ヴィルニア殿をお連れしました。」
と言い、両のドアを開きました。
すると、少年は玉座の王の前に横たわる最早確認も覚束無い程血塗れの老人らしき物と、傷付いた我が母なるエルフと、老人の隣にばらばらに折れた剣とそれに付いていた瑕一つ無い魔石を見出しました。
ヴィルニアは目を疑いました。
それは間違いなく老父の剣で、老人は少年の父親であったと思われましたから。
ヴィルニアは両親の下で頽てしまいました。
少年が現を理解出来ずに居ると、国王が立ち上がり、言いました。
「予はそちを待ってを居ったぞ、ヴィルニア。そちの父親は戦死した。あの忌まわしきエルフ剣を使って、勝利を収めたのだ。敵を全て破壊せしめたのだ。」
ヴィルニアは絶望のあまり目眩がしました。
「王よ、それは誠でしょう。父の剣は砕け、城外には戦死者の群れが在りましたから。それより王よ、母は生きているのでしょうか。」
王が、
「夫人は生きておる。但し、人間の手では治せぬ傷を負っておるがな。」
と言うと少年は母にすがり、言いました。
「どうして私達の国に送って下さらなかったのですか!我が母を見捨てたのですか!」
やはり駄文。
文章力が欲しいのー