序章
エルフ達の土地に住まう半エルフの少年がいました。
少年は名をヴィルニア・アクィロ・ロッダと言いました。
人間の知識上エルフとは悠久の時を生き、衰えや、老いる事を知らず、自分達の百倍以上の寿命を持っているとされている者達で、人間の中にはエルフは永久に生きるのだと信じるものも居ました。
エルフ達は、純血であるほど美しく、威厳が有り、種族毎の違いも有りました、西のエルフは金の髪を持ち、東のエルフは漆黒の髪を持って居ました。
中にはソバージュや巻毛の者もおり、膚は白く、不思議な光を湛える灰色の虹彩を持っていました。
半エルフのヴィルニアは、姿は人間で云う15歳程で、年は32歳、外見は黒髪白皙、短髪の巻毛で身長は人間の15歳のそれと同じ程度、眼は青灰色といったところでした。
また、学問に長け、武道においてもエルフと人間の美点を持ち合わせておりました。
ヴィルニアの父は人間である気高き騎士、ケユクス・アクィロ・ヴェーゼで、母は美し純血のエルフエレクトラで、純血の上、東エルフの国アノルの王族の高貴な血を受け継いでいました。
アノルの一部であるヴィルニアの住む土地はとても肥えていて、絶えず花が咲き、木々は美しく茂って居りました。
また、人間である父親も同じ場所に住まいました。
しかし父親は自分の故郷を手放した訳ではなく、必要とあらば故国に帰りました。
少年には妹と弟がいて、妹のメロペは体が弱く、弟のキオスは幼子でした。
母の家系であるエルフの王家には、破壊的能力を持つと言われる魔石が受け継がれていました。
その昔、神々の唄姫なる乙女の死体からレイシアンと一緒に産まれた物でした。
魔石は古代、エルアラ、即ち神の石と呼ばれていて、一つ一つに名が在りました。
父のエルアラはアバン、即ち「破壊」と呼ばれ、以前は母が持っていたブロオチに填め込まれていました。
またそれは、今は異形を取り、エルアラはエレクトラ王女の配偶者ケユクスが受け継いでいて、腕に剣として携えられていました。