1話 誕生!まほろば天女ラクシュミー 1 アバンタイトル
「オン・チンターマニ・ソワカ!」
たまねぎのような形の如意宝珠を高々と掲げその『ことば』を発するとわたしはまばゆいばかりの光に包まれた。
強烈な光によって奪われた視力が戻るとわたしは不思議な空間に浮かんでいた。
虹色のきらきらした暖かな空間でわたしは一糸まとわぬ姿で金色の光を放ってる。
どこからか、ピンクとも紫ともつかない色のもやのようなものがただよって来て体にまとわりついてくる。
体にまとわりつき密度を高めたもやは一瞬強い光を放つとひらひらのゆったりとした衣装に変わる。
あし、からだ、うで、あたま。衣装が次々体中をおおっていく。
不意に金色に輝いている空間の天頂からさらに強い光が差す。まるでそこからこの空間が裂けてしまうように。
わたしは強い光に再び目をつぶった。
気がつくと、わたしは再び元の亀岡文殊堂にある売店の裏に立っていた。
シンハと名乗る薄い緑色をした小型犬のような生き物が尻尾を振ってうれしそうにわたしを見つめている。
「ラクシュミー、誕生だッハ!」
「こ、コレが、ラクシュミー……」
両手を顔の前に広げる。
手首に巻かれたひらひらのついたリストバンドから、視線を下にやると胸元にちょうちょうを模したような大きなリボンがついている。
着物のように腰帯で止められたピンクの上着はそでがついていないので動きやすそうだ。さらに 視線を下にやると着物が太ももの辺りでスカート状にふんわりと別れている。あわてて確認したらスパッツのような下着をはいているようだ。
足元はブーツ、そして特徴的なのが羽衣のように背中についている大きなリボンだ。
くるくると回って衣装を確認していると頭が重い、その上ピンク色の髪の束のようなものがチラチラと目に入ってくる。まさかと思って頭をまさぐる。地毛だ。それもずいぶんと伸びたみたい。腰の辺りまであるようだ。
自転車に駆け寄り通学かばんをひっつかむと中から鏡を引っ張り出す。
何度も何度も失敗して、どうしてもできなかったわたしの理想のお化粧。そこには、まさに理想どおりに仕上がった顔がかわいらしくうつっていた。
ってこれって……日曜日の朝にやってるやつみたいじゃん!
どうしてこうなった? どうしてこうなった? どうしてこうなったー!?
https://www.youtube.com/watch?v=OhFLCXPCrsM
オープニング曲