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10 大きな一歩



「ま、魔王様……」「サリー……様……」


サリーは稲妻の如く俺とヴェロスとの間に落下し、仲裁に入った。

彼女の放つ圧倒的なオーラを前に俺もヴェロスも戦意が消え、たじろいだ。


「魔王様 !? っていつの間に !?」


部屋にいたカミツレとフライゴは慌ててベッドを確認するが、そこは見事に藻抜けの殻だった。


「さ、サリー様……もう起きて大丈夫なんですか…… ?」

「ああ、お前のお陰でな……それよりも、もう良いでは無いかヴェロス、カーリーはお前に獣人化させる程の力を持っているのだ、それだけで充分だろ」


サリーは呆然と立ち尽くすヴェロスに諭すように言った。


「は……はい、魔王様……」


ヴェロスは意外にもあっさりと従い、獣人化を解いて人間の姿になった。


「カーリー、良くやったな」


サリーは俺の方を見つめながら優しく微笑んだ。

俺はサリーが元気になった事とサリーに褒められた事で嬉しさが二重になり、にやけ面を抑えられなかった。


「どうだヴェロスよ、こいつを認める気になったか ?」

「……はい……拳を交えて少し分かりました……この小僧……カーリーは信ずるに値する者だと……」


ヴェロスはサリーの目を真っ直ぐに見つめながら答えた。

そして俺の方へ近付き、握手を求めた。


「……散々言いがかりつけて悪かったな、これから宜しく頼む」

「はい、宜しくお願いします、ヴェロスさん !」


俺はヴェロスと硬く握手を交わした。

サリーの取り成しもあり、俺は三幹部全員に受け入れられた。


「魔王様~ !!!」


取り乱した様子でカミツレとフライゴが屋敷から飛び出して来た。


「ま、魔王様! もう動いても大丈夫なのですか ?」

「ああ、私は魔王だぞ? これしきの事問題ではない」

「うう……良かったですわ~ !!!」


カミツレは目をうるうるさせ、人が変わったようにサリーの胸に飛び込み、仔犬のように甘えながら号泣した。

妖艶で余裕のある大人の女性のイメージが強かったのだが、こっちが素のようだ。


「で、でも魔王様が生きてたなんて……知らなかったよ……」

「俺達は外界の情報を遮断し、人知れずひっそりと暮らしてきたからな……知らないのも当然だ」


ヴェロスとフライゴは時の流れや世間から追いていかれた寂しさを改めて感じていた。


「それにしてもお前達も……よくぞ無事に生き延びていたな! カミツレ、ヴェロス、フライゴ! もう一度私に忠義を尽くしてくれんか ?」


サリーは感激した様子で三人に問い掛ける。


「勿論ですわ」

「我ら三幹部……」

「あ、改めて魔王様の為に一生懸命働きます !」


カミツレ、ヴェロス、フライゴはサリーの前で膝まづき、忠誠を誓った。


「うむ、……では早速だがお前達、我らが故郷、魔界に来てもらうぞ」

「はい……と言いたい所ですが、先に荷物の整理をさせてもらっても宜しいですか ?」

「構わんぞ、カーリーよ、お前も手伝ってやれ」


俺はサリーに命令され、カミツレ達の引っ越しを手伝うことになった。


元々この屋敷は数百年前、偉い貴族達が所有し、別荘として利用していたのだが、カミツレ達が避難場所として選び、そこに住んでいた人間達を惨殺して手に入れたものらしい。

俺はその話を聞いて顔が真っ青になった。

人を平気で殺す悪党の仲間になった事を改めて実感した。

サリーに忠誠を誓う以上、覚悟はしていたけども、自分もいつかそうなるんじゃないかと漠然とした不安に襲われた。

せめて人間らしい心は保ち続けようと心に決めた。


「荷物はこれで全部ね」


数時間が経ち、俺達は何とか三人分の荷物を纏め上げ、全て回収し終えた。

屋内は藻抜けの殻で何も無くなった。


「それじゃ、魔界へ帰るぞ」

「「「はい !!!」」」




かくして、魔王軍に新たな……て言うのも変だけど、頼もしい仲間が加わった。

吸血鬼(ヴァンパイア)のカミツレ、人狼(ウェアウルフ)のヴェロス、人造人間(フランケンシュタイン)のフライゴ。

三人の復帰は俺達にとって大きな一歩となった。

だがこれはまだ序章に過ぎない。

これから先、更に大きな試練が待っているだろう。

俺は何が起きようと乗り越えていくつもりだ。

俺を見捨てた勇者達に復讐する為……俺を救って力を授けてくれたサリーに応える為。

俺達はまだまだ止まらない。

まだ見ぬ仲間達と出会うまで。


続く

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