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10年前の少女が泣いた  作者: 冷凍みかん
episode1: あと、365日が5回だけ
6/19

5

 




ーーーある科学者は言った。



 「この世界には、『ヒトの姿をしたヒトならざるもの』が存在する」



 初めて()()が一般の人々の目に止まったのは、西暦2124年の冬、クリスマス。これは後に、「クリスマスの惨劇」と称されることになる事件。東京都心の高層ビルで、周囲のビルも巻き込んだ大爆発が起こった。死者は500人にも上り、重軽傷者を合わせておよそ3600人が被害を被った。


 当時、爆弾テロの犯人を目撃したという一般人がいた。証言によれば、大きな紙袋を持った白銀の髪の男が妙に上機嫌に歩いていたという。白銀の髪はとても目立っていたが、それを気にする素振りも見せず男は広場で立ち止まりーーー紙袋を脚で思い切り蹴り上げた。


 その瞬間、紙袋が膨張、破裂し…あの惨事が起きたという。


 後の警察による捜査の結果、紙袋には大規模爆発を巻き起こす精密且つ高性能な爆弾が5つも入っていたことが判明。そしてそのどれもが、ある一部分を損傷させることにより爆発するという代物だった。男が紙袋を蹴り上げたことが起爆原因だったのだ。つまり、紙袋の1番近くにいたその男は確実に死んでいることになる。証言も相まって、自爆テロという結論に行き着いた警察は捜査を終了。しかし、肝心の男の死体は見つからず、一部の報道では捜査を打ち切った警察に対する批判も見られた。


 この「クリスマスの惨劇」を境に、世界中でこのようなテロが多発することとなる。その度、不思議と話題に浮上するのは、「白銀の髪の不審者」についてだった。ある者はフードを被り、ある者はサングラスをかけ、大きな紙袋を持っている。顔は隠そうとする割に、その目立つ白銀の髪は主張でもするかのように露出させる。これを受け警察は、クリスマスの惨劇について洗い直すことを決断した。


 事態に転機が訪れたのは2135年。クリスマスの惨劇から11年がたったときだった。


 驚くことに、クリスマスの惨劇のときに目撃されていたという白銀の髪の男が逮捕されたのだ。


 死んだものとされていた男が何故捕まったのかーーー


 当時日本でも、クリスマスの惨劇とまではいかないものの、小規模のテロが都市部を中心に頻発していた。警察はそれに対して特殊部隊を設置。常時出動させることによる犯罪抑制を図っていた。その特殊部隊が、偶然不審な白銀の髪の男を発見し、15時間に渡ってこれを駆逐。その後の事情聴取によりクリスマスの惨劇への関与が濃厚となり、逮捕に至ったという。


 さらに驚かされるのは、男があの爆発による怪我を1つも受けていなかったことである。傷跡は愚か、手術痕すら残っていない完全な健康体そのものだった。


 男はクリスマスの惨劇の実行犯であったことを全て認め、裁判により死刑となった。


 2148年、男の死刑が執行されたーーーという情報が世間には公表されたが、実際は執行されていない。実はその年に、「セラフ生命研究機関『Zeus(ゼウス)』」という研究所が秘密裏に設置されていた。男は死刑を受けずに、その研究所に身柄を送られていたのだ。


 その後の男の行方は、研究所関係者以外は誰も知らない。ただ、それから数十年後に「人間を超越するヒトの姿をした生物」が、Zeusで多く生成され、その全てが白銀の髪と赤眼を持っていたという。そして、Zeusはそれらの生命体を、こう呼んでいた。



 ーーーセラフ、と。











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