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10年前の少女が泣いた  作者: 冷凍みかん
episode1: あと、365日が5回だけ
3/19

2

 


 心地よく暖かい春の昼下がり。



 桜が満開の大きな公園は、お花見スポットとして有名になっている。


「エルちゃん!」


 エルが振り返ると、後ろから同じくらいの歳のミディアムヘアの女が小走りでこっちへ来るところだった。



小夜(さよ)


「もう!置いていかないでって言ったじゃあないですか」


「…ごめんね」



 栗色の頭を撫でてやると、小夜ーーー安堂小夜は頬を薄く染め、息で膨らませた。


「小夜はエルちゃんがいないと何にも出来ないのです…分かってらっしゃるでしょ?」


「そんなことは無いよ。小夜はしっかり者で、私がいなくとも大丈夫なんだから」


 優しく笑って手を繋いであげると、小夜はぎこちなく照れた。



『あー、あー、聞こえます?エル』



 耳元から声が聞こえた瞬間、エルはパッと手を小夜から離した。

 その手を耳に当て、嵌めているワイヤレスイヤホンを軽く抑えて音を拾いやすくする。漆黒の長い髪が靡き、(うなじ)が艶めかしく露出した。


「うん、聞こえてるよ玲吾(れいご)…どう、見つかった?」


『いたいた。今から場所伝えます』


 エルがイヤホンーーーマイクとGPSが搭載されているーーーからの通信に集中していると、不意に着ているワンピースの裾を引っ張られた。目をやると小夜がこちらを不機嫌そうに見ている。


「ちょっと失礼しますね」


 そう言うやいなや、エルとほぼ同じ身長の小夜は容易にエルの耳に口を近づけ、先程とは全く違う低い声でイヤホンの向こうに向かって呟いた。


「…玲吾。見つけんの早いんだよ」


『…あ?』


 臨戦体制になる玲吾。


(またか…)


 エルは内心どうにかして欲しいのだが、小夜と玲吾ーーー安堂玲吾は昔から仲の悪い姉弟だ。


 小夜は21歳で、玲吾は14歳。歳は離れている方だし、別行動しているときは幾分まともなのだが、2人が関わり合うと修羅場になることが多い。



「こっちはエルちゃんと花見楽しんでんのによォ…水指してくんな!」


『仕事中だろが!花見なら他へ行け!!』


「あぁ?それが年長者に対する態度かよ…餓鬼が!」


「まあまあ…」



 耳元でデッドヒートしていこうとする2人を宥め、エルは小夜に向き直る。



「小夜、今回の仕事は大きいの。分かってるでしょう?」


「…分かってます…でも」


「お花見なら行ってあげるから。また今度にしよう?」


「はぁい…」



 今回の仕事が大きいのは事実だ。諏訪からは通常報酬の3倍出すと言われるほど。


 警察特殊部隊S1班は東京を中心に多くの功績を叩き上げている。優秀な戦闘員を率いているその頭となれば余程のものだろう。


 リスクに伴い、今回の仕事ばかりはエルも慎重に相手を確認したかった。その為の今日この日。


 行きつけの情報屋からS1班がこの公園で花見をするなどという話を聞き、念の為に人相確認に来ているのだ。



『案内しますよ、エル』


「うん、よろしく」





本格的に物語が進行してきました。

ここからどんどん登場人物が増えていきます。

感想など頂けると嬉しいです。

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