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銃器や殺人などの表現が含まれます。
『速報です。今日午後11時頃、新宿の高層ビル地下駐車場で、男性が死亡しました』
深夜のニュース番組。液晶画面の中で女性アナウンサーがつい先程起こった事件について報道している。
『死亡した男性は、政治家の川端聡太さん43歳で、死因は頭部銃創と見られており、警察は事件性を視野に現在も犯人を捜索中です』
「眉間に一発か」
重厚な肘掛け椅子に深く座る男は、事件概要を聞きながら私に殺人の手段を問う。
対する私は男の座る椅子の背もたれに腕を乗せて、重心を預けていた。
「…ええ」
私の答えを聞いて、男ーーー諏訪寛治は満足そうに鼻を鳴らした。
「減音器は」
「地下駐車場だったし、一応」
「そうか」
西暦2199年。現在の日本は、治安が悪い。一世紀ほど昔とは比べ物にならないほどだ。それにより、このような事件は多発していて珍しくない。
今では一般人でも、銃声をソレだとすぐに聞き分けることができる。地下駐車場のような反響する場所で銃声を響かせれば、第三者が駆けつけてくる可能性が考えられるのだ。
「それで?」
「それでとは、なんだ」
私の問いに、諏訪は惚けた顔をした。
「報酬」
私が片手を出して急かすと、諏訪は人の悪い笑みを浮かべて私の瞳を覗き込む。
「まだだ」
「…は?」
諏訪は私が差し出した手を強く握った。ーーー何か硬いものが掌に触れる。
「追加依頼をする。ターゲットは警察特殊部隊S1班の頭だ」
「特殊部隊って……私たちの専門家でしょ。リスキーね」
私が顔を少し顰めると、諏訪は私の手を離してしっかり握らせた。
「報酬はその分積む…3倍だ」
「……データベース送って」
「ああ」
諏訪は満足気に口角を上げ、ノートパソコンを軽やかに操作し始める。
高層ビル最上階はよく月が見える。月下に照らされた私の髪がキラリと光った。
小さくバイブレーションがして、仕事用のスマートフォンに諏訪からデータが送られてきた。
それを軽く確認すると椅子から離れ、少し開いた、壁の用途を果たすほどの大きな窓に足を掛ける。
「期待してるよ。ガブリエル」
「…そう」
窓から飛び降りて地上を目指す。風の抵抗を全身で目一杯受けた。
私は、暗殺者。
人は、私を「ガブリエル」と呼ぶ。
髪色は白銀。両の瞳は深紅の色。
(つまりは)
人気の無い道に静かに着地し、脚への負担を感じさせない俊足で裏路地へ駆ける。ーーー常人では有り得ない。
(バケモノだ)
手探り状態で投稿しています。
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