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2章がスタートしました!
相変わらず拙いですが、よろしくお願いします
小夜と約束を交わしてからというもの、ここ1ヶ月エルはセラフ姿で外出を1度たりともしていなかった。
最近では、玲吾が特殊部隊S1班の情報をハッキングで何とか割り出し、小夜や慎司たちがそれを頼りに高嶺枢を追っているようだが、その度に躱され、姿を拝むことも出来ていないという。エルはそれを見ていることしか出来ていない。
大分慣れた黒髪をなびかせ、夜の裏道を気ままに歩く。
時折、ビルのガラスに映った自分の「人間」姿を物憂げに見つめるが、その瞳は揺れることなく真っ直ぐで、そのことにエル自身も少なからず驚きを感じた。
ーーーこんなに透き通った瞳をする自分はいつ以来だろうか。
エルは久しく覚える充実感に頬を僅かに綻ばせた。
猫の気配さえ感じない月夜は、エルに多くを思い出させる。
ふと、横に視線を向けると、いつの間にかそこには白銀の髪の少女が佇んでいた。
その髪は少女のふくらはぎにまで及び、顔に掛かる髪の間から妖しく光る赤眼が見え隠れする。
少女はエルを真っ直ぐ見るつもりがないのか、目の前のガラスを凝視している。
「楽しい?」
少女は静かに、そう問いかけた。
エルは少女を静かに一瞥し、視線をガラスに戻して答えた。
「…楽しいわ」
一瞬の静寂。
その末に、少女は冷たい声で突き放すように問うた。
「楽しいって何」
「っ」
エルは反射的に少女を見た、がーーー今の今までいたはずの場所に少女はいなかった。
周囲を見渡しても、気配を感じない。
「…」
その言葉を最後に、少女は姿を消したのだ。
エルは少女の問いに答えることが出来なかった。
次話更新は再来週中にと思います